表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

13. 隣国の双子の王子(1)

私はジュールに貰ったペンダントを

首に下げ、服の中に入れた。


青いマントに白い軍服、

新しい騎士服を身にまとい、

純白の剣を腰に差す。


朝の光がカーテンを優しく透過すると

小鳥のさえずりと木々の葉の擦れる音が

さわさわと爽やかに霧散する。




私は10歳になり、

今日はセレン騎士の入団式の当日だ。



「ルイ・クロフォード、前へ」


私の名を勇ましい声で読んだのは

セレン騎士団長のレンフッドだ。


年齢は20代後半というところだろう。

焦げ茶髪にがっちりとした体格は

いかにも屈強な騎士そのものだ。


「はい」


私はほかの新人騎士団員の隣に並び立つ。

他の騎士団員は16〜20歳くらいの青年が

ほとんどで隣に立つと10歳の私は完全に浮いてしまっている。


「今日からお前たちは

我がセレンの名を背負う騎士になる。

その名に恥じぬよう

誇りと熱意を持って国に尽くせ」


「「 はい! 」」


男たちの晴れやかな声が青空に霧散する。

ふと私達の前に並んでいる騎士達の中にいるジュールと目が合う。


私が強気な笑みを浮かべると

ジュールも同じ笑みを返した。


今日から私は見習いではなく、

本当の騎士になったんだ。


期待と不安、

なんだか高校の入学式を思い出す。


高校と騎士団を比べるなんて

ちょっとおかしいか。


「うわぁ、本物のルイだ!

ずっと会ってみたかったんだけど

やっぱ本物はオーラが違うな!」


式が終わると騎士団員達が声をかけてくる。

大きな身体の騎士に囲まれるとそれなりに迫力がある。


「本物、ってどういう意味?」


「知らないのか?

お前、騎士の間じゃ有名人だぞ。

4歳でジュールを負かして

王都じゃアーサーとまともに戦える

新進気鋭の天才騎士だってな!」


無邪気に言葉を発したのは

オレンジ髪の青年。

確か名前はアレックスだったかな。


「天才騎士って、

アレックスは私を買いかぶり過ぎだ

第一、アーサーにはまだ一度も勝てた事は

無いからな」


「またまた〜ご謙遜をって、ジュール!

お前はルイと仲がいいんだろ!

同じ10歳で騎士になった天才同士だもんな!」


「アレックス、あまりルイをからかうなよ」


呼び止められたジュールがこっちにくる。


ジュールは今年で15歳になる。

ここ一年で背もかなり伸び

声変わりもして立派青年に変わりつつある。


なんだか急に大人になってしまったようで

寂しくなるが変わらない微笑みを向けてくれると少しだけホッとする。


「ジュールよ、そんなことより

お前さんに聞きたいことがあるんだが」


隣で聞いていたケヴィンと呼ばれる

緑髪の無骨そうな青年が

ジュールを見てにやりと微笑む。


「噂になってるぞ〜〜?

お前、クロフォード領の街で綺麗なお嬢さん連れてただろう?

お前もついに婚約者が出来たのか?」


私はドキリと心臓が跳ねた。


ひっひぇ〜〜!!!

やっぱりあんな格好で街歩くべきじゃなかったよ!!!


私はばくばくと跳ねる心臓を抑えながらジュールを見る。

ジュールは私の方を見るとふっと

からかうように微笑んだ。


「あぁ、あれは...」


「あれは?」


ジュールが私の方をジッと見る。


ダメだよ..っ

絶対言っちゃダメだから!!


私は目を見開いてジュールに無言で訴える。

冷や汗がダラダラと流れるが

そんな事気にしている暇はない。


「道に迷っていたご令嬢を

案内していただけだ。

俺はあの街に詳しいからな」


「なんだ〜?

つまんねーの、

てっきりお前にもやっと浮いた話ができたと思ったのによ」


私が安堵の息を吐くと

ジュールは愉快げに吹き出した。


「ふっくっふふ...っ」


「おいおい、なんで笑ってんだ?

まさかなんかまだ隠してるのか〜?!」


ケヴィンが問い詰めるなか

笑い続けるジュールに

私はギロッと睨むが

ジュールは目が合うとクスリと微笑む。


全く、絶対面白がってるな...この男....。


でも、ジュールに婚約者か。

ゲームの事情でジュールには

婚約者がいない設定だった気がするけど

必ず出来る日が来るだろう。


いつかこの家を抜け出して

女らしく生きてやると誓ったけど

いつしか周りに大切な人が出来過ぎた。


私はこの家から離れられるだろうか。


ここにいる限り

私は死ぬまで独身だろうし

きっと誰かを好きになっても

その人に思いを告げることすら出来ない。


だけど今、それでもいいとさえ

思いはじめている自分がいる。


私のするべき事が終わった時、

きっと私は大きな選択を迫られる。


私はそれまでにどう生きるのか

きちんと決断しておかないといけない。



「ルイ..?」


ジュールが声をかける。

しまった、ぼーっとしていた。

私は慌てて顔を上げる。


「すまない、からかいすぎた」


ジュールは不安げに眉を寄せて

私の髪を軽く撫でる。


「なんだかお前たち兄弟みたいだな」


アレックスが微笑ましげに破顔すると

私はぎこちなく微笑んだ。


私は男として生きていく意味を

改めて実感した。


だけど今は目の前にいる人たちと

きちんと向き合おう、

いつか来るかもしれない別れの時に

後悔は絶対したくない。


だから大切にしていこう。


「みんな、今日からよろしく頼む」


私が微笑んでそう言うと、

みんな同じ笑みを返してくれた。



**********************



私がセレン騎士団に入団して

初めての任務は隣国の騎士団との

共同演習のための遠征となった。

何日も馬を走らせる経験は初めてで

それだけでもかなりの体力を消耗する。


馬は幼い頃から乗り慣れていたが

騎士の遠征となると勝手が違う。


途中で宿を借りたり、

野宿したり向かうこと数週間、

私達は隣国である

エランデル王国の王都へと到着する。


この二週間、

野宿で体を拭いたり、その他も色々

女ということを隠すのに苦労したが、

そんな苦労吹き飛ぶほどに

エランデルは美しい国だった。


国土の7割が海に囲まれた

水の都と呼ばれるこの王都は

水の上に街並みが浮かび、

ゴンドラのような優雅な模様が彫られた

木の船がたくさん往来している。


街の屋根はとてもカラフルで

見ていて飽きず、

街には花壇が多く飾られ色とりどりの

花が咲きほこっている。


私達はその景色を楽しみつつ、

王都へ向かった。


「あぁ...行きたくない..」


私は誰にも聞こえないくらい

小さな声でそう呟いた。


先程から王城に近づくたびに

嫌な胸騒ぎがする。


そう、ここにいるのだ..。

ルイを含めて5人目の光の騎士であり、

私の最も苦手な攻略キャラが..。


まぁ、極力関わらないようにすればいいか。

こんな広い城内で会うこともないだろうし。


王城に着くと、

エランデルの近衛騎士団が待っていた。

赤と黒の騎士服を身にまとい、

セレン騎士と並ぶと対のようだ。


「ようこそ、エランデル王国へ

遠路遥々来てくださり感謝します。」


50代くらいの男性が

私達の前に立って挨拶する。

その服装から察するに

かなり高位の貴族だろう。


「この者たちは我が国の剣である

優秀な騎士達を集めた近衛騎士団

第一騎士団でございます。

そして今回はお一人ご紹介させて頂きたい

方がございます」


男性は深々と頭を下げると

第一騎士団もそれにならう。


すると後ろから踵を鳴らして

ゆっくりと少年が歩いて来た。


あぁ、私も運が悪い..


年は確か13歳。

ローズクォーツのような

桃色の長髪は一つに束ねられ

もみあげはやや長く

前髪の間から見える瞳は

春の空のように甘やかに色づいている。


不意に目が合うと少年はクスリと微笑んだ。


その笑みにゾワリと鳥肌が立つ。


「このお方は、我が国の第二王子であられます、エンフィード殿下でございます。」


桃色髪の少年は優雅に微笑む。


「ヴィルセント王国の騎士達よ、

よく我が国に来てくれた。

国に変わって私が礼を言うよ。


今日より君たちと共に

演習に参加させてもらうから

よろしく頼むね」


エンフィード・レイシェンハーフ

愛称はエンフィ、


ついに来てしまったか...この男...。

私の苦手な攻略対象ランキング第一位!!


そう、ルイにとっての危険な男はリュカだったけど実は私のワースト1は別にいた。

この男がどうして嫌いかといえば簡単だ。


挨拶を終えたエンフィが

こちらへ向かってくる。

私の前に立って跪くと

右手の甲に口ずけを落とす。


艶美に細めた天色の瞳が私を写す。


「騎士の中に咲く花のようなお嬢さん、

どうかその可愛らしい唇で

私に名前を教えてくれないかい?

ヴィルセント王国は素晴らしい、

こんな可憐な乙女が騎士にいるなんて」


エンフィはふっと甘い笑みをこぼす。


かっ....かっ........


かゆい〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!


全身に電撃のような虫酸が駆け巡る。

顎がはくはくと浮きその場に硬直する。


私がなぜ彼が苦手か、

つまりコレだ。


こんな歯が浮く台詞がスラスラ出て来るところを見ると13歳ですでに女好きの片鱗を感じる。


エンフィは隣国であり、

ヴィルセント王国との同盟国である

エランデル王国の第二王子で

第一王子の双子の弟だ。


そして、光の騎士に選ばれた異例の人物。


エランデル王国は双子の王子の間の勢力争いでもめている。


かつてまでは通例通り双子の兄である

第一王子に次期王位が

渡る手はずであったが、


ヴィルセント王国の王女と国王の間に

生まれた次男であるエンフィが

「光の騎士」として

生まれてしまったことで、王位は揺らいだ。


魔女の存在は隣国にも脅威であり

100年前の魔女出現の際も大気が荒れ

街は波に飲まれ甚大な被害が出たという。

かくいうヴィルセントと同盟が結ばれたのも魔女から国を救うためがきっかけだった。


そのため光の騎士がエランデルにも生まれたことはエランデルにとって革新的な出来事で、エンフィを次期王に担ぎ上げる勢力も当然出現してしまったのだ。


第一王子である双子の兄は

王位を奪いかねない双子の弟を恨み、

エンフィ暗殺を企てる。


そんな彼は人を信じられず

王位争いに嫌悪し、王位から離脱するため

女にうつつを抜かす放蕩息子を演じていく。

しかしやがてそれが本当になっていく。


バッドエンドは

エンフィはついに王宮に見放され

ヒロインはエンフィの都合のいい女になって

一生片思いで終わるというエンディングだ。


私はあの瞬間、ヒロインにもエンフィにも腹が立ってコントローラーを投げつけそうになったのを覚えている。


「恐れながらエンフィード殿下、

私の名はルイ・クロフォードでございます。

そして私は乙女ではなく“男”です。

そのような振る舞いは

どうかおやめください」


私は極めて気丈に微笑む。

弧を描いた唇がピクピクと歪みそうになるのを堪えながら。


「ルイ・クロフォード

.....へぇ、君が光の騎士の一人か

私が性別を間違えるなど

あり得ないと思っていたけれど」


エンフィはつまらなそうに笑みを消した後

私を静かに睨む。


エンフィは光の騎士が嫌いなのだ。

王位争いに辟易している

エンフィにとって

光の騎士は足枷でしかない。


その境遇には同情するが

彼は人一倍異性のことに関しては鋭い男。


極力近づかないのが

クロフォード家のためだろう。


そして何より...

私が近づきたくない!


歯が浮きそうなセリフを聞くと

ぞわぞわするし、

あの蠱惑の灯る瞳を向けられると

大蛇に睨まれたような気持ちになる。


冷たい瞳で睨むエンフィに

私は微笑みを返すとエンフィは訝しむように

瞳を細めた後その場を立ち去った。


遠征先にアリシアは連れていけないため、

今後は私一人で秘密を守っていかねばならない。それも、女にはめっぽう鋭い色ボケ王子の目をかわして...


まさか一目で女だとバレるなんて思ってなかったよ...


さっきは誤魔化せたけど

もしバレたらクロフォード家の爵位は失墜

間違い無しだ。

そんな事になれば

あの母は命を絶ちかねないし..


私ははぁ...と溜息を零す。

胸に携えた勝利の女神に願掛けした。


神様仏様女神様、

どうか私の性別がバレませんように...


そしてこの城を無事に

出ることが出来ますように!


私の切実な願いをかき消すように

王城に歓迎のファンファーレが響き渡る。


私は両手に力を込めて

華やかに演奏する音楽隊を眺めていた。


歓迎の式典が一通り終わり、

夕食を済ませる。


私達セレン騎士はエランデルにいる間、

王宮の宿舎に泊まることになった。


宿舎といっても

豪奢な屋敷のような建物で

一人一人に個室が割り当てられている。


流石にセレン騎士は殆どが高位貴族の集まりのため、待遇が良い。


私は部屋で荷を片していると

扉を誰かがノックしてくる。


「はい」


もう夜も更けているけど

こんな時間にどうしたんだろう..?


私は扉をガチャリと開ける。


「やぁ、」


「はっ....???!!」


扉を開けると目の前にいたのは

にこりと微笑むエンフィだった。

私は驚いてその戸を閉じそうになるが

エンフィに片手で防がれた。


「君、王子相手に無礼なのではないかい?

その手を離したまえ」


エンフィは冷たい瞳で私を見下ろすとそのまま押し入る。


「申し訳御座いませんエンフィード殿下

まさか殿下がこのような所へ来られるとは思っておらず...無礼をお許しください

しかし殿下、このような時間に如何なされたのです?」


私が聞くとエンフィは妖艶に瞳を細め

私の顎に手を添える。


「?!」


「君、本当は女だろ?」


どくりと脈拍が跳ね上がる。

私は眉をひそめそうになるのを堪え

極めて冷静に振る舞う。


笑え、私..


「ふっ殿下、ご冗談を

私はクロフォードの長男でございます。

私が女であればこのような場にいる理由がありません」


私の言葉にエンフィは口角を上げる。

しかし瞳は私を咎めるようにギラリと光る。


「はっ理由ならあるじゃないか。

君は光の騎士だろう?


君は神官のお告げの元に生まれてきた。

だが君は女だった、

賢愚なお前の両親は

王との約束を違える事を恐れ

君を男と偽らせ育てた、どうだい?


ふふっ....正解だろう?」


しとりと冷たい汗が背を伝う。

エンフィは勝ち誇ったように微笑んだ。


「殿下は一体何を思って

私を女だと思うのですか。


私はまだ齢10故

身体はまだ稚く感じるでしょう。


だがそれが理由だと仰るならば

そのお考えは

余りに浅はかではございませんか」


「私が君が女だと思う理由など

簡単なことだよ。それは私の勘さ、

私の勘は私が何より信頼しているものだ。


私が今日まで生き残ってこられたのも

全て勘のなせる技だった。


だが、君はそこに論理がなければ納得しないようだね、では質問を変えよう。」


エンフィは私の首に真っ直ぐに剣を突き立てる。


「今ここで服を脱げばわかる事だ。

君が男であるならたわいないことであるはずだよ。君は私の命に従えるかい?」


どくりどくりと脈拍が勢いを増す。

緊張で喉も乾ききっていた。


どうする、

当たり前だけど潔く脱ぐなんて事は出来ない。私は女だ。


まだここに来て1日もたって無いのに..


まさかこんなに早く女だと問い詰められるなんて、やはり神は私の願いなど叶える気は無いようだ。


張り詰める緊張感の中

不意にどこからか刺すような視線を感じる。


「殿下!!下がって下さい!!!」


私は突きつけられた剣を手を切らないようにぐいっと引くとその衝撃で

前に倒れこんだエンフィを庇い真っ直ぐに飛んでくる小さな矢を自分の剣で叩き落とす。


吹き矢だ、しかも矢の切っ先の針には毒が塗ってあるように見える。

直ぐにエンフィを中へやり扉を閉める。


既に暗殺の計画は実行されているの..?


「殿下、ご無事ですか..?

こんな時間にお一人で出歩くなどどういうおつもりですか!殺されたらどうするのです!!」


私は膝を折ったエンフィの肩を立ったまま両手で掴む。


暗殺の計画が始まってるのに

この王子はなぜこんな安易な行動が取れるんだ?

ゲーム通り生き残れる保証なんてどこにも無い 、ここは現実なんだから。


私が怒気を含んだ瞳でエンフィを見る

エンフィは目を丸くすると

自嘲げに微笑む。


「.....私が狙われていることを

知っていたような口ぶりだね。


夜が更ければ何処だって私の安息の地などないのに出歩くなだって?

まさか君、寝室は安全だとでも言いたいのかい?」


私はその言葉にハッとする。

第一王子が敵なのだから

この王城のどこにも

ゆっくりと眠れる地など無いんだ。


エンフィはしばらく寝ていないのだろう

目の下に少し隈が出来ている。

挨拶の時は化粧か何かで隠していたのか。


「殿下、この部屋のベットをお使い下さい

流石に刺客も同盟国の騎士の部屋に押し入る事は出来ないでしょう。


私の家はこう見えて自国ではそれなりの権力を持っていますから

私はここで周囲を警戒しますからご安心を」


私はエンフィに手を差し伸べると

エンフィは怪訝な眼差しを向けてくる。


「まさか君、私に恩を売って

秘密をバラされないようにしようとしてる?

それに君が安心だという保証はどこにある?」


私はエンフィの氷のような眼差しに嘆息すると、荷から紙と羽ペンを取り出した。


私はペンにインクをつけるとすらすらと文字を書き、剣で軽く親指を切ると

その紙に押し当てた。


私はそれをひらりとエンフィに見せる。


「それでは契約にしましょう、

私がこの城にいる間、

私は殿下の睡眠を保証する代わり

殿下はこれ以上私の素性に関わらない


お互いにきっちりメリットがある契約です

のんでくださいますか?」


暫くの沈黙の後

エンフィはジロリとこちらを見る


「君が寝込みを殺そうとするなら先程の毒矢も斬っていないか。

いいよ、君がこの城にいる間だけは契約を受けてあげる」


エンフィは紙に血印を押すと

ベットに横になる。

私はひとまず安堵すると

扉の前に剣を抱えて座り込んだ。


エンフィは私が女である事をほぼ確信している。私が態度で示してしまったからだ。


そしてそれはエンフィにとって命綱のようなもの、私が女であると周りに知られれば

神官のいう「光の騎士の男が生まれる」

というお告げは戯言だと証明できる。


神のお告げが戯言だとなれば

エンフィの王位は取り下げられるだろう。

王位争いから身を引かせられれば

エンフィの命が狙われることもないからだ。


この契約期間はたったの数週間、


それまでに私は自分の素性をバラされる前に別の形でエンフィの暗殺をやめさせなくてはならない。


きりりと痛む胃に溜息を零しながら

夜を明けさせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ