最終話 「紡がれ征く輪環」
周囲がザワザワし始め、耳が鬱陶しくなってきた。
そんな中で私はたった今自分で突き落とした女の子をじっと見つめていた。女の子は落ち方が悪かったのか、中々立とうとせず、苦悶の表情を浮かべていた。足をレールにでもぶつけたのだろう。
しかし、女の子は私が見下ろしている事に気付くと、私と目を合わせてきて、フッと笑った。
「何…?なんで笑ってるの?」
「……その選択が大正解だからさ」
「…え?」
其処で列車が通過し、少しした所で停車した。駅員が静止信号を出していた様だが間に合わなかった様だ。更に場がどよめき始める。私の時はそうでも無かったくせに…。
ていうか、あの口調。偶然かな。
「…この選択が大正解、ってどういう事だ?」
顎に手をあてて考える。あの言い方だと此方の内状を知っている様な口調だった。だとすると、あの自称神に有効打を与えられる人物、つまり最も神殺しに適した人物って事?
……でも何で私の内状を知ってるんだ?
疑問が募る中。私は駅員に捕まり、色々聴取された。しかし、私は何もしていない。何も知らない、と言い続けて逃げた。因みに先輩を連れて。
あの後、あの女の子がどうなったのかは知らない。多分、私が飛ばされた場所と同じ様な場所に飛ばされてあの神になんか色々言われた後に面白くない世界に飛ばされたんだろう。
彼女は自身有り気にああ言っていたけど、神も神なりに対処して来るだろう。騙したり、陥れたりして。
そしてまた繰り返される。紡がれてきた輪環は崩れない。
でも望むなら、今までの人達の辛い過去をあの子には見て欲しくない。
だから願おう。あの子で神殺しが果たされる事を。この終わらない輪環を此処で崩してくれる事を。
最終話です。文字数が最終話なのに過去最高に少ない……あの女の子目線の話を少し入れるべきだったか、と後悔をしていますが、迷いに迷った末に弦橋美玲の目線だけを書かせていただきました。
結局神殺しは達成されるのか…。はたまたそれは成されずにまた繰り返すのか。
主人公は達成を願ったが、結局はどうなるんですかね。其処は想像を膨らませて欲しいなぁ、って思います。




