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第十九話 「ロリっ子譲術師の記憶消失」

「それで……」


 ウェルトは困惑を抑えつつも口を開けた。そして大声でこう怒鳴ったのだ。


「これはどういう状況だ!?」


 その怒声に全員がウェルトの方に顔を向けた。何故、こうも大きな声を張り上げたのか、それは部下達が一人の幼女を囲んで戯れていたからである。


 __________


 二人とも半ば幸せな状態で城に戻った時、やけに騒がしいな、と思いつつ中に入ったらそこに居たのは白い髪の女の子を取り囲む大人5人。うん、絵面が酷すぎる。ウェインさんはなんかカチリとハマる何かがあったけど他は……ね。


「全く、いい大人が一人の少女を取り囲んで何をしてるかと思えば……」

「ははは、ほら、母性っていうの?あれだよ」


 おじ様が母性とか言い出したよ。ふむ…。おじ様争奪戦になるのかな?だったら私の圧勝だな、負ける気がしねぇ。まぁそれは置いといて、その少女に顔を合わせてみることにした。


「おー。大体同じぐらいの背丈だ!」

「い、いきなり何ですか?」

「あっ、ごめんごめん。私ラルダって言うの。本当の同年代は初めてかも!宜しくね!」

「え、あ…サテラです。宜しくお願いします」


 同年代(見た目だけ)。年齢は恐らく凄い年上だけど私の知恵でも全然見縊られないし、年齢なんて関係無いんだけども…。というかそれでもタメ口はダメかなぁ?


「あの」

「あっはい」

「私もその話し方でいいですか?敬語はその…辛いんです」

「え?あ、うん!」


 彼女はそれを聞いて少しだけ微笑んだ。あれ、なんか気が合いそう。なんかこの辺の人達は色々気が合うなあ。と思ったら。


「サテラ、と言ったのか?」

「え、あ、はい」

「…ふぅ」


 サテラがきょとんとした顔をしてウェルトを見ていた。対して、ウェルトは呆れたような顔をしてサテラを見ていた。


「どうしたんですか?」

「どうしたって…姿を変えてまでお前は何故俺に固執するのか?」

「何のことですか。私とあなたは初対面です!」

「話が噛み合わない!何故初対面だなどと言えるんだ!?」


 どういう事だろう?彼の言い分だと、サテラとは既に会っていて、何かしら蟠りがあるようだけど彼女の言い分だと彼を知らないという事らしい。


「【魔神王】。「転輪」した奴の事情は分かっておるかの?」

「「転輪」だと?サテラがそれを持っているというのか?」

「持っておるから姿を変えているのじゃよ。「転輪」以外の魔力で姿を変えることは出来んからの。それで、「転輪」した奴の事情は分かっておるかの?」

「分からん……」

「「転輪」は普段前の状態の記憶等を全て継承して転生する。しかし彼女の場合は別じゃ。何らかの亀裂により、記憶が消去されてしもうた。自分の魔力だけを覚えておるだけじゃのう」


「転輪」とかいう魔力は何か知らないけど…。記憶が飛んだって事だな。でも、そちらの方がまだいいかも知れない。もし記憶がある状態で「転輪」したらそれこそ居にくいだろうなぁ。だってギスギスしてるしね。


「ねえウェルト。この子も迎え入れてあげよ?」

「俺はこいつを既に三回突っぱねている。今頃迎え入れるのは……」

「私は、貴方に突っぱねられた覚えはありませんが!」

「はいはい、サテラちゃんはこっちに行こうねー」


 サテラはそのままウェインさんに抱かれてどこかへ行ってしまった。それを確認したあと、ウェルトに向き直る。


「ウェルト、サテラの魔力は?」

「「譲渡(ギフト)」だ。思念した概念を相手にこじつけたり、自分の五感の一部をピックして相手に上乗せしたりする魔力だ」

「それさ、普通に約立つと思うよ」

「あぁ…」


 彼自身、迷っているようだ。迷っているなら即決だろうに。すぐにでも迎え入れて戦力にするのが筋だと思うよ。


「やはりそう思うか?しかしなあ…」

「「同調」を凄いさりげなく使うんだね」

「やはりな…仲間に入れるしかないよな……」

「うん、過去に何かしら有ったかもしれないけどサテラはもうそれを覚えていない。ならもういいんじゃない?」

「そうだな………よし」


 ウェルトは顔を上げ、サテラとウェインさんが向かった方へと向かっていった。私もその後を追うように歩く。そして、二人の元に辿り着く。


「サテラ」

「はい?」

「……その…」

「ほらはっきり言おうよ」

「あぁ…。その俺らの勝利の為に、戦力になってくれないか?」

「勝利……?別に構いませんが、何に勝利するんですか?」

「「!?」」


 こけそうになった。そうだった。記憶が無かったんだっけ。そんな対応のお陰か、神妙な空気が一気に明るくなった。

 という訳で、サテラが仲間になった。私とウェルトとサテラとでよく行動しているので部下達から子供トリオと言われる様になった。なんかあまり良い気分では無いけど、仲間として認められたような気がした。

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