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部の中心的な弓道部員だった私が異世界に転生したら長耳族でした  作者: クラヤシキ
第五章 新たな大地編
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第六十四話 「動き出す物語」

翌朝、私は騒がしさから目が覚めた。昨日はモチヅキにあんな話を聞かされたせいであまり眠れなかった。それに加えて外のこの騒がしさ、気分は最悪だ。


「あ、ラルダ。起きましたか?」

「剣聖……このうるささは何?正直腹が立つんだけど」

「あはは…。まああんな話を聞かされた挙句ちゃんと眠れて無いですもんね。もう少し、眠ってても良いですよ」

「………ちょっと待って。聞いてたの?」

「あのお方が個人に耳打ちなんて珍しいんですよ。だから気になったんです。勝手な行動をしてごめんなさい」

「……そう。別に良いんだけどさ」


私の内心はいろんな感情がごっちゃごちゃに入り混ざって沼の様になっていた。久々にお母さんやお父さんに会いたいな。なんか一日ぐらい、平和に、何も考えずに過ごしたい。最近、血とか肉ばっかり見てる気がする。…静かな森でまた暮らしたいな。

でも、森も両親もない。私はその惨状を見ていないけど…。あの時、モチヅキに殺された長耳族を見たクレイさんの心情を『同調(リンク)』で見た時、あの時は何ともなかったけど。今考えたら。


「……うぷ……」

「ラルダ?大丈夫ですか?」

「…うん。少し、聞いて良いかな?」

「なんですか?」

「なんでモチヅキは長耳族に手を掛けたの?『戦殺』なんて物は無くて、戦意ある者に対して殺戮衝動を起こすなんていうのは存在しない筈なのに…どうして?」

「……それには、答えられません。私には記憶がありませんから。それは本人に聞くべきです」

「……そうだよね。うん。……私、疲れてるみたい。もうちょっと寝るね」

「はい。おやすみなさい」


馬鹿馬鹿しくなってきた。私はちょっと頭がおかしくなったかもしれないな。一旦此処は深く眠って、気を改めよう。こんな調子じゃまた仇を取り損ねちゃう。

そんな思いを抱きながら私は目を閉じた。


____________


ラルダが眠りについた時、剣聖はラルダの顔をじっとと見て、そっと顔を撫でた。


「今はゆっくり休んでください。急いでも、自分の命を削るだけですから。」


そう言い残して剣聖は立ち上がり、外に向かった。ちょっとした用事があったからである。


剣聖は外に出て、岩にもたれかかっている男に呼びかける。ちょっとした用事とはこの男の事である。


「クレス」

「ん。来たか」

「なんなんですか?話って」

「何、直ぐに終わる」


クレスは岩の上に座って、剣聖を見下ろした。剣聖は少しその態度に不思議に思ったが、気にしない事にした。


「お前とラルダはあの馬鹿と交信してたんだろ?」

「えぇ、まぁ」

「しかし、旧英雄が現れた途端交信が消えた。あれ以来、交信が無いって事で間違いは無いな?」

「はい、そうですけど…それがどうしたんですか?」


剣聖が訝しげな表情でクレスを見る。それに対して、クレスはふんっ、と鼻で笑い、言った。


「気付かないのか?」

「何がですか?」

「奴はラルダやお前を好んでいたし、あいつの性癖に刺さる事象も結構有っただろうに。何故、反応しなくなったか」

「どういう事ですか…」


気付いてるはずが無い。だって、突然だったのだ。プツリと、糸が切れた様に、交信が止まった。あの神の力が最も必要となる場面で、だ。


「俺は奴の魔力を知っている。奴の魔力を知っている俺から言わせてみれば、かなり簡単な物だ。奴は意図的に交信を絶ったんだ」

「へぇ。意図的に、ですか」

「そうだ。何せ奴の魔力は『途絶』。奴が嫌だと拒否した瞬間に何もかもが途絶される。…いや。何もかもはおかしいな。事象とかが正しいか」

「それで交信を絶ったと?」

「まぁそうなる」


なんて神らしくない魔力なのだろうかと剣聖は思った。神は全能じゃないのか。ましてや最高神なのに、と。


「今後神の知恵にも縋れずに旧英雄に相対する事になる。当然、俺たちが圧倒的不利だ。それでも、挑む覚悟があるか?」

「ありますよ。私達にだって心強い味方が居ます。彼だってその一人です」


剣聖は笑みを見せた。彼女には旧英雄殺しの旧英雄がある。それのお陰でここまで自信があるのだろう。しかし、クレスはそれをよく思わなかった。クレスはその旧英雄の性質をよく知っていたからだ。


「なぁレイシュ」

「なんですか?」

「十二級をあまり過信するなよ。奴はお前と一緒にある事でどういう事になるか、理解して扱え」

「それってどういう…」

「話は終わりだ。今日は龍帝を何としてでも説得するんだろ?」

「あ、そうでした!では、私は一旦龍帝とお話して来ますね。それでは」

「あぁ。頑張ってこい」


住処に戻っていく剣聖を、クレスは小さく手を振って見送った。

その後、一人取り残されたクレスはもう一つ考え事をしていた。それに関してはまた、またの機会に話すとしよう。


_____________


一方、ただ広い荒野にて二人の女性が歩いていた。


「まだ着かないのか?」

「うーん、もうちょっと掛かりそう。えーっと…、あぁ、あそこの緑の山を登れば街が見えてくるかな?」

「了解した。それより、お前は彼方に残らなくて良かったのか?」

「……まぁね。後処理とかは大変だし、街の人達を野晒しにするのも駄目だとは分かってるけどさ…。私は、どうしても信じられないの…あの魔神王様が街を破壊したなんてさ…」

「そうだな……。(わたし)もそう思う。あんなに民の事を考えていた魔神王があんな酷いことをするとは思えない」


二人は先日、ロンゴヴィギナにて起こった出来事について、話していた。三日前の夜、魔神王に酷似した人物が城を破壊、街の住居等をほぼ全壊させて消え去るするという事件が発生したのだ。城の崩壊により、見張りなどを行なっていた兵士全滅、長耳族の小隊は3割損失し、その他の団体にも被害が及んだ。また、住人は倒壊などによりかなりの被害が出たという事件。


「ねぇシリア。私はクレイに無許可で貴方を釈放したけど良かったかしらね?」

(わたし)的には良いが、クレイが許すかだな。まぁ、クレイが許さず、お前に叱責をしようものなら、(わたし)が止めようじゃないか。なぁ、ウェイン?」

「そうね。ありがとう」


氷術師ウェインと槍士シリアはクレイ達が向かった、デミングポートに真っ直ぐ、真っ直ぐ向かっていた。全ての真実を見つけるために。

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