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街へ

ユキも見た目だけ人間レベルのステータスになった。

実力を隠すのは面倒だというけれど、私もかなり大変だと実感している。

魔力がありすぎて弱い魔法が逆に難しいのだ。

前に特に初歩である光魔法を、魔力を最小限に抑えたにも関わらず思ったより光が大きくなってしまった事を考えるとわかりやすいだろう。

勇者となって行動するのは意味の無いように思えるがしかし、意外と魔力コントロールの特訓になる…そう言い訳してみる。


ユキとひとまず別れ、友人や重要な役職に着いてもらっている者達のもとへ行き長期旅行する事と最近の調子はどうか話し合って、次の日。

朝一でドワーフ国へ赴き、ジグに依頼していたミスリル以外の2人の武器を買い取ると、私の部屋へ戻る。

するとやはり、私の部屋の前にユキがいた。鞄を持っていていてすぐにでも行けそうな空気をしている。


「準備万端のようね。まずは私がいる城の近くの草原に送るわ。これ向こうのお金、銀貨3枚くらいあれば足りるでしょう。」

「ん、後で返す。」


ユキを城付近の草原へ転移させ、私も城に戻ろう。

戻る事を分身に脳内に伝え、前回こちらに来た時の様にトイレに行ってもらい、その隙に私が入れ替わる。分身は魔力化する事で私に溶け込み、分身が得た情報を実体験のような感覚で知る事が出来る。

分身からの情報を見たところ、特に異常もなく今日の昼には城下町へ行くそうだ。因みに今の時間は、大体朝の8時くらい。


それまでは暇なので、城の中をメイドを引き連れて散歩をしていると薬草園や図書館、訓練所もありそれぞれが広々としている。

流石に、王族がいるような場所には行く事は出来なかった。

メイドさんも疲れるだろうから、城内にある朗らかな雰囲気を持った庭園で花を見つつ休憩を取る。

まだ…日光の方向を見る限り10時くらいだろう。


「ナユ様、お早めの昼食になさいますか?」

「いいえ、街へ言った際に食べるから大丈夫よ。」


元気な街には色々な物や食べ物が溢れているだろう。

街を見れば、多少は国がわかる。

国民が笑顔ではない国は、良い国ではないと私は思っている。

勿論、私の世界の民も笑顔で居られるように様々な国に私も気をかけている。


「あの、ナユ様」

「どうかした?」


言いずらそうにメイドさんが質問をしたそうにしている。

私はいいけど、メイドがそれで良いのだろうか。

まだ若い事から、城へ来たばかりなのだろうか?


「ほかの勇者様方は私どもメイドがいると落ち着かない様子なのですがナユ様は自然体でございます。ナユ様はこちらへ来られる前は貴族だったのですか?」

「いいえ、王族やお金持ちは居たけれど、貴族という仕組みは既に日本という国には無いわ。日本では貴方達メイドに慣れている私の方が特殊なのよ。」

「そうですか…あの御二方にも快適に過ごして頂けるようアドバイスを頂けたらと思ったのですが…。」


しゅん、と悲しそうにしているがそれ以上は聞いてこないようだ。やりたくてやっている仕事なのだろうし、優しい性格が私にもわかる。


「そうねぇ、あの二人には家庭の味とか、豪華過ぎない物とか、そうゆうのがいいと思うけれど。でもそのうち慣れるわよ、いつまでも城にいる訳でもないし」

「はい…!お気遣い、ありがとうございます。ナユ様」


■■■


城の門の前に、結依、歩、私。そして騎士が2人立っている。

騎士の2人は目立ちすぎる鎧を脱いでいて動きやすい格好をして一般人に紛れ込む方針で私たちの警護をするようだ。

結依と歩は相も変わらず仲が良いようで、2人の距離はかなり近い。

騎士の2人がにこやか、そして堅苦しく自己紹介をする。


「どうも、シュバルといいます!で、こっちのキリッとした顔のがヴァロス!宜しく!」

「シュバル!馴れ馴れしくしすぎだ!ご紹介に預かりました、ヴァロスと申します。そしてシュバルが申し訳ございません。」


凄く、相対的な2人だ。けれど、こうゆうのがお互いが無いものを持っていて足りない部分を補えあえるいいパートナーになるのだろう。

シュバルは怒られてもヘラヘラ笑って柔らかい雰囲気を保ったままだ。まさに、こんな人物を「チャラい」と言うのだろう。

ヴァロスはそんなシュバルのストッパーに徹していそう。曲がった事を嫌いそうな、騎士道精神に溢れそうな人物だ。


「結依です!よ、宜しくお願いしましゅ()っ!」

「俺は歩だ、宜しく。…結依、大丈夫か?」

「だ、大丈夫!」


とても結依は大丈夫そうに見えない。緊張しすぎだと思う。騎士ってだけでそんなに緊張するものなの?それとも私には分からない「強者オーラ」とかあるのか…?いや、多分ない。あるのは2人のガタイの大きさだよ。…それか!

確かに、見た目の大きな人ってなんとなく威圧感を感じる。


「七夕よ。…私よりこの2人のフォローと警護を主にお願いするわ。」

「しかし、ナユ様は?」

「そうだよ七夕!何かあったら…危険?なんでしょ?」


結依は危険を自覚していないように、ヴァロスは困った様に言う。男の歩は兎も角、女の子を護るのは騎士の務め…なんて思ってるかもしれないけど私には関係ない。私はそんなか弱い女の子ではないし、むしろ怒らせないように気をつけられるような存在としても扱われてきている。


「故あって、少し慣れてるのよ。周りを見る目もあるつもりだし、こう見えて男を背負い投げる位の力はあるわ。」

「なんと、頼もしい。」

「頼もしすぎるんだが、ずっと思ってる事だが七夕って日本で何してたんだよ。日本にそんな危ない場所早々ないだろう。」

「特に遊んでたりしただけで何もしてないわよ。さ、行きましょ」


歩に釈然としない顔をされてしまったが、嘘は言っていない。日本では遊んだり食べたり映画みたりと、満喫しかしてない。たまに近道をしようと路地裏に入ったりすると不良に絡まれたが、全員漏れなく叩きのめした事なんて今はいいだろう。


門出て少し歩くと貴族街、それをさらに進むと庶民も暮らす街が見えてくる。出店や家族連れなど、賑やかだ。

食べ物のいい匂いだったり、男の笑い声が聞こえてくる事から元気な街だというのが伺える。


「さて、二人とも人も多くなってきたけどどうする?」

「目的は、情報…だったよな。」

「それって、どこに行けばいいの?」


結依がそう言うと、歩と結依の2人が私を見る。

意見を言うのは私、みたいな定位置が出来てしまった。

実際私の知識は日本人ではないし、色々な魔法も元から使えるから意見を求められたらスラスラと言えるけど。

しかし、この場は意見を言わせて貰わないとユキと合流出来ないから助かった。


「やっぱり、私なのね。シュバル、冒険者ギルドってあるの?」

「冒険者ギルド?」

「ああ、あるぞ!魔物を倒してくれたり、人助けをしてくれたり…国を越えた慈善団体だな。自然と色んな奴も集まるから情報収集にはうってつけだ、案内は任せとけ、こっちだぞ!」

「これから、活動していく中でギルドカードがあるといい時もあると思います。身分証明書にもなりますし、依頼を受ければ収入を得ることが出来ますから。」


シュバルに案内されながらヴァロスが私たちに冒険者ギルドについて説明をする。勇者として活動するという事は近々国を出て様々な場所へ旅をする。

身分証があると入国の際すんなりと通る事が出来るし、旅にお金も付き物だ。金がなくて困る事は何も無い。


「着いたぞ!このデカい建物が冒険者ギルドだ。」

「わ、本当大きい。」

「ギルド内に飲食出来るスペースや様々ですから、このくらい大きくないと狭いのだと聞いています。これから中に入りますが、荒くれ者も居ますのでお気をつけください。」

「ああ、わかった。」


私たちが冒険者ギルドへ入ると、驚くべき光景が広がっていた。

1人の少女が数人の大男を土下座させていた。

そしてやっぱり、その少女に私は見覚えがあった。


何やってるの、ユキちゃん!

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