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第三十四話 「月神に会いに 後編」

「んん…やっぱり少し冷たいですね」

「剣聖はこういう冷たさには慣れてないの?」

「いえ、そういう訳では無いですが…。っていうか、結構ジンジン来ますね…。いたた…」


 彼女はそうぼやいて腕とかを抑えていた。確かに、彼女は上に厚い軍服を着ているけれど、剣とかぶつけられたりするのでやはり傷付いてしまうのだ。でも、なんでしみることがあるのかな?


「これ多分、消毒液の様な成分が含まれてるんですよ。だからしみるんですかね」

「あっ、確かに。この鼻をつく臭い、消毒液だ」

「ちょっと試して見ましょう。すぅー…」


 剣聖が大きく息を吸い、水に潜って行った。しばらく潜った所を見ていると、ばしゃぁっ、と音を立てて顔を出した。


「やっぱり、傷が癒えてます。これ消毒液とかそういうレベルじゃなく、きっとかなり高いレベルの治癒魔術が掛けられた水ですよ!」

「何それすげぇー!」


 私達はしばらくその後もきゃっきゃっしながら遊んでいたが、少々疲れたので上がることにした。そして、濡れたまま服を着るのもアホらしいし、それにあの神にどう映るかにもよるので、体は拭いて置くのが一番だろう。風邪を引くのもあれだしね。


「…?」

「どうしたの剣聖?」

「いえ…拭くものなんて置いたかなって思っただけです」


 たしかに用意した覚えも無いが、確かにそこにはタオルが二つちゃんとある。誰かがここに置いて行ったのだろうか?ひょっとして見られてたかな?


「…っっっ」


 チラリと剣聖の方を見ると、タオルで身を隠し、顔を真っ赤にして俯いていた。年甲斐も無く遊んでいたので、それを見られたと思うと恥ずかしいのだろうか。


「気に障ってしまったか?」

「ん?」

「きゃっ…!?」


 上から声がしたので上を見ると長い青髪とも緑髪とも取れるような色をした髪を持ち、それを後ろで一つに結び、とても綺麗な橙の瞳を持った男性が立っていた。ただ、その男は、この世界の人とは違い、鶯色をした着物を羽織っており、腰に掛かっているのは日本刀と散弾銃か?明らかにこの世界の人物じゃないと思った。


「おっと…。まだ着替えの途中であったか。これはすまない」

「あ、あの…!貴方がこれを!?」

「ん?あぁ。そんな冷たい水を浴びたにも関わらず拭かずに居るというのは身体に悪い。だから拭くものを用意させて貰った。それだけだ」

「あ、ありがとうございます…あ、あとその…」

「どうした?」

「こっち見ないでください…」

「あっ…すまない」


 そんなやり取りをしている二人を横目に、私はささっと体を拭き、服を着た。しかし、剣聖ってこんなに恥ずかしがり屋だったとは…。


 __________


 私達はさっきの男の家に上がりこんでいた。


「さて…さっきはいきなり出てきてすまなかった」

「あっ、いえ良いんですよ。私の貧相な体なんて、その…」

「いや、お前の体は実に好みだったが…コホン。あー…まず自己紹介からするとしようか?俺はクレス。よろしく頼む」


 なんなんだこいつら。いきなり体について話しやがって。まあ、良いや。自己紹介ね…まあした方が良いか。そう思い、切り出そうとすると剣聖が先に出た。


「私は剣聖。剣聖レイシュです。その、よろしくお願いします」

「レイシュか。よろしく頼む」

「私はただの長耳族のラルダです。よろしくお願いします」

「ただの長耳族にしては魔力量がとんでも無いが…まあよろしく頼む」


 この人、こんな昔の日本人みたいな格好してるのに、こっちの世界の人なのか。いやでも、剣聖の様にこっちに来て、名前を偽ってる可能性もある。まだ分からないな…。


「さて、まず聞きたいことがあるのだが」

「なんでしょう」

「こんな辺境の地に何の用だ?」

「私達は月神に会いに来たのです。この子の魔力を開放するために」

「魔力を開放?完全じゃないのか?」

「その様ですね」


 二人は私について会話をしている。確かに月神に会うだけで魔力が開放されるのか?そんな訳ないか。なんて思っていると、彼は私達を見てこう尋ねた。


「奴の根城の門の開け方を知っているのか?」

「えぇ。なんとか」

「ならいい。まだ夜中まで時間がある。飯も出すし、少しくらい眠ると良い」

「「あ、ありがとうございます!!!」」


 彼はそう言って、布団を出してくれた。布団のあたりやはりここはおかしい。なぜ布団があるのか?まあ、いいか。細かいことは気にしない!と思いいい気持ちのまま眠りについた。このまま夜中まで…。



 そして、ついに根城を見る時が来た。満月の夜、彼女がアタリと言っていた理由がついに分かる。

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