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シチュー

ユキが泊まっている宿にたどり着く。

木造で、かなり大きい建物だ。獣舎も備え付けられていてかなり立派である。中へ入ると元気そうな少年が出てくる。


「いらっしゃいませー!

えっと…ユキさん以外の方々は泊まりですか?それとも食事?」

「食事。…そこの2人は?」

「あ、俺達のことはお構いなく!」

「なら、3人前で銅貨2枚と小銅貨1枚だぜ!…です!」


ユキが銅貨3枚を少年に手渡し、お釣りを貰うと隣に続く部屋へ歩いて行き、空いているテーブル席に座るとそれに続いて私達も座る。シュバルとヴァロスは仕事中でもある為かなにも注文せずに私達の近くの席にいるようだ。


結依も歩も新鮮そうに周りを見渡し、不意に結依が改めてテーブルをちゃんと見ると疑問を持ったような表情になる。


「そういえば、ここってメニューとかないの?なにか選ぶ前にお金払ってもらっちゃったけど…。」

「ない、殆ど宿の女将がその時の旬の食べ物から独断で作るけれど美味しいのは折り紙付き。お金も気にしなくてもいい。」

「なるほど…ありがとうユキさん。」

「ユキ、でいい。」


そう結依とユキが話していると、待っていたご飯が運ばれてくる。匂いから察するに、シチューだろうか?


「はい、今日のメニューは熱々シチューとパンだよ!熱いから気をつけて食べな!」

「ん、ありがとう」

「わ、凄い美味しそう!いただきます!」


シチューがまろやかで、野菜もよく煮込まれていて、口へ入れるとすこし噛んだだけですぐ解れる。パンにつけて食べてもとても美味しい。少し固いかなと思っていたパンがシチューの温かさと水気で柔らかくなっていく。

そんな優しい味から、「家庭の味とはこんな感じなのだろうな」と感じさせられ、思わず頬が緩む。


「…ナユ、気に入った?」

「そうだけど…そんなに顔に出てた?」


ユキは一瞬結依と歩を見て考える素振りをしたが、頷く。

長い付き合いだからわかった、という事だろう。

結依も幸せそうにパクパク食べていて、また城下町に来ることがあればまた来たいと思えた。


シチューを食べ終え、一息入れていると、結依が思い出したようにハァ、とため息を漏らしている。


「どうかした?結依」

「あ、ごめん。ただ、訓練がもうすぐあるのかなって思うと不安で…」

「まぁ、初めてなんだし、厳しくはしないでしょう。」

「それに俺もいるし、一緒に頑張ってやってみようぜ」

「うん…」


歩の言葉があっても、やっぱり不安なら…不安は不安のまま訓練してみるしかない。とはいえ、


「私も、武器の扱いはそんなに上手じゃないし出来なきゃいけないってわけじゃないわ。気軽にやってみましょう。」


私は魔法が得意なのもあって武器を使った戦闘は経験が浅い。

もちろん、持ち方振り方、そういった基本はわかっている。

けれど…どうせなら、これからは使う機会も増えそうだし武器を使った戦闘も増やしてしていこうと思う。


努力していけば、才能がなくてもスキルが芽生えることもある。

ならば、私も手加減して訓練せずに、苦手な武器を使った戦い方を試行錯誤していこう。

実を言えば、前から武器に雷や炎が剣に纏うような、かっこいいものに興味があった。


結依は不安そうにしているけれど、歩は結依と同じく不安はあっても、流石男の子と言うべきか、強くなりたい願望や武器に憧れに似た気持ちを抱いているようだ。訓練に対して期待もしているようにみえる。


「そういえば、3人はどんな戦い方をする予定なの?」

「あ、そうよね。ユキちゃんには言っていなかったわ。私は拳と杖を使って敵をボコボコに……じゃなかった、味方を回復させたりサポートに回るわ。」

「七夕の前半の言葉は聞かなかった事にしてー…私は短剣に光と風の属性を使うよ。七夕にアドバイスしてもらって、風を使って戦闘とか考えてるかな。」

「俺は影魔法と…本当は刀を使ってみたいんだが、あまり見かけないだろうしな。剣術のスキルがあったから今のところそっちをメインにしている。訓練とか、実戦の時に魔法を使った戦い方を模索していく予定。」


ユキちゃんはふむ、と頷き言う。


「私は2人の持つ短剣術と影魔法を心得てるから城では教えられないけれど、こうして会える時には教えられる。…七夕と同じのスキルはないから七夕には教えることってあまりないけれど。」

「えっ、ほんと!?やった!城の騎士さんたちって怖いなって思ってたから少し安心したかも!」

「おいおい、結依、教えてくれるのは城の外でだけだっていってたろ?」

「あっ、そっか…残念。」


喜びから一転、肩を落とす結依に私達は思わず笑った。


■■■


食事を終え、宿屋から出ると、

太陽はまだまだ上にあり、戻っても殆どすることの無い城にはまだ戻りたくはない。

それだけの理由だけれど、まだ知らない街を観光気分で見て回るには十分な理由だと思う。

私たちは出店をみたり、雑貨を売っている店を見て回る。

ふと、結依がひとつの店に目を止め首を傾げる。


「ねえヴァロスさん、ここの魔道具?って何?」

「魔道具ですか?そうでした。皆様は魔道具に馴染みのない所からいらっしゃったんですよね。

魔道具とは、魔物の核となる魔石の力や人の持つ魔力を利用した道具です。様々な効果を生み出す物が出来るので便利ですし、見ていて面白いですよ。」

「へえぇ〜!ねえ歩、七夕!見てみたい!」

「魔道具ねぇ、私も見てみたいかも。」


扉を開け、中を覗く。しかし見える範囲には誰もいない。


「あれ?誰もいない…?」

「流石にいないのは…ありえないと思うけど。店は開いているようだし見てみましょうか。」


薄暗い店内に入り、並べられた商品を見ていく。


「これなんだろ…わあ!」

「あっ、ユイ様!説明無しに魔道具に触れてはなりません!」


ユイが気になった魔道具を見つけ、それに触れる。

すると眩しい程の光が出され、驚いた様だ。


「びっくりしたぁ」

「明かりの魔道具の様ですね。ユイ様、今のは幸い危険性の低い魔道具だったので大丈夫でしたが、攻撃性のある魔道具もあるのでお気をつけください。」

「ま、そんな物を普通、触れられるような所に並べないけどな。念の為な?」



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