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題名のない灰色日記  作者: すずしろ
19/34

白磁の国と私。その2

随分遅くなってしまいました……すみません

 さあ、魔法が使えないと分かり内心大慌ての私ですが、表面上は至って冷静極まりないです。ええ、それはもう普段と同じような感じです。



「……とりあえず、どう探すかを考えましょう。まずはそこからです」



 とっても落ち着いている私は、冷静にユナさん達を探すことを優先させます。

 ……いや、ほんとにどこにいるんですか? 町中をグルッと歩いてみたんですが見当たらないし……かと言ってサーカス小屋のような場所も無い訳でして……



「どこにいるんでしょう……」



 私一人での探索は限界を迎えていました。これはもう聞き込みをするしかないですね。ただこの町、歩いてみて分かったのですが人の通りが少ないんです。だからなのか、露店の類は一切見ないんですよね。とりあえず人を探しましょう。



「すみません、この国にサーカス団の方達って来ていますか?」

「……いや、俺は知らないな。あんたはそれを追いかけてきたのか?」

「そんな感じです。ここに行くという手紙を貰ったので」

「そうか。まあ、気をつけな。この国は余所者に冷たいからな」

「そうですか。ありがとうございます」



 そこからも何人かに話を聞いてみたのですが、どの人も返事は知らないそうです。

 どうしたものか……全くと言っていいほど情報が集まりません。困りましたね、しかもお腹もなりはじめました。陽も頂点まで昇り、時刻はお昼を過ぎた辺りでしょう。


 今は休憩です。ご飯を食べて思考をリセットしましょう。と、そんな訳でよさげなお食事処を探しましょう。あっちこっち歩き回ったおかげで何処に何があるのか大体分かっちゃったんですよね……という訳で、気になったお店に足を運びます。

 そこにはテラス席があって、街の様子を見ることが出来る上に単純にご飯が美味しく感じます。ええ、後者は単なる気分ですが。



「いらっしゃいませお一人ですか?」

「はい。テラス席って使えますか?」

「ええ、使えますけど追加で銅貨を一枚必要になりますが、よろしいでしょうか?」



 それくらいならばたいした問題にはならないので、私は了承してテラス席で座ってメニューを開きました。……開いたとしても、頼むメニューは変わらなかったですが。


 私はオーダーを通してから待っている間、テラスから町の大通りをぼんやりと眺めていました。魔法が使えるなら視界だけを上に飛ばして探索なんてことも出来るんですけど……残念ながら今の私はか弱いただの女の子ですから。

 剣技やら動きやらは頭の中にありますけど、あの動きというのは私の魔法依存の動きなので、結局のところ使おうとすると、私の本来の身体がついて行かずにつんのめったりする訳なので使えないんですよね……



「お待たせしました。白魚のムニエルです」



 か弱い私の事を考えていたらいつの間にか料理が運ばれて来ていました。そうそう、これが気になっていたんですよね。大きなお皿をこれでもかと占領する一匹の魚を香ばしく焼いて、その上に香草をそっと乗せてある一品。看板に随分と綺麗な絵で描かれていた上に滅茶苦茶おススメされていたので気になっていたんですよね。



「ではでは……いただきます」



 私がナイフを入れて、口に運ぶと香草の風味と力強い白魚の味が私の空きっ腹に幸福を与えてくれます。付け合わせの野菜も美味しいですし、いう事ありませんね。


 ぺろりと食べきって、食後のコーヒーを飲んでホッと落ち着いていると、店員さんがこちらに向かってきます。何かあったのでしょうか?



「お客様はここに観光に来た方……ですよね?」

「ええ。ここに来たサーカスの劇団を探しているんですけど……」

「ここに来た劇団の人達……ですか?」

「はい。街中で聞いては見たんですけれど、あまり成果が無くて……何か知っていたりしませんか?」



 ウエイトレスの人は少し考えたあと、多分、と前置きを踏まえて上で話し始めました。



「街の方たちに教えて貰えなかったのは、ここに来た劇団の人達ではなくて、ここに戻ってきた人たちなのではないでしょうか……?」

「え……そんな細かい事で教えて貰えなかったんですか?」

「この国の人ってそういう所凄く拘りというか……頑固なんですよね」



 ウエイトレスさんは苦笑混じりにそう言ってから、私の予想が合っているならここにいると思いますよ、とメモ書きをくれました。

 そして、離れる時にいい笑顔でこう言い残していきました。



「情報量、銅貨五枚でいいですよ♪」



 ◇◆◇◆◇◆◇



 私はお店を出て、メモ書きの場所に向かう事にしました。

 ここからだと中央広場を東に抜けた先にあるらしいですね。今は開いているのでしょうか……?というか、本当にウエイトレスさんの言った通りなのかどうかですよね。これで違ったら払い損のうえに振り出しですよ。

 目的地まで一直線に歩いた私は、目的の場所にたどり着きました。一見何もなさそうな建物ですが、よく見ると階段が脇に作られていて、そこから下の劇場に行くことが出来るようになっているようです。一度通っていますが気付くかそんなのって突っ込みたいです。


 そこそこあった階段を降りて、劇場の扉を開けると赤絨毯の敷かれたエントランスに出迎えられました。この国は見かけこそ真っ白ですが、お店の中や建物の中等はそうでも無いようで、寧ろカラフルなお店が多かったりします。そういう反動なのでしょうか?



「サーカス劇って今日はやっていますか?」

「少々お待ちください」



 受付の男の人がパラパラと何か冊子を捲って演目を調べているのでしょうか、一通りそれを見た後パタンと冊子を閉じて。



「今夜、南の港町から戻ってきた劇団が一座滞在しておりますので、それの演劇であればございます」

「わかりました。それで構いません。チケットの代金はいくらですか?」

「代金はお一人様銀貨一枚です」

「分かりました」



 私は代金を払うと、受付の人からチケットを貰いました。開演時間にはまだ時間があるのでまたぶらぶらと散歩する事にします。


 とりあえず、大きな問題が解決して肩の荷が降りた私は劇場を出てグッと腕を伸ばしました。陽が傾くにつれて少しずつ人の量が多くなってきていますね。

 何か暇を潰せそうな所は無いでしょうか……と、ぼんやりまた歩いていると射的館なる場所を見つけました。ここは日中は開いていない場所っぽいですね。私の記憶にありませんし。

 という訳で、暇潰しのために早速入ってみると、軽快な発砲音が辺りから聞こえます。なるほど、射的館という名前の通り外環側には複数の射的台が設置されていて、各々が好きな所へ行き、所々で違う場代を払って遊ぶという感じですか。

 お金はありますけど、なにぶん初めてなので私は一番安い射的台にお金を払って、銃を受け取ります。台の上に乗っている景品もクッキー等のお菓子類ですから、失敗してもそこまでムキになって狙う事もないでしょうし。



「……」



 数分後、そこには銀貨を四枚浪費して尚、一つの景品も得ることの出来ない下手くそがそこにいました。



「も、もう一回です!」

「嬢ちゃんそろそろ諦めたらどうだい? もう銀貨四枚は使ってるよ」

「う、煩いですよ……もうそろそろ落とせますから……!」



 よーく狙って打ち出した玉は悲しい事に明後日の方向に飛んでいきました。才能が無いって悲しいですね。

 持ち弾が無くなって、新たに銅貨を払おうとすると、後ろからぽんぽんと肩を叩かれました。何ですか、今の私はかなり機嫌が悪いですよ?



「私に一回だけやらせてもらってもいいかな? ほら、同職のよしみってやつで」



 横からそう悪戯っぽく笑いかけてきた人は、黒髪のセミロングに紺色の瞳。私より少し身長が高めで凛々しい顔立ちをしていてどちらかと言えば女性受けしそうな第一印象でした。彼女は外套を私にチラリと見せてきます。見えた二つ名は弾頭の魔女。いかにも銃が使えそうな名前ですね。

 彼女は料金を払うと、置いてあった銃を手に取ってほぼノータイムで景品を狙い引き金を引きました。すると、今まで私が当てられなかった景品に嘘のように簡単に当たったうえにポトンと落ちたではありませんか。

 それだけではなく、ぽんぽんと彼女の手によって撃ち出される弾は必ずどこかの景品を落としたうえ、ものによっては二個、三個同時に落としてすらいました。……向き不向きって、やっぱりあるんですね。



「そ、そう睨まないでって! これが欲しかったんでしょう?」

「いえ、別にそういうわけでは無くてですね……」

「え、違うの!?」



 何ですか、その私が余りにも欲しすぎてムキになって狙ってたのを颯爽と現れて取った上に譲っていい人っぽく見せようとしたら全然違いました、みたいな顔。



「私はただの暇つぶしをしてただけですから……あ、でも貰えるならありがたく頂きますね」

「ああ、どうぞ……じゃなくて! 暇つぶしって、何待ってたのさ。ここでなら幾らでも時間を潰せるだろう?」

「時間と一緒にお金も凄まじい速度で消えていきますけどね。私の場合は」

「ご、ごめんなさい……」



 しゅんと小動物のように項垂れてしまう彼女に罪悪感をほんの少しだけ感じてしまった私は、一つため息を付いてから。



「……まあ、私が下手くそなだけなのでそこは良いんですよ。貴女は観光ですか?」

「ん、そうだね、そんなとこ。ただ、いざ中に入ったら拍子抜けしたよね、見た目はド派手なのに中はそこまで賑わってないし、人も少なくて暇つぶしにいい所ないかなーってずっと探してたんだよ」



 なんか魔法も使えないしさーとボヤいてましたし、魔法が使えないのは別に私だけではないようですね。あの巨大な城壁の力なのでしょうか?



「私はこの国に戻ってきた人に用があったので来たんですよ。ただ、怪しい噂があるんですよね」

「怪しい噂……?」

「ええ、あまりこの国の人がいる場所で話すのもあれなので人気のない場所に行きましょう」

「それもそうね。……そういえば名乗っていなかったわね。私はアリサ、弾頭の魔女で通ってるわ」

「私はシオンです。青の魔女……です」



 軽く自己紹介をすませた所で、私は話に聞いた白磁の国の怪しい噂をお話しました。

 アリサさんはふーむ……と少し考え込んでから私の方を向いてニコッと笑いかけてきます。とても嫌な予感。



「私たち二人でその噂、ほんとなのか確かめない?」



 嗚呼、予感が当たってしまいました。面倒事が増えた……

こう、頭の中では出来てるんですけどいざ文字におこそうとするとやる気が出ないってありますよね。

頭の中の文章をアウトプットする装置が欲しい……って、前にも言った気がする

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