第2話 「“普通”」
感想と評価ありがとうございます!
お待たせしました、第二話目です!
町の中を静かにケイコの後ろを歩くこと五分、視線を感じながらもケイコの一階建ての家に着き────
「って大丈夫か?このままで?」
「?」
いや“この人何言っていんの?”って顔しながらキョトンとするのは反則だろ。
「家の人とかに迷惑じゃないのか?それに俺達合って間も無いんだぞ?」
「ああ、その心配は大丈夫です。家には私一人しかいませんから。それに、あなたは根が優しい人です。」
へー、一人暮らしか~。じゃなくて!
「や、や、優しい人ぉ?お、俺が~?ど、どどうやって分かるんだそんなの?」
な、何突然変な事言いだすんだ、キョドっちまったじゃねえか。
「だって、あなたの雰囲気がそう“語って”いますから。」
いや、説明になって無い。この俺にも分かるように説明プリーズ。
「お、お邪魔しま~す。」
俺は家に入り次第キョロキョロと家の中を見る。中は結構小綺麗で家具もそこそこ置いてある。玄関に靴を脱いだあと置くタンスみたいなのがあるのでブーツを脱いだ。“郷に入っては郷に従え”って言うしな確か。
後矢と弓筒が置いてある台があったので俺もサブマシンガンを置く。小銃はホルスターにキープ、何があるか分からないし、もし万が一ここの人達と敵対する事になると何らかの護衛手段は欲しい。
「お茶を入れてきますね────」
「ア、ハイ。」
俺は椅子に座り、周りを観察し違和感を持った。この家の作りは一人暮らしにしては少々大きいが、家の他の者の痕跡が見つからない。そういえば靴とかも無かったよな?本当に独り暮らしなのか────?
「お口に合うかどうか分かりませんが────」
「あ、ああ。すみません。どうも。」
俺はコップを受け取り中のお茶の匂いを少し嗅ぐ。うん、毒や自白剤独自の匂わないな。単に俺の知っている類じゃないかもしれないが。
俺はケイコがお茶を先に飲むのを待ってから俺も飲む。
「お、なんか“お~い粗茶”に似ている」
「“おおいそちゃ”?」
「いやこっちの話」
「それで、あなたは何処から来たのですか?」
「え?」
“誰”と問われるより先に“何処から”だと?
「森の中で狩りをしていたら、突然大きな音がし、音の方向から貴方はラージウルフの群れに襲われていた。そしてそれだけでは無く、見た事も無い“魔力が発生しない”魔術を何度も使い、群れを撃退していた。貴方は一体、何者ですの?」
これは……色々と見られているな。そんなに見ていたのに俺を助けたのは何故だ?メリットが見えない。俺が持っている物目当てだとしても最初に会った時の前に俺とあのウルフを射抜けば事は済んだ筈だ。何が狙いだ?
待てよ、最初俺達は言葉が通じなかった。という事は説明などを通訳する為に生かされたという事か?
こいつの目的が分からない。ここは慎重に────
「じゃあ最初から。俺の名はマイケル。マイケル・レナルト。ハウト連邦所属の軍人だ。」
学生だけど。さあどう出る?
「“はうとれんぽう”?聞いた事の無い国ですね……それに家名持ちで初対面にそれを────」
“聞いた事が無い”、ね。ならここは自然に聞き返せる筈だ。最後の方は声が小さすぎて聞こえなかったが、独り言か何かだろ。
「────ちなみにここは何処なんだ?“船”から降りて気が付いたら俺はあの森の中にいたんだ」
「“船から降りた”?森の中でですか?あの森の中にある湖や川に面している場所まではかなりの距離があった筈ですけど────」
“船”を“宇宙船”じゃなくて水面上の“船”として取ったという事はやはりここの文明はまだ“宇宙飛行”を発明していないか、そもそもその概念が無いという事だが確信が欲しい。
「────ちなみに此処は“メンレ”の街です」
掛かった。おっと無表情、無表情。
「いや俺が“ここは何処だ”と聞いたのは町の名前じゃなくてこの星の名前だ」
「この星の名前ですか?ガイアと言いますが────」
やっぱり、知らない星の名だ。ここ“ガイア”は恐らくハウト連邦にとって未開惑星。ならば友好的に現地協力者を得る為に簡単な説明ともうちょっと砕けた感じに────
「俺が言う“ハウト連邦”とは多分ここの人達からしたら信じ難い話かもしれないが宇宙にある大国の一つだ」
「“うーちゅー”?」
おっとここから説明かよ。
「あー、つまり“空”のさらに上に行くと“宇宙”。そして宇宙では他にここみたいな星がいっぱいあってハウト連邦は惑星数個をベースに────」
「?」
「────つまり俺は別の星の────」
「?????」
あ、ヤベ。完全に聞き慣れている演説を丸パクリしてしまった。ケイコの方は頭上ハテナマーク数個出していやがる。
「……えっと」
「すまん、俺も気が回らなかった。つまり────」
今度は気を付けながら出来るだけ簡素な説明や原始的例えをした結果────
「成程。マイケルは宇宙の中でも“地球”と言う星の戦士の一人で宇宙は無限に広がっているのですね。」
どうしてこうなった。いや確かに友好的関係を築ける為に宇宙や他の居住可能な惑星の説明をしたが。
て言うか“星の戦士”って旧世界の“アレ”そのまんまじゃねえか。あの三分でピコピコ光る奴。
イカン、脱線した。
「ま、まあ概ね合っている……と思うぞ?で、俺が乗っていた宇宙の船が故障してそこから脱出したらあの森に着地してって訳。」
「成程、それは災難でしたね。」
笑顔が眩しい。なんか変な気持ちだな。
「マイケルは戦士と言いましたね。では何と戦っているのですか?」
「ハウト連邦の他にディダ帝国ってのがってそいつ等と結構長く戦っているな。」
「マイケルは偉い人なのですか?」
「俺?俺は普通ぐらいだな。前線でちょくちょく戦っている。」
「それは……家族の者たちもさぞ心配なさっているのでは?」
「“家族”? ああ、あれだろ。“血縁者”の“親”とかだろ? 分からないな、俺家族いないし。」
「────え?」
「そんなの普通だぜ? 今時“血縁者”なんて。だってそうだろ?早く軍人になって、遺伝子を物理的に又はデータを登録してそれを融合、で子供が生まれて軍人育成設備に送られる。割と普通だろ?」
「……」
な、何だこの表情? 混乱か? いや、なーんか微妙に違う。
「……長く戦っていると言うのは────」
「ああ、もうかれこれ数世紀ぐらいかな? あ、“世紀”って“100年の期間”って意味で今は昔と違って物理的兵器だけじゃなくビーム兵器や人型の兵器も────」
「────ちょ、ちょっと待ってください!」
────ケイコが急に立ち────
「うお?!」
────俺がびっくりする。いや、だから何だよその表情。 何の表情だよ? 惚けているのとはちょっと違うな。
だが俺が言っている事は至って普通だぞ?
「あ?! す、すみません。」
ケイコが気まずく座り直し、俺は冷えてきたお茶を飲む。
あ~、うめえ~。
「で、さっきのどうしたんだ?」
「い、いえ……その……」
やっぱ綺麗な子がモジモジするのってこう、グッとくるな。っとと、こっちも情報が欲しかったんだった。
「まあ、もっと入り込んだ説明は後にして、この星の事をもっと聞きたいんだが────」
「あ、はい! もちろん良いですよ!」
ホント笑顔が似合うな、表情もコロコロ変わるのも良い。てかそんなに自分の星の説明が好きなのか?
「さっきも言った様に、ここは“メンレ”の街。この“キョーゲ大陸”の中央に位置している“大樹の森”周辺の街の一つです」
フムフム、キョーゲ大陸のメンレの街ね。それにラージウルフがいた大樹の森。
「私はこの町で主に狩猟と巫女として活動しています。」
「巫女?」
「あ、えっと……“祈祷師”として伝えた方が良いのでしょうか?」
「ああいや、聞き慣れなかった単語だったから。」
巫女とか祈祷師とか、本当に古代史の教科書の単語がリアルに出てきた!
「聞き慣れない?」
「どんな事をするんだ?」
「え?魔物や獣、害意のある妖などを────」
「そっちじゃなくて“祈祷師”の方。」
「そうですね、人に掛けられた呪いや病、傷の類などを和らげる又は治療っと言った事などをしています」
ほーん、衛生兵みたいの者か。 てか紛争や戦争って無いわけ? 古代史の中では割とあった筈だが。
「ちなみに戦争とかは無いのか?」
「戦、と言うのは聞かないですね。」
「え? 争いとか無いわけ?」
「それはもちろん人と人の価値観が少々違ったりしますが────」
「いやだから宗教とか文化とかの違いで“オラァ、ワレェ!何言っとんじゃワレェー!国で戦争だーボケェ―!”とかの王とか将軍とか」
「え、ええと……それは、何ででしょうか?」
「え"。」
「確かに時々価値観などが違う者が合うと口論や喧嘩など発生しますが国全体の兵士を上げるのは無駄なのでは?」
なん……だと?
「えっと、マイケルさん?」
分からない。
「……マイケルさん?」
理解できない、戦争の概念が無い? 馬鹿な、人が二人いれば争うだろ? 戦争なんて普通の事だろ?
「ちょっと顔色が優れないようですが────」
何だこの気持ち? 息をするのが苦しい。俺の体が傾き、椅子から落ちる。
「マイケルさん?!」
ワカラナイ。ドウシテソンナヒョウジョウヲスルンダ?
「-!」
アタマガボヤケル。キコエニクイ。
ドウシテダ?
ドウシテソンナ、カナシソウナメデミルンダ?
第二話“普通”、いかがでしょうか?
追伸の予告っぽいもの:
“普通”、それは自分の“世界”以外知らぬ存ぜぬの者が周りを“ありのまま”として受け入れる甘い誘いの言葉
他の者の“普通”と遭遇し、始めて違和感を覚える
この違和感を“ありのまま”か“拒否”するかの選択に陥った者はどうする?
次回、「“日常”」
他者の“真実”が果たして“真の事”とは限らない。