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第四十四話 「隔絶された銀河の彼方で」

 旧月神が剣を構え、向かってくる。不味い、距離を詰められたら剣が圧倒的に有利になってしまう。私は直ぐにそれを感じ、後ろに思い切り飛んで距離を開こうとした。しかし、旧月神はそれを見るに、手を此方にかざし、


「「影壁」」

「うっ!?」


 壁の様な何かにぶつかった。私は急いで、矢に魔力を込め、壁を破壊し、飛ぶ。取り敢えず、剣聖と月神との鍛錬で距離を詰められさえしなければ不利になることは無いことは分かっている。そして、勢いよく向かってくる剣士は一度地に付かないと二撃目に繋ぐことが出来ない。その前に一撃を与える。今、空中にいる私の方が有利だ。


「速弓装填!」

「っ!」


 旧月神に向かって五発、矢を速射する。シエラガレストは一本の矢を放とうとしても「霹靂(レブダント)」で幾らでも分裂させる事が出来る。しかし、「流星」とは違い、その分裂した矢のサイズや威力が変わる事は無い。全て一本の剛矢(ごうし)と同じ威力で飛んでいくのだ。五本に分裂した剛矢(ごうし)が月神に向かっていく。無論、五本では時間稼ぎにはならない。だが、私にも私なりのやり方というのがある。


「っ!はぁぁぁぁぁ!」


 旧月神はその五本を全て斬り躱し、再度地面を蹴って突っ込んで来た。よし、此処までは予想通りだ。私はシエラガレストを納め、直立する。この一打ちは、秒の戦い。ここを凌げば…!


「……すぅー」

「なんの企みが有るのか知らんが、弓を納めるとは舐めた真似をしてくれたな!その!行いに!後悔するがいい!」


 刃が振り落とされてくる。そう、上段からの斬り込み。私はこれを待っていた。腹部に隙ができるこの時を。私は拳に魔力を込め、それを思い切り、なるべく抉る様に、旧月神の腹部にぶつけた。


「がっ、がふっ……」

「少しだけ、ぶっ飛んで、貰いますよっと!」


「霹靂」によって瞬間強化された私の拳を受け、少し浮いた旧月神を『極雷槍』で吹っ飛ばす。本来、ぶっ刺さるんだけど、やはり魔術王の名は伊達じゃない様で、刺さらず、衝撃だけ受けて飛んで行った。魔力耐性が強過ぎるか…。なんて思いつつ、再度シエラガレストを展開する。


「(放つのは99999本!だけど、それを一本に収束する!)」


『殲滅』の魔力が乗り、『霹靂』により瞬間的に爆発力が増し、分裂させた矢99999本を再度、一本に束ねる。其れを私が思い切り引き、射出する。


「これがぁっ!私の、最終定理!『殲滅する破星の轟矢レブダントエンドレーザ』ぁぁ!!」


 射出。その轟矢はとてつもない速度で、旧月神に向かって飛んで行った。その矢は遠目から見れば蒼く輝く流星の様に見えたかもしれない。そして、私にも相当な負担が掛かる。今ので魔力を9割使ってしまったが、直ぐにシエラガレストにより魔力が供給される。


 矢が旧月神に被弾した瞬間、目の前が真っ白になった。少し遅れて大爆発が起こる。とんでもない爆風に、私は対応しきれず、吹っ飛んだ。これが『殲滅』の威力に『霹靂』が上乗せされた時の威力か…。凄まじいな…。


「あれを喰らったら流石に、誰でも死ぬでしょ…」


 爆風が止み、私はそう思いながら、シエラガレストを納める。あっさり終わってしまった。これがチートとやらなのだろうか。なんか違うかもしれないけど…。遂に私もそういうジャンルに入ったのかと思うと不思議な気分になった。


 私がそんな不思議な気分に浸っていると背後から途轍も無い気配を感じた。だが、旧月神はあの一撃で葬れた筈、筈…。


「あれ…?なんで銀河世界から出れてないの?」

「……それは、お前が俺を葬れて居ないからだ」

「ひぃうっ!?」


 油断した。あの時、きちんと死体を確認しておけば。背後をとられるなんてヘマはしなかった!だけど、遅い。気づくのが遅すぎた。もう逃れられない。


 気付けば私は横に倒されそうになって居た。同時に脛がとても痛くなる。もしかして…足を引っ掛けただけで浮かされた…?不味い、体勢を立て直せない!見ると、月神は拳で私の背中を殴ろうとしていた。直後、背中にとんでもない衝撃が走る。あぁ、これが、これが骨が粉々にされる時の痛みか。私は今更ながらそんな事を思いながら、吹っ飛ばされた。


 地面に何度かぶつかるも、威力が高すぎてバウンドし、三回バウンドを繰り返した後ようやく、着地した。


「はぁっ…はぁっ…はぁっ………げほっ!げほっ!がはっ!……ぐっ…うぅ…」


 不味い、肺がやられた。息が満足に出来ない。急いで治癒魔術を掛けないと死ぬ。そう思い、私は治癒魔術を使う。


「『究極……治癒……』うっ、げほっ…がふっ…はぁ…はぁ…ふぅー…」

「肺を潰したつもりだったが、持ち堪えたか…。丈夫な女だ。俺が鍛えただけはある」

「ふぅー……ふぅー……さっきとは別物だね…。さっきは手を抜いていたの?」

「なわけ。剣を使って本気でお前と当たっていただけのこと。だが、やはり本職で戦った方が良いだろう?」


 つまり、魔力と格闘で攻めてくるという事か。ならばこの隙を狙って、一発ダメージを与えよう。そうすればまた距離拡げられるしね。


「それもそうだね…。じゃあ、私もいつも通り弓で行くよ。だから、少し離れてもらおうかっ!」

「…ふん」

「うーんやっぱり二度目は通じないよね…。知ってた知ってたぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!?」


 私は一発ダメージを与えようと思って拳を打ち込んだら、あっさりと受け止められ、握りつぶされた。痛い痛い。やってしまった。右腕がやられた。弓が引けない。そんな事より痛い。早く治癒魔術を使わないと。と思い、『究極治癒』と言おうと思ったその時、旧月神が口を開いた。


「言うのを忘れていたが」

「えっ?」

「俺はこの隔絶空間ではほぼ無敵になる。それだけは覚えておけ」

「は?」


 そんなの無理ゲーじゃねぇか。ふざけんなよ。とか思ったが確かに、最終定理を受けても火傷ぐらいで済んでいる辺り、全くダメージが入らなかったのだろう。つまり、全て最終定理以上の威力で放たないと駄目なのか?しんどい。てか私死ぬくない?私はそんな事を聞いてポカーンとしながら弓を落とした。この試練は予想以上にハードだ。

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