第三十話 「夢の中でだけでも」
目が覚めると、再び視界いっぱいに青空が入ってきた。あぁ、またここに戻ってきたのか。
「やぁ、起きたかい?」
「…神様」
「君の寝顔も良いね。なんかこう、満たされる感じだ」
「貴方は一体何なんですか…?ちょっと怖いです」
そう聞くと、満面の笑みでこう答えてきた。
「えー…。尊い君を見るだけのお兄さんだよ」
「…死ね」
「はぐっ…!なかなかの辛辣さ、流石元女子高生…!!」
「でも本当は?」
「ご褒美!……あっ」
「ただの変態神ですよ貴方」
「よく言われる。これで最高神だ。驚きだろ?」
「貴方が最高神とか神様終わってると思うんですけど」
懐から取り出した眼鏡を掛けて溜息を一つ、吐いた。眼鏡はすごい似合ってるな…。内面さえ良けりゃ完璧なんだけど…。
「さて、なんか食べる?一応なんでも出せるけど」
「いきなりなんですか?」
「いやだって、歓迎しなきゃダメじゃん」
「ダメじゃん、って…」
「ほら、なんか食べたい物無いの?」
あるはある。唐揚げ…。美味しい唐揚げ。あの世界には無頼なんたらがあるけどあれとはちょっと違う。まともな大きい唐揚げが食べたい…。
「…………あげ……」
「あげ?」
「唐揚げが食べたい。大きいの…」
「え、待って。なんで恥ずかしがってんの?尊いんだけど、あっ、可愛い。いや、ちょっと…あっ、心臓がズキンズキンしてる、死にそう…」
「さっさと死んでしまえ糞神」
この私(見た目6歳)にこの対応をしている神を見てこう思った。もしかして、幼女好き?と。多分幼女好きで合ってる。
「はぁ…なんで君はこんなに可愛らしいの?」
「お父さんとお母さんが素晴らしいクオリティだからです。ありがとうございます」
「あぁ、成る程。もう片方もよく分かってるじゃあないか。うん…。唐揚げ持ってくるよ」
無言でパァッと笑顔になってみる。直後、私を見ていた神がフリーズし、しばらくして。
「がへぇっ!」
「えぇ…!?」
思い切り血を吐いてぶっ倒れた。…リアクションがオーバー過ぎる。ていうか、自分そんなに可愛いかな?今まで思った事もなかったけど…。
「はぁ…はぁ…。ヤバい…君と過ごしてると僕が早死にしそうだ。龍帝が君を気に入ってる理由がよく分かる…」
「おじ様もロリコンなの?」
「ロリコ…いや、あんなのと一緒にしない事だ君ぃ。僕達はいたって健全な子供好きさ!」
「じゃあ男子相手にそんな反応出来ます?」
「え、出来ないに決まってるじゃないか。アホなの?…あっ!!辞めろ!急に蹴り倒すとかどうなの!?あっ、カカトで踏まないで、ちょっと痛…痛い痛い!あっ、ちょ、そこガスガスされるとダメなんだよ!男にそこはダメだ!ダメだって言って、があああああああああああっ!!」
取り敢えず踏みしだいた。何を踏みしだいたかは伏せるけどナニかを踏みしだいたんだ。そして、踏みしだかれた本人は顔を手で抑えながらプルプル震えている。
「まだ3歳の幼女に尋問されながら大事な所を踏みしだかれるなんて…軽く逝けそうだったな…」
「尋問ではありません。あと逝けたのならもっと強めにやれば良かったです」
「それは…やって貰おうかな……」
「えっ?」
「いいや、なんでも無いとも!さぁ、唐揚げを持ってこよう!」
彼はバッと立ち上がり、そそくさと何処かへ向かって走っていった。彼の居る方向をみると、神殿のような何かが建っていた。あれ?あんなのあったかな?
私は一人取り残されたので、再びお花畑に腰を下ろした。
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ラルダがそうしている時、神は神殿のような建造物に入り、息を整えていた。
「ふぅ…ふぅ…はぁー…。やっぱり本気で走るのは堪えるねぇ…。もうちょっと運動するべきかな…」
そう嘆きつつ、下半身に目を向ける。未だ痛みを感じているのだ。
「脚の力強すぎるよ…」
そうぼやいて、股間あたりを手で抑えた。明らかに自業自得なのだが、やはりダメージは大きい。神は溜息を一つ吐き、眼鏡を外して、天を仰ぎこう言った。
「あぁ…やはり幼女というのは良いものだ」
彼は、自称子供好きだが、もっと限定的なものかも知れない。




