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次の日、朝日が昇ると同時に、私は昨日と同じメンバーでダンジョンに向かっていた。
「よし! 今日はいつもより深い場所で狩りをするぞ!」
今日はダンジョンの奥、いつもより強いモンスターがいる場所を目指す。魔石は強いモンスターほど大きかったり質がよかったりする。大きかったり質がよければ、その分、高いお金で換金してくれる。冒険者という職業は強くなればなるほど儲かる職業なのだ。その強くなるための手っ取り早い手段は強い装備を買うことなのだが、それにもお金がいる。最初ほど生活に厳しい職業といったら、日本では芸人さんとかだろうか。
「雑魚はさっさと倒して、どんどん奥に進むぞ! キラリ、支援魔法、よろしくな!」
「う、うん!」
私自身は装備をいいものに変えても、いくら敵を倒してレベルアップしても強くはならない。だから、いつもより強いモンスターと戦うのは少し不安なのだが、私の仲間は強いし、それに、収入も今のままでは足りないと分かっている。だから、私にできる役目は最大限果たすつもりだ。
モンスターとの遭遇すると、私の支援魔法を合図に素早くモンスターをしとめていく。
すると、いつもは行かないような下へと続く通路を見つけた。
「ここから降りれそうだな。ここから先のモンスターは今までより強くなっている。気を引き締めて行くぞ」
みんなで頷き、気を引き締めたのを確認して下へと降りていく。
時計を見ると、まだお昼前。この調子なら下の階層で十分に狩り出きるはずだ。
下の階層についたが、モンスターから出迎えはなかった。だが、今まで狩りをしていた場所と比べると、雰囲気がまるで違う。地下深くに来たからだろうか、少し肌寒いし、床や壁、天井の色も少し深みを帯びている。どことなく不気味な場所だ。嫌な予感がする……。
「来たぞ! モンスターだ。正面から2体。気を引き締めろ!」
今まで戦ったモンスターとは違う。二足歩行の狼たち。動きも素早い。おそらく、攻撃力も今までよりも高いだろう。でも、私の支援魔法があれば、凶悪な牙での噛みつき攻撃も防御魔法で防ぎきり、素早い動きも速度アップ魔法で狼の動きを捕らえ、私を狙ってきた狼も詠唱速度アップで接近を許さない。完璧な支援だ。
「楽勝だな! この調子ならガンガンいけそうだ」
「そうだな。俺たちも強くなっているみたいだし」
「いざとなっても、僕の魔法速度なら怖いものなしさ!」
私とパーティーを組む冒険者はよく勘違いをしてしまう。今の強さは、私の支援魔法ありきの戦闘力。それを勘違いして自分が強くなったと勘違いしてしまうんだ。よくそれで、支援魔法を軽視して、戦闘もしない私はパーティーから追放された。そして、そのパーティーは、次の日、ダンジョンから帰ってはこない。よくあることだ。このパーティーからもそろそろ私は追放されるのだろう。そう思っていた。
「やっぱり、流石は町一番の支援魔法って感じだな!」
「確かにな。俺たちだけだと、この深さが限界だった。まだまだ奥に行けそうな余力すら残っているんだからすごいよ」
「僕も魔法がバンバン打てて気持ちいいよ。ありがとう、キラリちゃん」
この人たちは私のことを分かってくれている。支援魔法の有用性を理解してくれている。それがうれしくないわけがない。
「……ありがとう」
自然と涙が溢れてきた。
「おいおい、ダンジョンの中で泣くなって」
「そうだよ。気を引き締めて。いつ何が襲ってくるか分からないんだから」
「うん。ごめん」
ここはダンジョン。何が起こってもおかしくはない場所。そんな場所で視界を涙で塞ぐのはよくないこと。
必死に涙を拭って、再び気を引き締めて前を向いた。