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第十一話 「龍帝の帰還、降りかかるは絶望の嵐」

 三ヶ月後、季節は冬になり、雪がちらつく季節になって、私は3歳(見た目は8歳児)を迎えた。誕生日というか、まぁなんか自分では気づかなかったのだけど、二人から誕生日じゃねぇの?って言われて気付いたのだ。何故知ってるのか、と聞くと、【魔神王】から聞いたんだ、と答えた。「同調(リンク)」を使った時に分かったのだろう。

 そして、私は城壁を借りてある事を始めだした。それは…


「さて、せっかく【龍帝】から魔力を分けてもらったんだ。と言うわけで、訓練するぞ」

「はい」


 魔力を行使した戦い。魔術戦の訓練である。確かに私は強大な【龍帝】の魔力、「雷帝(エレキシカル)」を持っている。しかし己の魔力総量が低い上、魔力眼を開眼する事で更に魔力を消費するので、「雷帝」のような負担が大き過ぎる魔力は一発が限界で、使うと気絶するか立てないくらい疲労するかである。


「言っとくが、あまり最初からデカイ物を撃とうとすんなよ?毎回毎回お前はデカイ物を一発撃って避けられる上に、気絶するからな。そんなんじゃいけねぇ。小分けにすりゃ幾分かは保つはずだ。デカイ一発よりも弱い数発のが当たる確率も高いし、何より弱いと言ってもあの【龍帝】の魔力だ。威力はそこらとはダンチだろうぜ?」

「成る程!勉強になります!」

「そんじゃ、いつも通り「電矢」を俺に放て。俺はそれを避けるか、俺の魔力でレジストする」

「了解です」


 クレイさんに言われてから私は弓を引く。矢を持たずに、だ。そして、指先に魔力を込める。すると、蒼い稲妻で出来た矢が生成され、それに魔力が吸われていく。いつもは最後まで吸わせて撃つが、今回はここで放つ。


「っ!!」

「速度61…レジスト。「戦火(エクスプロード)」」


 私が放った一矢は凄い勢いで飛んでいくが、彼が魔力を唱えた瞬間、速度が急激に落ちる。彼の魔力で爆発物化し、物体としての質量が大きくなる事で速度が遅くなるのだとか。


「「霧散焼靆(デトネーション)」」

「っくぅ…!」


 彼の声と共に矢が爆発を引き起こす。その度に爆風に飛ばされそうになる。しかし城壁は魔力耐性が高いのか無傷である。


「ラルダ。あと何発だ?」

「あと7発は行けると思います!」

「よし。好きな数撃ってこい」

「はい」


 弓を引く。今度は3発行こう。そう思い、一矢を作り出す。全てレジストされるか、回避されるなら、間髪入れずに複数撃ち込めば確実に当たる。はず。


「それっ!!」

「何?一発……いや2発目の発射準備が完了している…なるほどな、だが!」


 私が2発目を撃とうとした瞬間ある事に気付いた。いつもは綺麗な矢の形をしていた「電矢」がぶれていた。そして段々とぶれていく「電矢」がついには…小さな矢に分裂した。その数約15。


「なっ!?速度57、43、76、56、48…レジスト出来るか…?」

「ふんっ!」

「2発目も撃ちやがった!…ちぃっ!一か八かやってみるか!」


 そう言って彼は両手を前に出す。そしてこう唱えた。


「「拡散戦火(スクエアエクスプロード)」!」


 15本の矢の動きが遅くなる。だが足りない。2()()()()()()()()()()いる。しかも、今度は一発目の倍の30。2発目は少し魔力を込めたので、撃てる回数は減ったが、分裂数が増えたのだ。


「「霧散焼靆」!」

「今だぁっ!」


 私は爆発した瞬間を狙い、全魔力を注ぎ込んだ一矢、否。「雷槍」を放った。「雷槍」は矢の速度を超える速度で爆風の影響を受けず、そのまま対象に向かって一直線に飛んでいった。

 あの後被弾したのか。爆風で舞い上がった煙が晴れるまで待っていると、別の人の声がしてきた。


「ラルダ!最後の「雷槍」の威力、実に申し分無かったぞ!今日の模擬戦ではお前の勝利だ」

「はぁっ…はぁっ…うっ…や、やったぁ…」


 私はそこに膝をつく、今回は気絶はしないらしい。そして、煙が晴れた先に立っていたのは「雷槍」を握りしめたウェルトだった。ウェルトは毎回私達がこうして模擬戦をしているとやってきてはアドバイスをくれたり、私を庇ったりするのだが、今回はあっちを庇ったらしい。


「ウェルトぉ…今日は…アドバイス…アドバイスくれないの…?」

「あぁ。あれでいいと思うぞ。しかし…分裂は見たことが無いな。あれはお前が初めて使ったから名前は考えとくといいぞ」

「はーい…クレイさんは?」

「俺もねぇな。あれは良いやり方だと思ったぞ」


 まじか。やっと戦法Aが出来たって事だね。しかし、名前か。うーん。なんか普通の名前が良いな。そうだなぁ。流れ星っぽかったし、「流星」にしよう。ていうか疲れた…。立てない…。


「「魔力霧散」「凝結」」


 ウェルトが私が放った「雷槍」を霧散させて凝結させて球体を作った。そしてその球体を私に差し出しこう言った。


「「魔力譲渡」」

「っ!?わ、わぁっ!」


 球体が飛んできて、私の体に引っ付いたと思ったら、溶け込むようにして身体の中に入っていった。そして球体が入りきった瞬間、幾分か身体が楽になった。まさか、魔力が回復した…?


「何したの?」

「何って、お前が残した魔力をお前に戻しただけだ。身体が楽だろ?」

「うん…。ありがとう」

「これぐらい造作もない」


 おぉ。立てる。これなら走れそうだ。そんな、他愛もない会話をしていた時の事、ウェインさんが凄い焦った顔をしてやってきた。そしてこう告げた。


「王!【龍帝】が帰還しました!ただ…相当酷い状態です!」

「何!?」


 ウェルトが焦った顔になり、城壁から飛び降りた。そして私はクレイさんに担がれて城壁を下った。そのままウェルト達に付いていった。


 ___________


 私達はウェルトが住む城の正門に来ていた。そこには変わり果てたおじ様がいた。身体中傷だらけで火傷、打撲痕、そして数えきれない程の切り傷があった。腕と足の骨も折れてるかもしれない。変な方向に曲がってるし。


「とりあえず治療しよう。「急速完治(エクスヒール)」」

「…うっ。ありがとう【魔神王】殿…」


 おじ様の傷はウェルトの治療魔術で瞬時に治癒した。そして顔色も幾分か良くなった。凄いなぁ、治療魔術。


「何があった。まずはそれを話せ」

「あぁ…そうだな…。簡単に言うよ」


長耳族(エルフ)が住んでいた森は焼き払われた。【土王】は【剣聖】の返し技で死んだ。僕は皆に逃がされて、逃げてきた…最低の龍だ。殺してくれ」


 その発言を聞いた瞬間、空気は北極のように冷たくなった。えっ…?土人族と龍族の頂点が指揮をしたんだよ?なのに人間族側が勝ったの…?どういう事…?そして故郷が焼かれた?お父さんは?お母さんは?どうなったの?


 色々な疑問が浮かび、全部容易に察しが付き、私は受け止めたくない事実を受け止めることしか出来ず、そんな事実を叩きつけられても、涙一つ流せない自分に絶望した。


 誰も話すことも無くなり、ただ沈黙が続いた。しかし、一人だけ、口を開く者がいた。


「なぁエルドラさん。その【剣聖】の返し技はどんなのだ?」

「どんなのって…見えなかったよ。唐突に【土王】の体中から血飛沫が飛んで、絶命したんだ…」

「なるほどな。そいつは今どこにいるか分かるか?」

「しばらく上空から見ていたから多少は…だが恐らくまだあそこにいるはずだ」

「だってよ王様。俺だけをそこに送れるか?」

「「は?」」


 ウェルトとおじ様がクレイさんの発言に首を傾げる。なんでそんな敵軍のど真ん中に一人で…自殺行為だ。


「待ってクレイ!何考えてるの?」

「【剣聖】を殺しに行く」


 クレイさんは冷めた表情でそう言った。まるで、自分なら勝てると言っているような表情で。

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