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スキルを確認しましょうか

足音が聞こえてくると案の定、「コンコンッ」とノックされる。


「歩と結依です。入ってもいいですか?」

「ん、入っていいよ。」


用件は、今後の話だろう。

初対面である私と話す前に、2人で話しあった後、私とも情報を共用しに来るだろうなと思っていた。


「えっと、七夕さんと話をしようと思って。」

「七夕でいいよ、これからの事でしょう?座って話しましょ。

…あぁ、メイドさん。2人はメイドさん達に慣れてなくて少し話しにくいだろうから、出来れば部屋の外で待っててもらえないかな?」

「わかりました。扉の前にいますので何かあればお呼び下さいませ。」

「ありがとうね。」


メイドさん達は部屋を出ていった。とはいえ、大きな音を出せばすぐに聞こえる距離だ。私は付属のテーブルとソファーに座り、2人も私の前にあるソファーに座る。


「…慣れているのか?」

「メイドさんの事?まぁ少しね。」

「うへぇ、もしかして金持ちとか?」

「そんな事より、今後の話でしょ?」

「あっ、そうだった。」


実際、お金は質屋とかに宝石だったりアクセサリーを売ってたから日本円もかなりある。けれどそれ以前に神をやっている私に仕えてくれる子は多くいるから世話されるのは少し所か、かなり慣れている。でもそれを態々言うつもりは無いし重要な話でもない。


「さて、異世界へ来て、魔王討伐…日本とは違って道中も危険でしょうね。」

「そうだな。けど、討伐しに行くのか?」

「んー、場合によるわね。優しい魔王様な可能性もあるし。今現在、私達は情報が無さすぎる。」

「こわい魔王で、危険ならどうするの?」

「王様の言う通りに行動するなら、強くなって道中で仲間も得るしかないわね。けど、倒して帰ることが出来る保証なんてない。ぶっちゃけ面倒ね。」

「ああ。それで聞きたいんだが、…日本に帰りたいか?」

「普通なら帰りたいんじゃない?見知らぬ世界に突然召喚されて魔王討伐なんだし。」

「そうじゃなくて、七夕さ……七夕はどうなの?私は、帰りたくない。」


私ははぐらかしたが、結依は嫌な思い出でもあるのかはっきりと断言し、心から思っているようだ。歩は、結依について行くんだろう。

魔王って存在が弱いとはとても思えない。そうでなければこの国が私達を呼ぶ理由が無いように思える。

多分私が本気出せば簡単に倒せるのかもしれないけど、折角なのでなるべくこの世界では全力で挑みたくない。「癒しの勇者」としての役割に徹底し、結依と歩を支えたいと考えている。


「今はなにもわからない。だから何かを決める前に情報収集が先ね。情報収集はメイドに聞いたり、可能なら城下町に行けるかどうか聞きましょう。資金は城下町や城の外へ行く前にくれると思うし。調べることは沢山ありすぎるわ。」

「確かに。召喚されてすぐにそこまで考えられるとか…本当、七夕は驚く程落ち着いてるな。」

「だよね。もし歩がいなかったら…私なら絶対パニックになってたよ。」

「俺も、知り合いが居ない中一人なら今ほど冷静でいられなかった。」


なんたって私、神様ですから。

寧ろ異世界から日本に遊びに行ったり、他の世界にも遊びに行くこともあるから、そこはもう異世界慣れよね。

それに自分一人でも何とかなりそうな実力もあるから余裕も自然とでるし、その気になれば物理(拳)もかなりのものだと自負している。


「一先ず…そうね、魔法や収納と鑑定は試した?」

「まだ来て間もないしやり方も知らないから何も試していないな。」


隣で結依も頷いている。

まぁ、鑑定はしてもおかしくないと思っていたのだが、していないなら順番に教えてしまおう。


「えぇと…まず収納ね。腕時計がここにあるわよね?」

「はい。」

「ああ。」

「「収納」っと…心の中で呟くだけでいいわ。」

「消えた…?」

「これくらいで驚いてちゃ疲れるわよ?…はい。」


何も無い手のひらの上を一瞬隠し、腕時計が出てきたのを確認させる。収納から出しただけだが、2人には手品のように見えているだろう。


「なあ、いまのは?」

「収納から出したいものをイメージしたの。それだけね。」

「凄い…手品みたい!」

「その手品みたいなことが、2人にも出来る様になったのよ?2人とも、持ち物とかないの?」

「あ、ハンカチならあるよ!それでは……おぉ!消えた!おー!」


新しい玩具を得たように意味もなく収納しては出してを繰り返している。

日本人は非科学的なものを見れる機会が少ないから仕方ないのだが、テンション上がりすぎじゃないかな。

隣の歩も好奇心を擽られたのか、そわそわしているし。


「次よ。歩、結依を見ながら「鑑定」と言ってみて。」

「おう。「鑑定」…結依のステータスか。」

「歩だからいいけど、勝手にステータスを見られるのっていい気はしないね。」

「けれど、召喚者に自動的にプレゼントされるスキルだろうから見られる事は殆ど無い筈よ。」

「それって七夕も見るんじゃん!」


私が鑑定スキルを持っていることは王様の前で発言しているから当然分かることだ。

けれど、私は恐らくヒーラーになるから自ずとステータスを見させてもらう機会は多くなる。探索や、戦闘中に状態異常や体力不足になった場合すぐに支援する必要があるからだ。


「遠慮なく勝手に見るけど、その代わり死んでいなければどんな怪我も病気も治すわよ。ステータスの状態を見れば風邪をひいてもそれを自覚させる前に病気を治すし。」

「ひっ…死ぬって、頼もしいけれど…。」


平和ボケした日本では死の危険は早々なくてもここは異世界。

これから多くの魔物と戦う事になる。

油断したら死ぬし、相手と自分の実力を見誤っても死ぬ。

運が悪くても死ぬ時は死ぬ。当たり前のことだ。

当たり前の事なのだが、それを急に受け入れられないだろう。

今はまだ危険意識の話をするべき時ではない。


「前は何してた人なんだよ、本当に。」

「達観しすぎだよね…。」

「そうねぇ、上の立場ではあったけど。」

「18歳なのに?」

「そんなことより、ほかの魔法試しましょうよ。まずは私が試すからさ」


結依も使用出来る光魔法の初歩の初歩といえば手の上に光を集める事だろう。

どのものでも、魔法は知識とイメージが命であると私は思っている。直感も必要だが、例えば炎を青くするなら酸素を多く含ませるイメージを。治癒するなら周りの細胞を使って治すことだって出来る。


私は使用魔力を極力少なくし、指先の上に握り拳程の大きさの光の玉を出現させる。

もう少し小さくできるようにした方がいいかな…。凝縮…凝縮…

お、指の第一関節程まで小さくてさっきよりも明るくなった。

うん、これくらいかな。


「まぁ、こんな感じね。」


私は多少満足して言ったら2人にドン引きされていた。

なぜだ。私が何をした。


「スキルがあるとはいえ、そんな急に出来るものなのか。」

「私、スキル持ってはいるけど…出来ないと思う…。」

「いや、でもこの光魔法はかなり初歩のよ?初級魔法ライトよ?照らすだけで攻撃魔法ですらないし…。」


もごもごと私が言い訳じみた口調で言うが、2人の顔は益々引いて行くのを感じる。

私は基本、魔法特化なんだから仕方ないじゃない!


「というか、なんで初級とか攻撃魔法なんてもの知ってるの?」

「え?あっ、ほら、アニメとかで定番じゃない。それよそれ。」


そんなのより結依もやってみてよ、と告げると魔法への興味と好奇心が揺さぶられたのか結依は「わかった」と言う。

私がしたように指先に光を…結依は生み出そうとしているのか。

私は生み出したわけではなく周囲の光を借りて行った。その方が魔力が節約できるし楽だからだ。

流石にスキルがあるから指先に光が出来たが、光は弱く、周りを照らせることは出来ないだろう。

スキルがあっても最初ってこんなものなのかぁ…自分の人外さがよくわかった。

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