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5. 見習い騎士の初仕事(1)

あれから数ヶ月、私は5歳になった。

言葉のたどたどしさも無くなって

前より少し背も伸びた。


ジュールの家も謹慎処分の間、

少しずつ母と兄達が

歩み寄れるようになったようで

兄弟も、もうすぐ見習い騎士(ページ)に復帰するようだ。


あの一件で兄達がジュールを憎むような態度も取らなくなったようで、

この間の稽古では週末に兄達と遠乗りに行くのだと嬉しそうに話していた。


かくいう私も今日はめでたい事があった。


「母上!私に弟を見せてください!」


母の寝室をノックすると

使用人が開けてくれる。


「ルイ、今ちょうど寝た所だから静かにね」


エリーゼが人差し指に手を当てて微笑む。

その下で大事に抱えられているのは

スヤスヤと寝息を立てる小さな赤ん坊だ。


起こさないようにそっと頬を撫でる。


「ふふっ、かわいいなぁ

顔立ちはお母様によく似ています」


「あら、そうかしら。

ルイはアンドレによく似ているけれど

最近少し私にも似てきたわね」


エリーゼは穏やかに目を細めて私の頬を撫でる。その所作に慈しみを感じて擽ったい気持ちになる。


「私にも兄弟が出来たのですね」


前世の私は一人っ子だったので

本当に初めての兄弟だ。


ずっと兄弟が欲しかったので

すごく嬉しい。

しかもこんなかわいい子だなんて!

私は幸せ者だなぁ


「良かったわね、ルイ

兄弟が出来て


ジュールももうすぐセレン騎士団に入ってしまうからなかなか会えなくなるもの


ジュールはルイにとって兄がわりの

存在だったのじゃないかしら」


ジュールは10歳からセレン騎士団に

所属することになっていたため、

来週には王都へ行ってしまう。


騎士団に入るまでの短期契約だとは知っていたがやはり寂しい。

父も剣の指導というよりは同じ光の騎士の友達を作らせたかっただけのようだ。


「母上、私もそろそろ家庭教師を

つけて欲しいです。


ジュールせんせいのような

立派な騎士になりたいですから。」


立派な騎士になれば

ジュール以上の強者も

ゴロゴロいるんだろうな〜!


楽しみすぎる!


エリーゼはその言葉に目を見開きつつ

にこりと笑って頷いた。


「そういえば貴方に手紙が来ていたわ」


エリーゼが私に手紙を渡す。


私に手紙?...誰だろう?

宛先は...アインズワース!?


王宮からの直々の手紙..。

怖っ....開かなきゃダメかな?


みるみるうちに蒼白になっていく

私にエリーゼは眉を下げて微笑む。


「実は私やアンドレ宛にも来ていたの

要件を言ってしまえば


何でも貴方をページとして

王都に呼びたいらしいわ」


見習い騎士(ページ)?!

ページというのは私の世界だと小姓のようなもので、主君に仕える騎士として学ぶべき事をページの間に覚えるらしい。


ジュールも7歳からページとして王宮に仕えていたらしいがハイスピード出世で

王宮セレン騎士団に抜擢されたという。


私の剣の先生としての仕事は

その中継ぎという事らしい。


「でも私はまだ5歳になった

ばかりなのですが..」


「なんでもジュールに剣戟で勝ったのだという噂が王都まで広がっているそうよ

それで国王が直々に

貴方を王都に置きたいと」


え、ちょっと待ってよ!

ジュールに勝ったのってそんなすごい事だったの?私まずい事したかな..


ていうかジュールだってまだ9歳じゃん

分からん、

でもなんかすごい期待されてるっぽい

うわぁ、なんかやだなぁ..


しかも王都には白悪魔(リュカ王子)がいるしな...


「良かったわね、ルイ

ここで剣の先生を探すより

王都に行く方が優秀な騎士が沢山いるもの


きっと成長できると思うわ」


優秀な騎士...

そうだ!王宮に行くということは

王直属の近衛騎士に会えるということ!


もしかしたら手合わせ出来るかもしれない!


「母上!

そのお誘いお受けしてください!

私ページになります!」


私は勢いよく手をあげる。

うわぁ!楽しみだ!


「えぇ、

そういうと思って了承しておいたわ!」


「え?まぁ..いいですけど」


エリーゼはいつになくにこにことしている。


「あぁ、言い忘れていたわね。

ページとして王宮に行くのは建前で

リュカ王子の話し相手を

して欲しいらしいの。

バッチリ良い関係を作ってきて欲しいわ!


次は娘を産みたいと思っているのよ

第三王子の妃ならまだ間に合うわ」


この母親...ちゃっかりしている!!


リュカ王子の...話し相手..????


いやだーーーーーーーーーーーーー!!


心の中で叫んだが

時すでに遅し、

承諾の手紙は昨日出したという。


「貴方の性別がバレないように

事前に手を打っておいたし、

アリシアを使用人として共につけるから安心して頂戴。すでに承諾も貰っているわ」


なんか私の知らぬ間に話が進んでいる!!

え?どういうこと?

こんなのゲームの過去編で語られて無かったよ?


そうか..私がジュールを倒して変に名声高めちゃったせいじゃん。


でももう、断れないよね?

遠い未来で殺されたくないので行きたくない

なんて、頭おかしい人だと思われるだけだ。


こうなれば、腹くくるか、ルイ君。

大丈夫、私はゲームのような

厚顔不遜の我儘男じゃないんだから。

女だし。


胸張っていこう。

もしかしたらあの白い悪魔とも良い関係築ける可能性もあると思うし..。


こうなればあの歩く死亡フラグを怒らせないように頑張るしかない!


うっ....胃が痛いよ..。


こうして私のページ行きは決まりサクサクと王宮行きの準備がなされた。



**********************



「アデルバート国王陛下

本日よりページとしてお世話になります

ルイ・クロフォードと申します。


若輩の身ではございますが

ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。」


私は今、なんと玉座の間にいる。

王宮に着き、

騎士達に挨拶をと思っていたが

まさか国王直々に呼ばれるとは思っていなかった。


私は跪いたまま礼をする。

その姿に国王はおぉ、と感嘆の声を上げた。


「アンドレの奴め、

これほどの息子を隠しておったのか。

やれ、あいつは私に

お前のことを何も話さぬのでな。

一度話してみたかったのだ。


まぁ、そう緊張するな

ここでしばらくページとして

修行を積むが良い。

働きによっては王宮騎士にしてもよい。


お前には我が息子、

リュカの護衛をしてもらう。

リュカはお前と同じ光の騎士だが、

同時にこの国の王子だ。


しっかりと護ってほしい。


もちろんページとしてだがな。

アーサー、前へ」


「はい」


低く透き通るような声が部屋に霧散する。


私の隣に高身長で体格のいい赤髪の青年が跪いた。20代前半くらいだろうか、父よりは若い気がする。


「この者はアーサー・レインコード。

この国でも優秀な近衛騎士だ。

ルイよ、今日からお前はこの者の部下として働くがいい。


もちろん家庭教師もつけさせてやるから安心しろ、お前は公爵家の長男だからな」


「承知いたしました。

多分なご配慮痛み入ります」


こうして私はこの国の近衛騎士の見習いとして仕える事になった。



「アーサー・レインコード侯爵、

本日よりよろしくお願いします」


国王との謁見が終わると

私はアーサーに頭を下げた。


「そう硬くならんでいいよ、ルイ。

俺のことはアーサー先輩とでも呼んでくれ

ページと言ってもお前の場合は

殿下の話し相手のついでみたいなものだし

気楽にやればいいさ」


アーサーは私の方をポンと軽く叩いて

「な?」とウィンクした。


近くで見るとやはり大きい。

高身長で筋肉が締まっているが

シルエットはスラリとしている。


赤い髪にエメラルドの色の瞳。

茶目っ気のある笑顔が印象的だ。


「実はルイは私の息子と年が近いんだ、

今度王宮に呼ぼう、

お前と同じ光の騎士だからな」


アーサーがニカっと白い歯を出して微笑む。

私はそれにぎこちない笑みで返した。


そうなのだ、レインコードの名を持つ攻略対象いたなぁと思っていた。

まぁ悩むのは会ってからでいいや。


「そうなのですか、楽しみにしていますね!

アーサー先輩!」


私は取り敢えず元気に返事をした。

ちょっとヤケクソだ。



「待ってたよ、今日からよろしくね?

ルイ君」


私は騎士服に着替えアーサーとともに

リュカの待つ王子の部屋に入る


まだ5歳ということで腰に差すのは

ナイフのような小さな短剣を渡された。


「今日からページとして仕えさせて頂きます。誠心誠意努めさせて頂きますので

よろしくお願い致します」


我ながらめちゃくちゃへりくだってみた。

これだけ低姿勢なら大丈夫だろうと。


「ねぇ、君、私の話し相手に

呼ばれたの知らないの?

なにその話し方、役割務める気ある?」


なんだコイツ、腹たつな〜..。


私の中のルイが

イライラしてるのが分かるよ!


やっぱり遺伝子レベルで合わないんだ

私達って!


「ごめん、どう接していいか分からないんだ。これでいいか?」


「あぁ、それで十分だよ。

早速だけどこれから王宮で宴があるから

君も一緒に来てくれる?

勿論、護衛としてだけど」


「わかった、何の宴なんだ?」


「今日は私の5歳の

誕生日祭が開かれるんだ。」


「え!そうなんだ、おめでとう!」


私はにっこりと笑って祝う。

何であれ、誕生日は祝うものだし!

私も毎年盛大に祝ってもらっている。

お披露目はまだだと舞踏会とかは開いたことはないけど。


リュカは私をみて瞠目した後

訝しげに首を傾げた。


「君って凄く図太い性格なんだね」


呆れたように嘆息され

私はうんうんと頷いた。


5歳の子供にいちいち反応するのも考えたら凄く大人気ないし..

私が折れてあげよう。


リュカの準備が終わると

アーサーと共に護衛としてついていく。


大広間に入ると絢爛豪華なシャンデリアが並び、多く並んだテーブルの上には色とりどりの料理が並べられている。

貴族達も既にすでに集まっていて

私達が入ると注目が集まった。


社交界の場は初めてで少し緊張する。


「ルイ、今日は身内だけの誕生祭だから

そう緊張すんなよ、気楽にな」


アーサーが頭をがしっと撫でる。

この人数で身内だけって..

流石に王子の誕生祭は規模が段違いだ。


広間を悠々と歩くリュカについていく。


やはり攻略キャラなだけ会って

堂々と歩く様は華がある。


青い華やかな王子服を身にまとい

白銀髪をなびかせると

おとぎ話の王子のようだ。


周りの女性達も心なしか浮き足立っている。


私やアーサーもみられている気がするのは気のせいだろうか。


だが、向けられているのが黄色い視線だけではない事に気づく、

一部の女性達はリュカに突き刺すような視線を送っている。


彼女達を横目で見ながら溜息を飲み込む。


嫉妬と憎悪。

この人達後宮の妃達だろうな。


アデルバート国王は公妾の多い事で有名だ。

後宮も大奥かよってほど公妾が沢山いるらしい。


そしてその中でも王子を産んだ者は

後宮で妬まれ、嫉妬の対象となる。


強い女性なら絶大な権力を得られる

弱い女性は嫉妬の餌食になる。


そんな女の戦国時代が開かれるような世界。

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