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クロネコギター3

作者: 山崎 モケラ

クロネコを拾ってから生活が少しづつ変わっていきます。気がつかないうちに、ゆっくりと。

私は義母、いわゆる姑が大嫌いだ。

夫の母ってだけで、愛さなくてはならない、大切にしなくちゃならないなんておかしいと、思っている。



今日もチクリチクリとイヤミを言ってきた。

『お隣さんのお嫁さんはスリムでかわいいんですってよ』


あたしも、やり返す

『お隣のお義母さんは優しいですもんね。それなら、いつも、笑顔の可愛いお嫁さんでいられるんじゃないですか?』


いっつもこんな状態。

歩み寄りもなし。

謝ることもなし。


とにかく、毎日イライラしてばっかりなのだ。



ある日、イライラしながら夫のレスポールを弾いてストレス発散させていた。



音もアンプに繋いで、出していた。

さっそく、姑が部屋にやってきた。



『ちょっと!下手なギターを弾くなら、ボリュームを落として!』


それを聞いて、あたしはさらにボリュームを上げた。


少しだけスッとしてあたしは買い物に出かけることにした。



道端に、クロネコが座っている。

野良猫なのだろう。

無視して通り過ぎようとした。




その時、クロネコが一声ミャーンと鳴いた。

可愛いけれど、ウチには姑が居るし、飼えないと思った。



さらに無視して通り過ぎようとしたら足元にスリッとすり寄ってきた。



私はクロネコを抱き抱え、そのまま家に帰った。


家にいた姑に文句言われるだろうなと、思ったが姑は何も言わなかった。



ただ驚いたようにクロネコをジッと見ていた。




なんでも、後から聞いた話だと、姑もそのクロネコを道で見かけて飼いたかったそうだ。



その時は、そんな話は私は知らず、少しプリプリしたフリし、すぐに私は出かけて、エサやトイレ砂やらネコを飼うのに必要なものをたくさん、オモチャまで買ってきた。

私はウキウキしていた。




私たち夫婦には子供がいなかった。




何か、小さな物のために、いろんな用意をするのは心がウキウキする買い物だった。



その日から、何かが少し変わっていった。

ゆっくりだけど、姑とクロネコのブラッくんを見ながら話すようになった。



姑にイヤミを言われても、私は笑って気にしなくなった。



でも、そもそもが姑のイヤミも減っていった。




レスポールのギターを弾いて歌ってても、何も言われなくなった。




そんな中、姑と一度だけすごく揉めたことがある。




ブラッくんは、誰に1番懐いてるのか?って、質問にお互いに私よ!と、喧嘩になった。



だが、1番懐いてるのは夫だねって事で最後は笑って終わった。




姑と喧嘩しなくなり、驚いたのは夫である。




一体どうしたんだ?とは、聞かれなかったが、帰りに3人分のケーキを買って帰る日が増えた。



ある日、レスポールを弾いていたら、姑が部屋にやってきた。

また文句言われると、思ったが違った。

姑から以前弾いていた曲を弾いて歌ってくれと、頼まれた。



私は驚きながら、その曲を弾いて、歌おうとしたが、ふと、姑がこの曲を歌いたいのでは?と、思い『お義母さん、歌ってみたら?あたしがギターを弾くから』と、勝手に口から言葉が飛び出してきた。





『あらそう?』と、言いながら姑は楽しそうに音程外しながら歌っていた。




私はそれを聴きながら泣けてきて。

ただ泣けてきて。

泣きながらギターを弾いた。



姑が歌い終わって、2人で拍手して笑った。



その日を境にブラッくんがいなくなった。



3人でがっかりしたが。



姑と私で『縁つなぎをしてくれたネコだった』

と、オヤツのせんべいをかじりながら何度も話した。




今私は、姑の十八番の曲を練習している。

2人で市民会館の舞台に立つのが私たちの夢だ。


最後まで読んでくださってありがとうございます!

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