白と、青と、私。
最近活動報告書くのわざわざ別にする必要あるかな?と思って来たのでこれからはこっちに書くことにします()
私は洞窟を出て、のんびりとしんしんと雪の降り積もる真っ白の道を歩きます。白く細い道には馬車の通ったような道も無く……あれ、私が来た道はこんなのでしたっけ?
そんな一抹の不安を抱えつつ、私は雪道を真っすぐ歩いていきます。まあ、最悪道が違っていても問題はありません。私は旅人ですから、同じ場所に戻ろうが、別の道に行ってしまおうが私の自由なのですから。でも、忘れ物があれば取りに帰りますよ? まあ、私はそんなへまはしないので問題ありませんが。
にしても、人や馬車の通りを全く感じさせない白一色。何か理由でも……とは思いましたが、私の通ってきた場所が全ての理由な気がしました。
確かに、時間とともに地形が変わるような洞窟を商道として選ぶのはリスクが高すぎますし、何よりあのアルマジロが襲ってきた場合の事も考えないといけないですしね。
とまあ、そんな事を考えてのんびりと雪道を歩いていきます。林道の中だったのですが、だんだんと木々が少なくなっていき、視界も良くなって来ました。
そして、林道を抜けた先に見えたのは――
「わあ……!」
薄曇りの空の下に見える一面濃青色の景色。そう、海です。私はこの方一度も海を見たことが無かったのです。あ、これでは語弊が生まれてしまいますね。今の私は、今まで一度として海を見たことが無いのです。
そんな私が初めて海を見れば興奮する事など火を見るより明らかでした。
「これが海というものですか……凄いです。本当に陸が向こう岸に見えないんですね……」
私が子供のようにはしゃいでいると、視界の端に街のような場所が見えました。あそこには一体何があるのでしょうか? 私は海を見た高いテンションのままスキップ気味の足取りで向かうのでした。
◇◆◇◆◇◆◇
街に入るための橋は降ろされていて番兵もおらず、ここがいかに平和な場所なのかを伝えてくれます。私は町中に溶け込むように人混みの中に混じっていきました。
町ではそこかしこに魚屋があり、男の人達が声を張り上げながら自分達の釣ってきた魚を自慢して売り出しています。
確かに、新鮮この上ない魚達で、お店によってはまだビチビチと跳ねている魚さえいます。その魚を生きたまま裁く、という形のパフォーマンスをしていました。
普通の感性の人ならば、中には可哀想、という人もいるのかも知れませんけれど、あいにく私はそういう感情は持ち合わせていないのです。だって、生きる為には仕方ないですもの。
「嬢ちゃんもどうだい?」
「いいんですか?」
「ああ、美味いうちに食ってくれる方がこいつらも幸せだろうよ」
ガタイのいい男性がそう言ってお皿をずいっと差し出してきます。
……こういうものってフォークで食べていいんでしょうか? と迷いながら口にそれを運ぼうとした時。
「おう、食べる前にこいつに少しだけその刺身を付けてみてくれ」
そう言って差し出されたのは、黒っぽい色の謎の液体。ペロリと一口舐めてみると、塩辛く言葉に言い表せないような、不思議な風味が残りました。
「これは何ですか? 不思議な味ですけど……」
「お、嬢ちゃんもしかしてソージャを知らない感じか?」
「はい、ここの特産品ですか?」
「ここのかどうかは知らないが、この近辺で作っている所は俺らの町位だな。何せ、こいつは魚の刺身に特別合うからな」
こいつを刺身に少しだけ付けて食べてみろと言われたので、言われた通りに食べてみます。
フォークに指していた魚をソージャなるものに付けてから、ぱくりと口の中に放り込んでみると――
「――っっ!!」
魚の風味を殺さないような絶妙な味のソージャが、魚の味を引き立てて、焼き魚とは全く違う美味しさの扉を開いてくれました。
「あ、あのっ、このソージャどこで買えますか?」
「ん? それなら、この大通りを進んで左に曲がったところに作っている蔵があるぜ。なんだ、気に入ったのか?」
「ええ、他の料理にも使えないかと思いまして。あ、もちろんお魚も凄く美味しかったですよ」
「そりゃ良かった。買いたくなったらここに寄ってくれな、サービスするぜ!」
私は通りの魚屋を後にして、言われたソージャを売っているという蔵に向かいます。
海が目の前にある町だけあって、少し高い所に登れば海が見えて、至る所に海鳥が止まって鳴き声をあげていました。
先程言われた通りに道を進むと、少し古めかしい雰囲気の建物が見えました。恐らくはここでしょう。
「いらっしゃい。……おや、珍しい。こんなお嬢さんがここに用なんて」
「そうなんですか? 私はここでソージャを売っていると聞いて来たのですが……」
「ああ、そう言う事ならその通りだよ。どのくらい欲しいんだい?」
「どのくらい……ですか?」
「うちは用途に応じた量を量り売りしてるんだ。だから量を聞いてる」
初老程の年の男性の店主さんにそう言われ、私は考えます。鞄の中をごそごそと弄ると何やら入れ物のような物の感触がありました。中から取り出してみると、入っていたのは空の瓶。元々は何が入っていたのか気になったので、瓶の蓋を開けて軽く匂いをかいでみた所甘い匂いがしました。これは……蜂蜜でしょうか?
「この瓶に入る分だけお願いします。その前に洗うので、少しだけ外に出ますね」
「ああ、わかったそれなら、ここの裏を使うと良い」
という訳でご好意に預かり私は蔵の裏側で魔法を使います。大気中の水分を集めて水にして、空き瓶に注ぎ込みます。さらに消臭の為にも浄化の魔法もおまけです。魔力の消費が意外と多いのでそんなに使う事のない魔法なんですよね。あると便利ではありますけど。
瓶の半分程に水が入ったら、蓋を閉めて数回ほど振ります。
そうしたら、蓋を開けて中の水を流してしまいましょう。大丈夫です、浄化の魔法をかけた水なので汚れていませんし、もし汚れててもも中身自体は蜂蜜ですから、そこまで問題にはならないでしょう。
「すみません。お待たせしました」
私が洗い終わった瓶を渡すと、店主さんは隅に置いてあった大きな壺をいくつか覗き込んだ後、木製の柄の長いスプーン……? あ、いえ、確か柄杓だったかな? それを取り出して、私の瓶の中にソージャを流し込んでいきました。
「ほれ、銅貨四枚だ。大体のものに合うとは思うが、あまり過信しすぎるなよ。それと当たり前だがかけすぎも毒になる」
「え、ええ……御親切にありがとうございます」
私は代金を払って、ソージャの詰まった瓶を鞄の中に入れます。確かに、あのお刺身にもほんの少量しか付けませんでしたしこれは結構な期間使えるのでは……?
◇◆◇◆◇◆◇
さて……次はどこに向かいましょうか。時間はお昼を少しばかり超えた辺り。昼食を取ってから考えるのもいいですね。そうと決まれば早速行動。それに、ちょっと気になるものを見つけましたから。
「浜焼き……ほう、獲れたての魚を網で焼くんですね……物は試しです。入ってみましょうか」
お店の中に入る前から魚や貝の焼ける香ばしい匂いが漂ってきました。これだけでもう美味しいです。私のお腹が早く食べさせろと抗議を始めたので、私は空いている席に座って壁に掛けてあるメニュー表を一通り見ます。お昼時特有の騒がしさと忙しさを横目に見ながら私は食べたいものを決めました。
「注文、いいですか?」
「ああ、何がいい?」
「ジョダリの炭火焼きとトゥルボーの壺焼き、それとハイタンの刺身をお願いします」
私がそういうと、注文を受けた屈強な体の男の人が大きな声で注文を通していきます。すると、私の机の目の前にあった網にジョダリの切り身とトゥルボーが置かれ、焼かれ始めました。それと同時に出てきたのはハイタンの刺身。先ほど覗いていた魚屋で黒いトゲトゲの謎の存在がとても気になって頼んでみたのですが……中身は綺麗な黄色、これを食べるみたいですね。
では、いざ実食。この地域では二本の棒を使って食べ物を掴んで食べるらしく、私もその方式に則って頂くとしましょう。
……と、思いましたがいきなり問題が発生。そう、当たり前ですが私はこれを使ったことがありません。故に、どう持てばいいのかが分からないのです。
「嬢ちゃん……無理しなくてもいいんだぜ?」
「い、いえ……こういう時は同じ土地の食べ方で食べるというのが私のルールですので……」
「まあ、そうならいいんだが……無理して飯を不味くされるのは困るからな。無理しない程度にしてくれよ?」
私はその後悪戦苦闘しましたが……残念ながら使えるには至らなかったのでフォークで頂くことになりました、悔しい。
ともあれ、ハイタンの刺身を頂きましょう。ぱくりと一口で食べると口の中に一気に海の香りが溢れてきました。
「……!!」
好き嫌いが分かれそうな味がしていましたが、私は好きです。大好きです。いくらでも、とは言いませんが定期的に食べれるくらいには好きです。
さて、お次はジョダリの炭火焼き。随分と脂が乗っている部位のようで、焼いている時に脂が網から滴っていたのが見えました。ではこれも頂きましょう。
「……ほうほう」
得意げな顔をしているような気がしますが、単純に言葉が出ないので誤魔化しているだけです。決して私は美食家とかそう言うのではありません。でも食べ歩きは趣味です。だって旅人ですから。
と、それはそうとしてジョダリのお味ですが、この炭火焼きは随分といいものを使っているのか、炭の風味と脂の乗ったジョダリの味が絶妙にマッチしていますね。サービスで完全に焼いてあるものと、外側だけ焼いてもらったもの食べましたが、これはこれで味が違うのでとても美味しいです。主食になるものが欲しくなる味ですね……
「最後はこれですね」
最後に頂くはトゥルボーのつぼ焼き。中の出汁がぐつぐつと煮えていてとても美味しそうですね。こつこつと蓋を意味も無く叩いた後に、中身を掬いだして食べると言われたので私は何とかして中身を出そうとしたのですが……流石にフォークでは無理があったので、店員さんに頼んで中身を出してもらいました。
中身はくるくると渦巻いていて、先端の方が黒色になっていますね。ここが内蔵という事でしょうか?
「そこは苦いから苦味が苦手なら止めておきなよ」
「大丈夫ですよ」
そう言って私は黒い部分にはむっと齧りつくと強烈な苦味が走りました。流石にこの苦味は私でもダメです。食べながら水を一気に飲んで肝を流し込みました。
「だから言ったのに」
「どんな味か確かめるのも重要でしょう?」
とはいうものの、涙目の私に説得力はありません。黒くない部分を齧ってみるとあら不思議、先ほどの苦味は欠片も無く、貝特有のコリコリした歯ごたえとトゥルボーの味がとても美味しいです。
残念なのは食べられる部分が少ない事でしょうか。
「……ふう。美味しかったです」
料理を食べ終えて、口を拭いた後に席を立ちます。代金も港町であるために程々の代金で済みましたね。それなりにいいものらしく、別の場所で食べたらそれはそれはいい値段がするらしいです。
さて、これからどこに行きましょう?
ちなみに謎の魚介類はウニ、マグロ、サザエです。
ウニは一度食べましたが苦手ですね……サザエは……うん、おいしい!(おぼろげな記憶
なんか若干遅れてる気もするけど誤差なので気にしないで……気にしないで?(土下座
次もがんばって書きます




