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題名のない灰色日記  作者: すずしろ
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白磁の国と私。

「お嬢さん? 生きてる?」



 誰ですか、私の顔をぺちぺち叩くのは。起きてますよ、失礼ですね……



「んん……頭いた……」

「お、起きてる。はい、これ飲んで」



 ぼうっとした頭でぼんやり目の前の人を見つめていると、水を渡されました。少し酸味のある水を飲み切ったら少し目が冴えて、頭も少しずつ動くようになってきました。



「お、おはようございます……?」

「おはようって時間ではないかな……貴女お風呂の中で茹だってたわよ?」

「うぇ……そうだったんですか……それは申し訳ない……長風呂はダメですね」

「慣れてない人は特にね」



 そう言うと彼女は手を差し出してきます。あ、お金取るんですね。



「……いくらですか?」

「ま、恩を売るって意味でさっきの水の分だけでいいわ。銅貨二枚ね」



 まあ、仕方ないですね。私は鍵を差し込んで鞄の中から財布を取り出し、二枚の銅貨を渡します。



「まいどあり~」

「こればっかりは自業自得ですからねぇ……」



 私は一つため息をついてから、もう一度入り直そうかとも考えましたが身体が火照って仕方が無いので出ることにします。仕方ないですね。



「貴女ってもしかしなくても魔法使い?」

「え……そ、そうですけど……何か?」



 これは何か頼み事をされる気配。



「じゃあさ、ちょっと私の頼み事、聞いてくれない? 助けてあげたしさ」

「内容によりますけど……」



 予想通りでしたね。

 という訳で話を聞いてみたのですが、どうやら助けてくれた女性と一緒に住んでいた想い人が行方不明らしく、魔法で探してはもらえないかとの事。書き置きとかもなく仲も悪くなかったから、何かの事件に巻き込まれたんじゃないかと気になって夜も眠れないとか。



「うーん……事情は分かりました。貴女の家に行っても構いませんか?」

「え、どうして?」

「その人の持ち物からもしかしたらいる所が分かるかもしれませんから。かなり風水や占いじみているので過度な期待だけはしないでくださいよ?」



 そう言って、私は彼女の家に向かいました。

 彼女の家は中央通りの奥に作られている住宅街の中の一つでした。彼女が扉を開こうとすると違和感を感じました。



「扉が開いてる……?」



 おや、鍵をかけ忘れたという訳でもなさそうです。という事は空き巣……でしょうか? もしも空き巣が中にいるなら私が前に出たほうが良さそうですね。丸腰の彼女よりかは幾分かは戦えますよ。という訳で、慎重に家の中を進みます。もしもの為の魔法も勿論待機中です。



「もしもの為に、後ろにいてくださいね」

「え、ええ……」



 扉を慎重に開けると、そこにいたのは――



「ルカ!?」

「エリオ!?」



 彼女の想い人さんでした。……あれ? どこかで見たような気がしますけど……



「あ、貴女はあの時の魔法使いさんじゃないですか!」

「……あーあの時一緒に捕まってた人ですか」



 そうですよね通りで見覚えがあると思いました。彼女――ルカさんはどういう事なの……? と困惑した顔でこちらを見るルカさんに私とエリオさんで今までの事の顛末を話していきました。



「そ、そうだったのね……ありがとう。魔法使いさん」

「い、いえ……もう十分なくらいエリオさん達から感謝されてたのでお腹いっぱいなんですよ」



 苦笑いしながら出された紅茶を飲みました。あ、美味しいですねこれ。

 それからは特に他愛もない話をしながら時間を過ごしました。ただ、その中で気になる話もありました。内容は私が向かおうとしている白磁の国についてです。

 何でも、一度そこに入ってしまうと国外に出ることができなくなるとか、何とか国外に出てきた人も身ぐるみを剥がされ、手持ちに真っ白な石を一つ持たされているだけ……らしいです。



「俺も最初は半信半疑だったんだが、一月ほど前に俺たちの商隊が白磁の国の近くを通った時に見つけちまったんだよ。しかも何でかわかんないが、その石っころを頑なに離そうとしないんだ」



 実際に見てしまったのならそうなんでしょう。しかしその白い石は何なのでしょうね? わざわざ自分達がやったという自己顕示なのでしょうか。

 ……そんな所に行って大丈夫なのでしょうか。ユナさん達が無事に出られるという保証はありませんし、助けに行くのはリスクが圧倒的に高いです。それに全員を助けるプランを立てないといけないです。



「ありがとうございます。結構重要な話も聞けてよかったです。これから白磁の国へ向かおうと思っていましたから」

「成程な。こんな話聞いたら気にはなれども行きはしないよな……」

「普通ならそうなんですけどね……私の知っている人達がそこに行ってしまいましたから、助けてあげないといけなさそうです」



 私が呆れたため息混じりにそう言うと、ルカさんとエリオさんは二人揃って同じような苦笑混じりの笑顔で言ってきました。



「まあ、なんというか予想通りかな」

「だね。結構君ってお人好しだったりする?」

「な……! し、失礼ですね。そういう訳ではないです。単純に彼女達には縁があったのでそんな場所にいるのなら助けてあげたいって、そう思っただけですよ」

「そういうのをお人好しっていうのよ」

「うう……」

「別に私達は止めたりしないわ。でも気を付けてね、貴女のその行動で貴女自身が危険に晒されるかもしれないんだから、よーく注意しなさいよ?」



 ルカさんにそう言われ、私は素直にはいと答えるしかありませんでした。

 しかも、泊まる場所がない事も何故かバレていたのでルカさんの家で一泊する事になりました。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 朝ごはんまで頂いた私はお礼を言って、白磁の国へと向かう為に商業の町を去ります。白磁の国まではそこまで遠くはないので、私は周りに生き物がいないことを確認してからぴょん、と宙に浮かぶと自分の真後ろから推進力としての衝撃波を連続して発生させて空中を高速で移動します。

 これ、調整しても衝撃波が辺りに響いてしまうので迷惑かけちゃうんですよね。だからあまり使いたくはないんですけど……事態が事態ですからね、形振り構ってはいられないです。私は出せる最高速で白磁の国まで飛ばしました。

 そのかいあってか、一日かかると言われていた道程を四刻程でたどり着きました。確かに吸い込まれるような真っ白な壁に覆われていて、遠くからでも目立ちます。というか、あれ以上に目立つものを私は見たことがないです。

 城門の前に降り立つと中から門兵が出てきました。



「入国希望か?」

「はい。二、三日ほど」

「……身分を証明できるものは?」

「この外套ではダメですか?」



 私が外套の裏側を見せると、魔法の糸で縫い込まれた文字がそこには書かれていました。


『白の魔女より、弟子シオンへと送る』と。


 この文字は弟子である魔法使いと、師である魔法使いの二人の魔力を織り込んでいるのでどちらかでなければこの文字が浮かび上がる事は無いのです。だからこそ証明になるんですね。



「魔女か」

「ええ、とは言っても旅の魔女ですが」

「そうか。通れ」



 軽いやり取りの後に、城門横の小さな扉の鍵を門兵が開きます。


 いざ、白磁の国へ。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 という訳で、しばらく歩いて見たのですが感想としては、真っ白です。マジで真っ白です。何だこれ。

 何がすごいって、雨とかは降るはずなのに家もあの城壁も真っ白なんですよね。街の人に手入れをしているのか聞いてもしていないって答えますし……一体どんな素材で出来ているのやら……あ、町の人の服も白かったです。この町で白以外の服を着てるの実は私だけなのでは?

 あ、いや一座の人達も白い服はなかった……筈ですし、やはり白以外の服を着ている人を探すのがいいでしょう。


 そんな感じで町中を歩き回っていたのですが見つからず……魔法で探すにも関係するものなんて持って――

 あ、いや、あります。あの時の手紙はユナさんが書いたものです。あれを触媒にして辿れば見つかるかもしれません。

 早速私は魔法を使うために一度路地裏に隠れます。そこそこ時間がかかる魔法ですから、大通りで使う訳にもいきませんからね。

 手紙より一回り大きな紙に魔法陣を描き、その中央に触媒となる手紙を乗せて、私が魔法を唱えると――


 何も起きませんでした。いえ、比喩とかじゃなくて本当に何も起きなかったんです。より具体的にいうなら魔法そのものが発動していませんでした。

 魔法そのものが発動しない時は、使用者の魔力が足りていないか、魔法を封じられた空間かのどちらかしかありえないのですが……



「もしかしなくても私、大ピンチ?」



 今更隠す事でも無いですが魔法が使えない私は、ただの女の子なのですから

まだ生きてます。

やっぱり筆の進みが遅くなった気がしますね……何とかしたいですけど、どうにもならないものなのかな……?

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