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第四話 「読書の日」

 私は書斎に籠り、母と1つの本を読んでいた。『狩猟道具の作り方』。4冊の中で最も興味を引き立てた物である。当然、弓に関する資料もあった。しかし、やはり異世界と言った所か。矢を三方向同時に飛ばす事が出来る弓があった。生前の、某ハンティングゲームでの弓みたいな感じだ。まぁあれは撃ちあげれば(つぶて)になって降り注いだり、爆発したりで無茶苦茶だったが。


「憧れちゃうなぁ……弓士」

「あら、ラルダは弓士になりたいの?」

「うん。だって弓使いこなす人ってカッコイイし」

「そうねえ。確かにお父さんカッコイイよね。でも、弓って結構重いのよ?大丈夫?」

「頑張って軽くする。それにお父さんが言ってたけど、ここら辺の樹木は軽くてよくしなるのに案外しっかりしてて、弓には最適だって」

「あの人は2歳の娘に何教えてんだか…。別に弓士になるのは構わないわ。でも5歳からね。まだ家でじっとしててね」

「分かってるよ」


 そうは言ったものの、やはり弓は早く握りたい。狩猟に出るのは5歳からだけど、弓を作るのは別に構わない筈だ。


「お母さん。私、弓を作る!」

「材木はあるの?」

「お父さんの所にあった!行ってくる!」

「待ちなさい」

「ぐえっ」


 勢い良く部屋を飛び出そうとしたら、襟首を掴まれた。勿論苦しくなる。私は咳き込んだ。


「けほっ…。何するのさ!?」

「貴方が工具とか使うと危なっかしくてしょうがないわ。お父さんが居る時にやりなさい」

「えー…お母さんは心配症だなあ」

「誰でも2歳の子供が工具使うなんて言いだしたら止めるでしょ」

「それもそっか」


 私は椅子に座り直し、別の本を持ち出した。これは生前の世界では何て言うんだろう。多分『世界史』だ。

 この世界中の歴史などが事細く載っている。私みたいな記憶を持った転生者には物凄くありがたい本。私は内心わくわくしながら本を開く。

 まずは目次を見る。私はこの長耳族について知りたかった。人間族というのは恐らく普通の人間なのだろうが長耳族とはどういう関係なのだろう、普通に行商に来てるから仲は悪くはない筈だけど。長耳族の事が載っているページをみつけたのでそこを見る。やはり事細かに載っている。暫く読んで勉強させてもらうとしよう。


 ____________


 読んでいく内に理解したのだけど、この世界は現在絶賛戦争中らしい。人間族を中心とする陣営と魔神族を中心とする陣営が対立している世界規模の戦争。何故そんな事になってるのかは分からないが、基本的に私達長耳族は7割が魔神陣営、3割が人族陣営と、ほぼ魔神族側である。ここらの人達はきっと人間族側だね。

 そして長耳族についてだが、通常の人間族よりかなり長寿で、平均で500歳までは生きるらしい。成人となるのは12歳。そこから450歳までは見た目が変わらないらしい。まあここまでは想定内だ。異世界系の本をよく読んでいた私にとって、これは普通の事である。

 そして住んでいる地域。暖かい場所かと思っていたがなんと気候帯は亜北極気候、つまり亜寒帯に属する。この森は針葉樹林である。生前の世界で言う、タイガだ。冬は長く寒冷で、真冬の場合非常に気温が低くなる。その分夏は短いものの、比較的冷涼で過ごしやすいらしい。つまり亜寒帯。

 私は暖かい場所に住んでいたので寒いのは大嫌いだけど、雪とかには興味がある。この2歳という年齢を利用して思う存分遊んでやろう。ふふふ…。


「あっ、もう外が薄暗くなってる。お母さん…寝てるや。おーい…」

「んん……ん?あっ…寝てたのね。あっもう外が暗いじゃない。ご飯の支度しなきゃ。」


 時計がない事は不便だと思っていたが、朝日が昇ったら起きて、月が出て来たら夜ご飯を食べて、水浴びして、寝るという生活も良い。時間に縛られる生活よりも全然こっちの方がマシだ。そんな事を思い、本を閉じると、母に頭を撫でられた。


「ん?」

「弓を使うだけじゃなくて、ちゃんと勉強もして、ちゃんとした大人になってねラルダ。私は貴方に強いだけじゃなくお淑やかな女性になって欲しいの」

「ははは。私はそう言うのには向いてないかなぁ。でも出来る限り頑張るよ」

「ふふ。偉いわ」


 そう言われてからも、ひとしきり撫でられ続けた。はははー。私愛されてるぅ。生前は母に凄い厳しく育てられたし、父には受け入れられなくて全然家族の一員にはなれてなかったけど、こっちでは凄い愛されてるから嬉しいなぁ。ずっとこんな生活が続けば良いのに。

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