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題名のない灰色日記  作者: すずしろ
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商業の町と私。

まだ三が日!!(現実逃避)


 海沿いの道を数日間。私達はようやく次の町へと辿り着くことが出来ました。



「もうすぐ着きますよ、シオンさん」

「んぅ……ふあ……そうなんですか……?」

「もー寝ぼけてるんですか?」



 寝起きの私を道化師役のユナさんがゆさゆさと揺さぶって起こしてくれますが、勢いがよすぎて中々に気分が悪くなります。馬車の揺れに更に足されてますからね。



「お、起きてますから……揺らさないで……」



 私の今にもリバースしそうなその声でユナさんは手を止めてくれます。こうでもしないと止めてくれないのは何日かの旅路で理解しました。

 ぼんやりと開いた窓から風に当たりながら、壁の向こうの町を見つめます。耳をすまさずとも町の外まで聞こえてくるうるさいくらいの喧騒に、私は楽しみにしながら町の中に入るのでした。



 ◇◆◇◆◇◆◇



「こいつの値はどう考えても銅貨六枚だろぼったくってんじゃねえよジジイ!」「んだとこのガキ!俺のもんにケチつけてんじゃねえぞ!!」



 町に入って最初の景色はそんな怒号飛び交う町中でした。修羅の国ですかここは。

 後ろのユナさん達の様子を見ても苦笑いしていますし、明らかに予想と違った町だと思っている事でしょう。私もそうです。手が出てないだけマシですが言葉の無法地帯とはこういう事を指し示すのでしょうか?

 荒くれ者と同等レベルのそんな場所を抜けると、そこには――



「うわ……すごい……!!」

「そう、ですね……」



 思わず私も言葉を失ってしまう程の景色がそこにはありました。先程とは違う明るい活気と、チェスのマスの様に綺麗に分けられた街並み。値段や品質での口論はあるものの、先程のようなすぐにでも手が出そうな雰囲気はどこにもありません。商業の町の本当の姿はこっちなのでしょう。



「では今日は各自自由行動で」



 今日の宿の前で座長さんがそう言ったので、私はユナさんと一緒に街に出る事にしました。まだ町の上澄みの部分しか見ていない私たちは目的の物を見つけに旅に出るのです。

 私は面白そうな魔法を使うための触媒を、ユナさんは思い出になるものと言ってましたし、誰かにプレゼントでもするのでしょうか。それを聞くのは野暮だと思いますから、私は誰にあげるのかというのを予想するだけに留めておきましょう。



「どうしますか? ここから分かれます?」

「そう……ですね……シオンさんと欲しいものも違いますし、そうしましょうか」

「わかりました。ではまた後で中央広場に集合という事で」



 私達はそう言って別れました。私の向かう場所は魔法の触媒が売っていそうなところ、雑に言えば怪しい通りですが。という訳で、私は怪しそうな雰囲気のする場所へとずんずん突き進んで行きます。

 途中で何度か声をかけられた気もしましたが全部無視ですね。遊んでる見た目してましたし、多分何かの勧誘とかでしょう。そうじゃなかったらすみません。

 そんなこんなで裏通りっぽい所にやってきたわけですが──



「……ちょっと間違えた感じありますね……」



 そこで売っていたのは何と奴隷でした。どうしましょう……私の欲しいものはどこにあるの……

 私にはこの市場をどうこうなどする事など出来るわけでもないので、早足でここを抜け出す事にしました。見てるだけでも痛ましいですし……



「嬢ちゃんこんな辺鄙な所で何してんだぁ? あんたも奴隷が欲しいクチか?」

「いえ、道に迷っただけです。それに私は旅の魔法使いですから。自分一人だけで精一杯です」

「そうか魔法使いか……そりゃあ悪かったな」



 にやにや笑いを浮かべながら私に話しかけてきた小太りの男に私は突き放すようにそう言ってあげました。魔法薬の材料が本当にどこで売っているのやら……実は表通りにあったとか、そんなオチがあったりします?

 あまりこの景色を長く見ていたくないために小走りで抜けようと考えたその時。



「むぐっ!?」



 私の口に何かを当てられました。振り払おうと魔法を使おうとしたあたりで私の視界が突然黒く染まっていきました。

 ああ、これは不味いやつだと心の中で思いながら私の意識は闇の中に沈んでいきました。



 ◇◆◇◆◇◆◇




「ん……」



 目が覚めた時、私がいたのは明らかに独房のような部屋の中でした。やってしまったという感情と私にこんな事をするなんていい度胸してますねという感情が入り交じった心境の中、立ち上がろうとするとガチン、と金属音がしました。ご丁寧に手錠がかけられていました。どうしましょう。



「目覚めたかい? 魔法使いのお嬢さん」



 どうしようかと手をこまねいていると、先程話しかけてきた小太りオヤジがやって来ました。



「ええ、最悪の目覚めですけどね」

「そりゃあ、そうだろうなぁ。変な勘違いをされると困るから言っておくが助けなんてものは来ないぞ? ここは街の裏の更に裏。非合法の奴隷や薬何かの取引所なんだからな」

「で、私を奴隷として売り払おうって魂胆ですか?」

「よく分かってるじゃねぇか。胸は多少貧相だが顔は悪くないし売れるだろうよ」



 貧相とは失礼ですね。人並みくらいにはありますよ。……多分。

 そんな馬鹿な事を考えている暇があるなら、私はまず脱出の方法を探した方が建設でしょう。このままでは本当に売られかねません。ですが、持ち物は全部取られた上に、手は手錠が嵌っていますから八方塞がりもいいとこです……と、言いたいですが私をただの魔法使いと一緒に考えてここにぶち込んだのが運の尽き。私はその辺の魔法使いとは違って口頭詠唱だけでも魔法が使えますからね。あくまで杖は安定した触媒としてのもので、決して必要不可欠な物ではないのです。練習してて良かった、私賢い。



「風の刃よ。我が障害を切り開け!」



 私の魔法が発動すると、パキンと軽い音と共に手錠が破壊されました。手の自由を得て、とりあえず自由に動けるようにはなりましたが未だ檻の中ですし、私の荷物も何処だかわかりません。



「うーん……騒ぎでも起こせば私のカバンは見つかってくれるでしょうか?」



 こういう時の私の考えは何故かバイオレンスで大味なので後先を考えていません。とりあえず騒ぎを起こせば何かしらの方向は転じてくれると思ってますから。ほら、何事も最初の行動が肝心っていいますし。

 という訳で、いざ行動──



「あ、あんた! 逃げるなら俺も一緒に連れて行ってくれないか!?」

「わ、私も一緒に行きたい!」



 何と脱獄希望の方が現れてくれました。まあ、それはそうですよね。こんな所に望んで捕まっている人なんてそうそういませんし。



「えっと……それは構いませんけど、それならどなたか捕まった私たちの荷物がどこに集められてるとか分かりませんか?」

「それならわかるぜ。あいつらは一旦俺達から奪い取った荷物を保管庫に集めておいてあるって言っていた。場所も見当がついてる」



 手錠に繋がれた男の人がそう言います。どうせ逃げるなら派手にやった方がいいと思いますし、みんなで脱獄しちゃいましょう。という訳で私は魔法で檻と捕まっている人たちの手錠を壊していきます。両側が壁で、しかもかなり薄暗くて目の前の檻しか見えなかったのですが、通路に出てみるとかなりの量の牢獄がありました。

 ただ、既にこと切れた人などが牢獄の中に放置されているのを見るといい気分にはなれません。私は今助けられるだけの人を全てを助けると、そのままなだれ込むように通路の奥へと駆け出しました。



「な……!? てめぇ! 逃げ出してきやがったのか!?」



 奴らの一味のような身なりの男を見つけるやいなや、私はすぐさま魔法を詠唱。風で足をすくい、捕まっていた男の人に捕縛してもらいました。



「とりあえず出来るだけ穏便に済ませたいつもりではあるので私達の所持品を集めている場所を教えてください」

「はっ……嫌に決まってるだろ。てめぇらは俺達の商品なんだ。身寄りのないお前らを売って金を稼ぐのが俺達の――」

「あ、そういうのは聞いてないので聞かせて……というか、覗かせて貰いますね。『マインドスキャン』」



 私が魔法を使い男の頭に触れると、男はよく通る叫び声をあげながら意識を失いました。ですが、欲しい情報は手に入ったので構いません。先程の魔法は相手の頭の中の情報を無理やり見る魔法ですから。無論、無理やりなので相手への負担がかなりありますよ、廃人になるような程ではないですが二、三日程寝込んでは貰います。

 さあさあ、大声上げて叫ばれたからには仲間達が続々とやってきます。これは仕方が無いので目の前の敵を全て倒すしかありませんね。ええ、実に仕方ないですね。私は平和的に逃げ出したかったのですが、本当に仕方ないですね。



「あんた……すげぇ凶悪な笑みを浮かべるよな」

「気の所為じゃないですか?」



 男の人にそう突っ込まれましたが、そんなのは流しておいておいて、いざ戦闘です。私を敵に回した事を後悔して床に伏すといいです。

仕事行きたくないです。忘年会やらなんやらで遅れたのは申し訳ない……筆の進みにムラがあるのは本当に良くない……

今年はどこまで書けるかな?

こんな不安定な人ですが、今年も読んでくださる方にはありがとうございますとよろしくお願いしますと言わせて頂きます。

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