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第十二話 「戰狂剣戟」

「…え?」

「聞こえ無かったか?【剣聖】を殺しに行くっつってんだ」

「馬鹿な事を言うな!【土王】を殺めた剣技の持ち主だぞ!?正気か!?」

「あー。正気だぜ俺は。だってよ王様。俺はその【剣聖】と顔見知りで、勝ったこともあるんだ」

「出任せを…!そんな話聞いたことがな…ラルダ?」


 私は何故だかウェルトの言葉を遮る形で手を出していた。私でも分からないけど、身体が動いたのだ。自分も行きたい、親の仇っていうのを討ちたい。だけど、私では駄目だ。非力で、【剣聖】になんか勝てないだろう。だから悔しいけど…クレイさんの言葉を信じてたい。【剣聖】を殺して欲しい。種族の、両親の仇を討って欲しい。そんな思いが現れた。


「クレイさんを行かせてあげて」

「なっ!ラルダまで何馬鹿なことっ…!」

「馬鹿なのはそっちだ!仲間が殺されて黙ってられるの!?しょうがない、諦めようって出来るの!?」

「だけど単騎で突っ込むのは…」

「王様。奴に大人数、いや二人以上で挑むとどうなるか分かるか?」

「?」

「攻撃する時に必ずズレってのが生じるんだ。そうしたら奴の返し技でどちらかが必ず葬られる。だから単騎で突っ込むのが吉なわけだ」

「だが…」

「テメェは部下を信用出来ねぇのか?結構俺はテメェに、いや【魔神王】に信用されるよう頑張ってきた筈だが…信用してもらえてねぇみたいだな」

「っ…。分かった。だが、どうなっても知らないからな」

「へへへ。それでこそ王様だ。まっ、なんとかするよ。だが、長耳族を全部持ってかれたのが痛手だ。その分は必ず殺す。ラルダの分もな」

「思念伝達を怠るなよ」


 そう言ってウェルトは人差し指で軽くクレイさんをタッチした。そして拳を突き出す。


「行ってこい」

「おうよ!」


 二人は互いの拳を当てあい、その言葉を最後に彼は消えた。転移したのだ。


 ___________


 所は変わり、焼き爛れた森。そこにクレイが降り立った。クレイはまず、辺りを見回し、状況を把握した。


「成る程な。ラルダとかと同じような魔力の流れがある所を見ると大人は回収されたか?さて、んじゃあ魔力の流れが集中しているところに向かうか」


 そう独り言をぼやき、その魔力が集中した場所へと向かった。


 ひたすら走り、魔力の密集する建造物を見つけた。特に何も考えず中に入ると、そこには大量の大人の長耳族(エルフ)が居た。ここでクレイは伝達を送る。板を取り出し、なぞる。


「『長耳族の生存を確認』、と。さて、おいお前ら!」

「「「は、はいっ!」」」

「よく人間族の迎撃をしてくれた!【魔神王】の名を借りて、感謝激励を贈る!」

「「「オォォォォっ!!」」」

「後は俺に任しとけ!必ずや、減らされた分、あっちを減らしてやる!」

「「「オォォォォっ!!」」」


 いい活気だ、負けたとは思えない。皆すごい意欲で関心する。そして俺は本題を持ち出す。


「んで、お前らに質問だが、ラルダって名前の子供を持った大人はいるか?」

「「「………」」」

「居ねぇのか?死んだのか?」

「いや、死んでない。ただあの二人は群を抜いて活躍されてたから、人間族が持って行っちまったんだ。奴隷かなんかにしてこき扱う為にな」

「なるほどな。んじゃあもうここには人間族共は居ねえのか?」

「いや、居る!俺らを運ぶために援軍を呼んでんだ!」

「そうか。話はそれだけだ。ありがとよ」


 そう言い、クレイは一礼し、外に出る。するとそこは、


「あらー。そっちから来てくれるとはなぁ…」


 人間族の軍隊に囲まれていた。そしてクレイは軍隊の人々に聞く。


「テメェらの軍師は何処だ?俺はそいつに用があんだ」

「「「……」」」

「まっ、答える訳ねぇよなぁ」


 そう言ってクレイは小声で「戦火」を唱え、自分の足元を小さな爆発物にし、「霧散焼靆」し、跳び上がった。


「よっと、悪いけどテメェらに用は特にねぇから。じゃあな」

「「「魔神族だ!殺せ!!」」」

「おぉ、怖い怖い。だけど、足下ご注意ですよ?」


 そう言って人差し指を下に下げる。そして最上の笑顔を向けて、


「爆散しやがれ、弱者共が」


剛撃地雷(ブラインドエクスプロード)」。座標を指定し、その指定した範囲内を全て地雷化する魔術。それを一つの軍は見事に踏みしだき、全て吹き飛んだ。全て。そして、あることに気づく。


「ん?この傷、何時のだ?」


 腕に無数の傷が付いていた。しかし、傷の新しさからすぐに察する。


「へへっ。やっぱ派手に爆散させりゃ来ると思ったんだよなぁ!行動の速さは変わってねえわ」


 一人の女性が歩いてくる。此度に指揮者に抜擢され、見事人間族を勝利に輝かせた、女軍師。


「貴方ね?爆撃音を立てたのは」

「おう。会いたかったぜ【剣聖】!」


【剣聖】レイシュがそこに居た。そしてクレイはその顔を見た瞬間、驚きとも悦びとも取れる笑みを浮かべた。


「まずは久しぶり、かねぇ?」

「なんの事?私は貴方を知らないんだけど」

「まぁしょうがねぇか。今の俺は実質魔術師で、剣士じゃねぇしな。だけどこう呼べば分かるだろ?千剣皇さん?姿も何もかも変わってねぇな」

「…!!?なんで私の本当の異名を知ってるの!?」

「まっ、そんなこたァ良いんだよ。俺が来た理由は一つ、千剣皇。お前を今一度倒すために来た」

「今一度…成程ね。神は本当に嫌な事をするのね、貴方は一種のトラウマなんだよ?」


 そう言って彼女は二本の剣を抜いた。本気の目でクレイを見る。その眼差しにクレイは嬉嬉として応える。


「はははははっ!!良いねぇ!少しはやる気は出してもらわねぇとなぁっ!!」


 クレイも虚空から剣を抜刀する。赤熱し、儘粉を撒き散らす刃を持つ片刃剣を。普通、虚空から剣なんてのは精製できない。しかし、転生した際、神ですら予測し得なかった誤算により産まれた彼のみが持つ魔力「剣磨」により、それをなし得たのだ。生前、最弱から世界二位に登り詰めるも、無惨にも殺された男の残した残骸。死ぬまで苦楽を共にした剣で、匠が打った訳でもなく、特殊な能力を持つ訳でも無い、なんの能力も無い爆発物化した無銘剣。それが彼が「剣磨」によって精製できる唯一の剣なのである。


「先手必勝!」


 クレイが無銘剣で切り掛る。何も意味を成さない、ただの振り下ろし。それに対し、レイシュは高速を超えるか、というぐらいのスピードでその振り下ろしを素通りする。これこそ、【土王】を葬った返し技の極致、「千刃飛翔」。剣撃等を躱し、1秒に1000回斬るという人間離れした返し技。大半の人間は即死する。

 しかしクレイは例外だった。55の傷で抑えることが出来た。


「っ!?剣が!」

「悪ぃな。俺は生前、極致技は使えなかった。だが、この誤算から産まれた魔術によっていくつかは使えるようになったんだ」

「…っ」

「今使った技はな…、「因果応報」だ」


 その瞬間、レイシュの肩から勢いよく血が吹き出した。「因果応報」。相手の使う技の威力、魔力の濃さなどによって威力が変動するどの剣術にも属さない夢想の剣技、「無空剣(カラウチ)」の極致。


「ひっ…!」

「残りの剣の数は998本。痛みもねぇしな…。体力もあるし、こんな俺にもチャンスがあるって事だよ。それにな」


 パチンと指を鳴らす、するとレイシュが持っていた折れた刃が爆発した。レイシュの顔色が悪くなっていく。


「いくらでも魔術で破壊できんだ」

「あぁっ…!化け物…化け物がぁっ!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!あんたみたいな爆弾魔と戦いたくない!こんな変な世界で死にたくないっ!」

「あっ!待ちやがれっ!!」


 レイシュは逃げた。血が流れる肩を抑えながら。しかし、追いかける事はしなかった。何故ならば。


「うん。軍を置き去りにして逃げるとは…馬鹿にも程があるぜ?」


 そう言ってクレイはニヤリと笑った。その日の夜、長耳族の森付近に派遣されてきた人間族の軍隊が全滅した。

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