大作家に並べる日。
司馬遼太郎大先生が健筆を振るっていたころ。
作品としてひと月に原稿用紙で七百枚仕上げたという。
なぜ司馬先生なのかというと、いつぞやの新聞で見掛けたからだ。
スクラップ帳を引っ張り出すと平成二十八年三月二十日付の産経朝刊一面。
そう遠くない昔だった。
その年は先生の没後二十年だったから出身の当紙で特集が組まれていた。
さて、原稿用紙の隅から隅まで書き尽くせば四百字となる。
しかし実際は改行や会話あるいは意図的な空白などが織り交ぜられる。
とすれば一枚あたりの文字数は八割くらいが妥当だろうか。
四百の八割、つまり三百二十字が原稿用紙の一枚分。
これに七百を乗ずると二十二万四千字。
これが、かの大先生の一月分の仕事量となる。
時代は下り、現代は働き方改革が花盛りだ。
作家大先生といえど、その流れに逆らってはならない。
土曜と日曜の週休二日は必須の時代である。
ひと月の日数も凸凹ではあるがここは三十日と定めよう。
三十日を七で除すれば四週間あって残りは二日となる。
週ごと二日休めば月に二四が八日休業となる。
加えて他に祝日・祭日・国民の休日もある。
これらを勘案すれば月で休業は平均九日と考えられよう。
三十日から九日を減じた残りは二十一日。
これが現代作家一カ月の業務日数だ。
一日は二十四時間だが働き詰めは論外だ。
典型的な勤務と言われるのは九時五時だろう。
つまり午前九時に始業して午後五時に終業となる。
その長さは八時間となるが、途中に昼休憩を一時間挟まなくてはならない。
よって七時間が一日の業務時間となる。
一日七時間業務すると一カ月の二十一日で合計百四十七時間となる。
大先生ひと月分の二十二万四千字をこの百四十七時間で除すれば、一千五百二十四。
一時間に一千五百二十四字書ければ、大作家先生と肩を並べられる計算となる。
もちろん、数の上だけではあるが。
ちなみに一千五百二十四の六十分の一は二十五・四字。
またその六十分の一は〇・四二字。
平均二秒に一文字ペースを崩さなければ。
そして週五日、一日七時間、そのペースを維持できれば。
夢は必ず達成できるはずである。
もちろん、数の上だけではあるが。
数字は洋数字がよいですね。これだけは、はっきりしました。
具体的な数が出てきたのですが、現実的な数だったのでほっとしました。とはいえ、雨の日も体調悪くてもどんな条件でも週5日、毎日10,668字仕上げるなんて……