絵を描きたいんだ
暑い……苦しい……毎年意地悪ばかりされる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
様々な蝉が朝から鳴き今日も猛暑日になることが予想できる。
暑い気温が漂う夏の空気を吸って吐く。
外に視線を移すと青空に入道雲ができていた。
すだれで日陰を作り畳の部屋に寝転ぶ。
風が吹く度に風鈴が揺れ嫌でも季節が夏と感じさせる。
学生は7月末から9月の始まりまで夏休みだ。
だが全ての日数が自由とは限らない。
そう……宿題といったものがある。
必要ある? ないよね? せっかくの長期休暇なんだよ?
休みの日までなんで勉強なんかしないといけないんだよ!
長期休暇になった日の夜は夜更かしをして朝眠りに就く。
遮光カーテンを閉めて部屋に光を一切通さなくする。
クーラーを付けて部屋を真っ暗にして寝る準備は完了だ。
クーラーはタイマーを設定してお昼には自動で切れるようにしておく、こうすることで暑さで午後には起床することができるのだ。
午後に起きても暑さで何もする気力が起きない。
クーラーを22度で設定し、起動させ部屋全体を冷やす。
……1時間ほど経っただろうか。
部屋の空気が冷えやっと行動が出来るようになってきた。
ベッドの上で弄っていたスマホをスリープにして勉強道具が置いてある机に向かう。
椅子に座って筆記用具を持ち勉強を始めるが……やる気が全くない。
まだ国語や数学、英語のテキストやプリントが宿題になるのは百歩譲っていいとしよう。
美術の宿題って何? なんで夏の照りつける日差しの中、風景画を描かなきゃいけないの?
国語とかのテキストやプリントは回答を適度に間違えて答えを書き写すとしても……風景画は外に出て描かないとできないからな。
時計を見ると丁度午後2時を指していた。
気温が一番高くなる時間に外に出たら死ぬ。もう少し時間が経ってから外に出ることにしよう。
結局勉強が進むことはなく、快適部屋のベッドでゴロゴロスマホを弄って気がついたら時計が5時を指していた。
「そろそろ行くか……」
独り言を呟きパジャマから外に出かける格好に着替えた。
すぐに帰宅する予定だからクーラーはつけたままにしておく。
どこに出かけるか……。
コンビニで飲み物を買うついでに風景画の写真を撮りに行くのだ。
あくまでもメインはコンビニだ、正直風景なんてどうでもいい。
食材と飲料、アイスを買い写真を撮って帰る。
両手の親指と人差し指を使い四角形を作る。
四角形で風景をトリミングするがどれもしっくり来ない。
自分で描きたいものはこれか? 本当にこの風景で満足できるのか? など様々な考えが思い浮かぶ。
結局自分の描きたい風景は見つけることが出来ず家の前に到着してしまった。
田舎にある祖母の家なら描きたい風景があるのだろうか。
ふと、祖母の家に行った時の記憶を思い返す。
すると…………あった。
自分の描きたい風景、いや、その風景じゃなきゃダメなんだ!
走って家に帰宅し、家で晩御飯の支度をしている母に話しかけた。
「ねえ! 今年ばあちゃんち行きたいんだけど」
「いきなりどうしたの? おばあちゃんの家に行きたいなんて珍しいじゃない」
いきなりの発言に母は驚いていた。
驚くのも無理はないだろう。
普段外に出ると言ったら学校に行く時だけで学校帰りや休日に店に行くことがなかった人間からいきなり出かけることを提案されたら誰だって驚くに決まっている。
もし自分が親で子供がいきなりそんなことを言ってきたら驚愕するに決まっている。
他の出ている宿題はどうだっていい、最悪調べて回答しました、とか言って全部答えを書き写してもいいだろう。
今は全力で風景を……自分だけが知っている最っ高な風景を、色あせることのない、変わることのない、一枚世界に一枚しかない絵を完成させるんだ。
僕は母に向けていつもより大きな声で言った。
「僕、絵を描きたいんだ!!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字、変な表現がありましたらご指摘ください。




