2. 剣術の先生
「ルイ坊っちゃま、
アンドレ様がお呼びでございます」
「ちちうえが...?
そうか..わかった」
アリシアの言葉に私は目を丸くする。
あれから長い時間が経って、
私は3歳になった。
私の容姿はすっかり美少年になっていた。
本当は少女なんだけど。
髪型も、服装も男のものなので
少女とは思えにくいが、
やはり攻略対象のメインヒーローだけあって
その容姿は輝かしい。
それに子を溺愛するゲーム内の
エリーゼの片鱗さえ見えるぐらい、
母との関係は良くなった。
一緒に庭を散歩をしたり、
母の部屋へ行き、話をしたり
そんな日々を過ごしている。
しかし父はいつも家を空けていて
未だ顔を合わせる事も無かったけど、
まさか父から呼び出されるとは
思いもしなかった。
「ちちうえ、ルイにございます。
久しぶりにちちうえにおあいできたこと
たいへんうれしくおもいます」
父の執務室へ入ると
背筋をまっすぐに伸ばして挨拶をする。
父であるアンドレはその姿に呆気にとられたように
暫く呆然とした。
立派に紳士の振る舞いが出来ているだろうか、
アリシアやエリーゼはよく褒めてくれるが
あの二人は私の事をなんでも褒めるので今一参考にならない。
「ルイ..お前は今年で3つになるな..
子供の成長とはこれ程早いものなのか..」
アンドレは口を手で覆いながらボソボソと
何か呟いている。
「エリーゼと最近共にいるのをよく見かけると従者から聞いている」
報告しているのはアリシアだろう。
私は少し訝しんで問いかける。
「はい、ははうえとはさんぽをしたり
おはなしをしたり、
ほんをよみきかせてていただいたり
しておりますが..
どうかなさいましたか?」
ぎこちなく紡いだその言葉に
アンドレは眉間の窪みを深くする。
厳しく顰められた眼光の裏にどのような考えを覗かせているのか分からない。
ただ整った顔立ちはその迫力を一層
強く見せるので私は少し顔を強張らせた。
「私も..加えて貰えないだろうか」
ピリリと張り詰めた緊張感の中
小さく呟かれた言葉にポカリと口が開く。
「へ...?ちちうえ..?」
思わず問い返すとアンドレは大きく咳き込んだ。
頬は僅かに紅潮している。
「い..いやっ
まさか私が遠征している間に
お前達の関係が良くなっているとは
思えなくて..な、
そ、そうだ、確かめたいんだ。
それにお前は私達に良く似てかわい、
いや、聡明に育っていて
エリーゼばかりずる、い、いや
エリーゼばかりに子育てをさせては
父としての威厳が立たないだろう」
なんだこの状況..
これが..ギャップ萌えというやつなのかな..
僅かに赤くなった頬と少し狼狽えるような父の姿に
ポカリと口を開いたまま呆気にとられる。
二十代であろう父はまだ年若く、
その容姿は童話の王子のように
気品に溢れた美しさだ。
ゲーム内のルイの姿にも良く似ている。
この父はひょっとして
凄く不器用な人間なのだろうか。
私は拍子抜けして小さく息を吐く。
「ちちうえ、うれしいです。
わたしも、ちちうえともっと
おはなしがしたいです」
ぎゅっとアンドレの膝を抱くと
アンドレは暫く瞠目した後、破顔した。
それからアンドレから猫可愛がりされる日々が
始まるとはこの時の私は思っていなかった。
私が4歳になった頃
父は執務の合間に私の部屋に足繁く通うようになった。
「ルイたーん!
パパが来たよー!」
私が生まれた瞬間のシリアスな表情など
微塵も見せないほど、
アンドレはすっかり脳みそが溶かされ
親バカになってしまっていた。
すっかり溺愛父の本領を発揮してしまっている
アンドレは私が娘であるのも相まって
更にそれに拍車をかけている気がする。
「ちちうえ、くるしいですっ」
「あぁ、ルイは賢くて可愛いなぁ、
ルイが男の子で良かった、
こんな可愛い子を結婚なんてさせられないからなぁ」
父は私の頬にすりすりと自分の頬を擦り付けながら話しかける。
この父は大丈夫だろうか?
まぁ母がもうすぐ第二子を生むようだし
クロフォード家がなくなる事は
なさそうだから良いんだろうか?
でも、私は紛い物でもこの家の長男なんだけど。
「ア、アリシア、たすけてくれ..!」
ぎゅーっと強く抱かれて苦しみながら
アリシアに助けを求めるが
アリシアは嬉しそうにクスリと
微笑むばかりだ。
アリシアは私が母と和解してから
涙を流さなくなった。
父や母との関わりが深くなるにつれて
アリシアとの時間が減ってしまうのが寂しかったが、アリシアが私の境遇に悲しまなくなった事が嬉しかった。
「そうだ、ルイ、
お前はずっと剣を習いたいと
言っていただろう。
私が教えたいが生憎執務で忙しいからな。
良い先生を紹介しようと思って来たんだ」
本題を忘れていたとばかりに
立ち上がるアンドレに肩をすくませながら
私はワクワクと心を躍らせた。
まだ真剣を持つ事は出来ないだろうが
やっと剣を持つことができる、
それがたまらなく嬉しい。
入りなさい、というアンドレの声に
誘われるように扉が開くと
クールな出で立ちの黒髪の少年が入ってきた。
9歳くらいだろうか、
思いのほか若い先生に驚きながら
何か引っかかるものがあった。
「彼はジュール・ルナリアナ、
ルナリアナ侯爵の三男で
お前と同じ神のお告げがあった
光の騎士候補の少年だ。
年若いがセレン騎士団に最年少で入団が決まっている将来有望な男だ。
ジュール、これが我が息子のルイだ。
まぁ、手慣らし程度で可愛がってやってほしい。
なにせ息子はまだ4つだ、
体力づくりの一環程度で構わないから
時々見てやってほしい」
ジュール、その言葉にピンときた。
そうか、この男の黒髪に引っかかっていたが
ジュール・ルナリアナ、
攻略対象の一人だ。
一見クールで儚げな性格だが、
戦闘狂で人を殺すのに喜びを見出しているヤバイやつだ、バットエンドではヒロインが殺され、
「君は死体の方が美しいね」と
頭がおかしい発言をしていたのをよく覚えている。
だけどそれは確か彼が10歳の誕生日に
光の騎士に選ばれたジュールに兄弟が
嫉妬してジュールばかりを贔屓する母を毒殺し、
有らぬ罪をジュールにかけて斬首させようとしたことでジュールは憤慨し、兄弟を殺してしまうんだ。
それからジュールは人が変わってしまった。
だから今はまだ歪んだ戦闘狂になる前の姿。
今はそこまで警戒する事はないか。
「ルイ・クロフォード様、
どうぞよろしくお願いします」
無機質な表情は変えず手を胸に当て、
軽くぺこりとお辞儀をする。
サラサラとした艶のある黒髪から見える
琥珀色の瞳が美しい美少年。
私と並んでも遜色ない程に気品のある容姿をしている。自分で言っちゃうけど。
そんなことよりも私はその左脇に差している
剣の方が興味がある。
これが本場の西洋の剣かぁ
早く見たい!
「よろしく、ジュールせんせい
わたしのことはルイでかまわない、
シャクイとかきにせず、
きがるにせっしてよ
そんなことより、
せんせいのさしているけんを
みせてほしいな」
私がニコッと笑ってジュールの前に立つと
ジュールは少し表情を緩めた。
「ひとまず剣の稽古場に移動しよう
そこで俺の剣も見せるよ」
私はジュールに連れられて
稽古場へと移動した。
「うっわぁ〜!!!!!!
カッコいい!!!!!」
大きな薄紫の瞳をキラキラ輝かせて
私はジュールの抜いた剣を見る。
黒い髪と対のような純白の剣は
ギラリと光る艶も切れ味の良さそうな切っ先も一目で上等な剣だと分かる。
私もこんな剣を持つことが出来るのかな..
そう思うと今から浮き足立ってしまう。
私は初めてこんな境遇に感謝した。
思えば性別偽って騎士を目指しているお陰で私、これからも剣を振れるんだもんね。
うっとりとその剣を眺めていると
ジュールがクスリと小さく笑った。
琥珀色の瞳を僅かに細める、
僅かに口角を上げたその表情は
淑やかな美しささえ感じてしまう。
「すまない、本当に剣が好きなんだな、と」
私はその言葉に満面の笑みを返す。
「あぁ、だいすきだ
いつかわたしもこんなカッコいいけんを
たずさえてみたい」
そういうとジュールは
眩しいように目を細めた。
「俺も昔はただ剣が好きだったのだけどね」
ボソリと呟いた言葉に「え?」と反応するも、
細い木の剣を渡され遮られてしまった。
「小さな子供に真剣など持たせたら
肩を悪くしてしまう。
それは軽い木材で作られた短剣だ、持ってごらん」
「ぼくとうみたい...
ぼくとうよりずっとかるいけど」
「ボクトウ?」
思わず呟いてしまった言葉にジュールが
訝しげに聞き返す。
「な、なんでもない!」
「?..まぁいい、
手始めに軽く叩き込んでいいよ」
そういうジュールも
私と同じ木の短剣を持った。
短剣を持つと体から
アドレナリンが沸き起こる。
クーーーー〜!!
嬉しいよ!何年振りだろう..!
手合いの前の緊張感、
掌に伝わる剣の重み、
全てが懐かしい、
しかも相手はセレン騎士団の入団が決まっている少年だ。セレン騎士団とは近衛騎士の登竜門とされる
若手でも指折りの優秀な騎士が
集められる団体だ。
相手にとって不足はない。
「いくぞ!」
私は父から仕込まれた型で
相手の懐に滑り込む。
「!!?」
ジュールは驚いた様子で私の最初の一太刀を
その剣で受け止める。
そのまま空いた脇に剣を滑らせると
ジュールは俊敏にその太刀を交わし、
崩れた体制のまま剣をつきたてる。
「うおっ」
さすがセレン騎士、
この体勢からそんな突きを浴びせられるの?!
突きを交わすとぐらりと体制が崩れ尻餅をつく。
そのまま首元に木剣を突き立てられた。
「まいりました..」
くっ悔しい..
やはり体格差がありすぎる。
それにあの突きは読めなかった..
相手の方が一枚上手だったみたいね..
でも9歳でこの実力だったら
この世界、こんな騎士がうじゃうじゃ
いるんじゃないの..
ふふ..ふふふ..楽しくなってきた!
「いいしあいをありがとう、
ジュールせんせい」
手合いの最後は礼を忘れない、
私はジュールに握手を求めると
ジュールは酷く困惑げに私を見つめていた。
「ジュール先生..?」
「....っ!
あ、あぁ、こちらこそ」
「あそこであんなつきができるなんて
さすがセレンきし、べんきょうになりました。
わたしもあそこはかわすことをえらばずあいた
くびもとをねらうべきだったか..
いやでもそれだとよくてあいうちか..
むずかしいな..ね、せんせいはどうおもう?」
「...あの時の脇を狙った一太刀、
同じ体格であれば斬られていた...
君は本当に4つか?」
「へ?」
「いや、何でもない。
君は凄くいい太刀筋をしている
本当に剣を握ったのは初めてなのか?」
「えぇ、そうだとおもうけど(今世では..)」
それからジュール先生と何戦も手合いをした。何度か勝つことが出来たのがとても嬉しかったが、ジュール先生は終始困惑気味の様子だった。
「しょっぱなからとばしすぎたかな..
あやしまれちゃったかも..」
「どうかなさいましたか?
ルイ坊っちゃま」
ジュールとの手合いの翌日
アリシアにお茶を入れて貰っていると
扉を誰かがノックした。
「ジュールせんせいかな?どうぞ」
扉が開くと所在なさげなジュール先生と共にわらわらと騎士らしい青年の集団が入ってくる。
「申し訳ない、ルイ
私が手合いで負けたと聞いてこの者達が君の剣さばきをどうしてもみたいとついて来てしまったんだ。
アンドレ様には許可を取ったが、
君が嫌なら帰らせる」
「いや、かまわないけど..」
椿一心流の型、こんなほれほれ人に見せちゃって良いものじゃ本当は無いんだけど..。
なんか凄いキラキラした目で見られると
断りずらい。
溜息がちに周りを見ると
騎士の中に二人の目つきが他とは違う
茶髪の青年を見つけた。
この二人、ジュールの回想に出て来た兄達だ。
ジュールとこの兄達は異母兄弟で兄達が
亡くなった前妻の子に対し、ジュールは後妻の子。
後妻である義母に差別され、
光の騎士に生まれたジュールに恨みを持つ二人だ。
私の事も面白くないのだろう。
さっきから気づかれないように
私を睨んでいる。
だけどまだジュールは兄が自分を貶めようとするとは思っていないはず。
様子見をするには絶好の機会だ。
「きしのかたがたが、きてくれたし
せっかくだからてあわせねがいたいな」
稽古場に到着すると私は一つ提案した。
「わたしがきめていいかい?
そのちゃぱつのきしのかた、
てあわせおねがいする」
「えぇ、ご指名ありがとうございます。
噂の天才少年と手合わせ出来るなど光栄です」
天才少年って..
ジュールに勝ったのって
そんな凄い事なのかな。
恭しく礼をするのは
ルナリアナ侯爵家の長男
マーバインだ。
彼はジュールのように騎士としての才がなく、その上騎士としての身分だけでも勝とうとジュールの手柄を横取りしたり、騎士団の上層部にゴマを擦り、
不正な手段で名声を高めている。
もうすでに彼の悪名が密かに
広がりかけている頃だろう、そして彼はその全てを
ジュールに押し付けようとするのだ。
気弱で兄の言うことに逆らわない
弟のフレディと共に。
「ではよろしく、マーバイン」
私はマーバインに木剣を渡した。
「そういえばルイ様に土産物を持って
来ていたのでした」
「これはおかし?」
騎士達の目を盗んで渡された
紙包みの中には、丁寧に包装された飴玉のような
綺麗なお菓子が入っていて、
ガラス玉のような透明な飴の中央は
カラフルに色付けされている。
「はい、運動前に噛み砕いて食べると能力促進に
とても効果があると、ジュールが言っていましたので、東の国のお菓子だそうで
甘くて美味しいそうですよ」
「へぇ、ジュールせんせいがね」
子供相手だからと油断しているのだろう
こんな下手な手段を選ぶなんて
「ありがとう、いただくよ」
私は口の中にコロンとその飴を転がした。
「ん、たしかにあまくておいしいね」
「それは良かったです
手合いは食べ終わってからで
よろしいですよ」
私の口に飴玉が入ったことを確認すると
マーバインがニヤリと怪しく微笑んだのを見逃さなかった。
私は隙を見て飴を吐き出すと
こっそり袋に戻す。
実はこの飴、ゲーム内で登場している。
飴の中央の色付けされた部分が
毒になっていて、舐めているうちに
ゆっくり毒に届いていく仕様になっている。
マーバインがジュールの母を殺したのもこの飴だ。
同じ手で義母を殺し全ての罪をジュールに
被せようとしたのだが。
流石に今回の中身は毒かは微妙だけど
恐らく麻痺を起こさせる薬かもしれない。
小さな少年に負ける事を
この男のプライドは許さないだろうから。
「では、てあわせねがおう」
「はい、宜しくお願いします」
騎士達が見守る中
手合いは始まった。
手合いのはじまりの静寂、
この緊張感はどの手合いでも
堪らなく好きだけど今に限っては別だ。
子供相手に薬を盛り、
油断しきっている相手には
緊張感のかけらもない。
私は慣れた型で相手の間合いに入りするりと
喉元に剣を突き立てる。
ジャンプしてちょうど届く程の高さだったが
それに相手は仰天した。
崩れた相手の身体が
尻餅を打つ、その瞬間
私はあるものを抜き取り、
そのまま相手の手に鋭い小手を叩き込んだ。
カランと男の大きな手から
木剣が抜け落ちる。
「もらった」
それは一瞬の間だった。
「おい、お前..」
マーバインの震える声が静寂を壊す。
「ぼく、おてがみだいすきなんだ」
私はニコリとマーバインに笑顔を向ける。
マーバインはいつも懐にジュールに罪を押し付けるための書類を肌身離さず持っていたのだ。
封筒の中を開けてジュールに手渡す。
「ねえ、よんでよ!」
「おい、ルイ、
人の手紙を勝手に開けては...
なんだ、これ...?」
ずるしてごめんなさい
でも、知ってるのに見過ごすなんて
私には出来ないよ。
実の兄弟が責任を押し付け
貶めようとしている事を本人に伝えるのは忍びないが、私にはこれしか思い浮かばなかった。
「どう言うことか説明してくれないか、
マーバイン兄上」
息もできぬ程の緊張の間の後、
あたりが騒然とするのに時間は要さなかった。
騎士達の懐で悪事がバレた
マーバインとフレディは
そのまま騎士達により拘束され
連れてかれた。
証拠を持っている私とジュールも
事件の証言のために王都へ
行くことになったのだ。
「ルイ、君は何者なんだ?」
ジュールが私の方を真っ直ぐに見つめる。
「なにものって...
わたしはルイ・クロフォード。
クロフォードコウシャクけのちょうなんで
あなたの、けんのけいこのせいとだよ」
「俺はそんな事を聞いているんじゃないと
分かっているだろう?
いや、違うな、
何を4歳の少年に聞いているんだ俺は..っ」
ジュールは混乱している様子だ。
その様子にふふっと苦笑した。
「わたしはただ、
マーバインがふうとうを
だいじそうにもっていたから
きになっただけだよ。
せんせいはわたしをかいかぶりすぎだ」
「いや、だがこれだけは言わせてくれ。
兄上達の悪事を暴いてくれてありがとう。
封筒の内容を見るに母上まで狙われていたとは..
兄上達の俺への恨みは思ったよりも深いらしい。
光の騎士なんて選ばれたくて選ばれたわけじゃない。
俺自身の実力を認めて欲しくて剣術を磨いた所で
兄上達の憎悪をただ深めていただけなんて
とんでもないお笑い種だな..」
ジュールはふっと自重げに笑う
無機質な表情はいつになく悲痛に歪めらている。
「わたしのいえも、そうだったよ」
「え?」
「わたしがうまれたとき、
みんなわたしをかんげいしなかった。
わたしのそんざいがクロフォードけを
こわしてしまったんだ。
だけどおもっているきもちをつたえたら
すこしずつよくなった」
「そんな簡単なものじゃないんだ」
「そんなことないよ
こうかいするまえに
つたえたいことはつたえたほうがいい」
私は死ぬ前のことを思い出していた。
沙耶にも家族にも私、今までのお礼も言えずに
別れてしまったから。
きっと今も悲しんでる、
そう思うとなんだかまた寂しくなってしまう。
前世の記憶を思い返すと
酷く心細くて仕方がなくなる。
「そう、..だな..俺も。
兄上達や母上には言いたくても
言えなかったこと、沢山ある」
言ったら全てうまく行くなんて無責任なことは言えないけど、伝えずに後悔するよりはよほど良い。
私は安堵して微笑むと
ジュールの頬が少しだけ
赤く染まった気がした。
ルイの言葉がひらがな表記にしてみましたが、読みにくくてすいません;;




