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気掛かりは君の愛

作者: ユウ。


久しぶりだねティーンエイジャー

僕らの周り

私たちの周りには

たくさんの愛があった

溢れるくらい

掬いきれないくらい

たくさんの愛が


あった。




『気掛かりは君の愛』


・車窓


世界を横切ってゆく車窓

地平線はどこまでも

窓から顔を出すと

故郷と同じ匂いがした

そのときふっと

ありふれた日常を思い出した


・グラスについた結露

この水滴は何処から来たのか

エジプトのオアシスかアラスカの渓流か

そう思えればいつになくロマンチック


・遠くに行こうよ

誰も知らない場所まで

そしたらきっと

果てしない草原の真ん中

君の頬にキスするから


・青い目をした少年が

そばかすをちらつかせて

掌一杯の貝殻を見せてきた

その澄んだ笑顔は海によく似合うね

撫でた髪は少し甘い香りがする


・わたしたちは小さな舟で

沖の孤島を目指した

慣れた手つきで舟を漕ぐ青年は

とても魅力的にみえたけれども

それがバレないよう必死に隠した

だって

あなたの優しさが

いつか裏返りそうで怖かったから


・テトラポット


波の音に防波堤を覗くと

テトラポットに水しぶき

太平洋が泣いている


・静かな港町


静かな港町の夜は静かだ

僕は君に電話して

「二人一緒に逃げ出そう。」

そう囁いた

丘の上の灯台から町を見下ろすと

僕らの世界は小さくなった

なあ家に帰ろうか


・九月一日

久々に見た制服は

白く眩しい

君は逆光で影になって

アスファルトの上

陽炎になった

久しぶりだね

そうね

相も変わらず涼しい君の顔


・排気ガスでくすんだ街路樹も

酸性雨で古びた公園の遊具も

少しよれた君の制服も

街の喧騒から切り取れば物悲しく美し


・人工的な匂い


僕の街はやけに人工的で

まるで決められた仕事のように

国道を右往左往

ガラス張りのビルには

偽りの空

夕暮れの喫煙所に

うな垂れた悲しい目

僕はこの街の匂いが好きさ


・傘も差さずに

歩き続けて

待っている人もいなかった


・小さな水たまりに

自分の影を浮かべ

頼りなさげなシルエットに

あの人の気持ちが

ようやく理解できそうな気がする

ほんの少しだけ

別れたあの日から

前に進めそうに思えた

風が吹いて

水たまりの影は

アスファルトの上

飛沫となる


・違う海


わたしはひとり

電車に揺られ

逗子の海岸を目指した

君と見たあの海に

きっとまた逢えると思ったから

でもそこには違う海

寂しい波音だけが

足元にこだました

まだ幼い波の子供が

涙と共に爪先を濡らす


・眠れないまま朝になって

眠気を殺して

ベッドを抜け出す

君に逢いに行かなくちゃ


・週末を持て余した君を

ベッドの中でなぞってみる

君はいつも寝たフリをして

恥ずかしそうに背中を向けては

僕が後ろから抱き締めるのを待っている

そしてゆっくりと

掌が柔らかい温もりで満たされた


・西日が射し込む教室に

向かい合って座っては

君の髪を撫でてみる

甘い香りがした

僕らが一本の同一線上で

付かず離れず進んでいけたら

どれだけいいだろう


・わがまま


私は

わがままだからもっと癒して

わがままだからもっと愛して

わがままだからもっとそばに来て

あのね

君ももっとわがままになっていいんだよ


・台風が来るからって君は目を輝かせ

束の間のエスケープ企んだ

目が覚めたらカーテンの隙間から

眩しい朝日

制服の少女は残念そうな顔で

僕に八つ当たりして

見た目とは裏腹な幼げ魅せる


・自分勝手 前編


あなたは私より魅力的な人に出会った時どうするの

どうもしなくても

私はきっと嫉妬する

それでも怒らないでもらえるかな

愛ってそれほど寂しいものだから


自分勝手 後編


私?

私はあなたより魅力的な人に出会ったら

好きになってしまうと思う

でも泣かないでね

恋はきっと運命だから


・永遠なんてないことは

十代で気付いたのに

どうしてだろう

求めてしまう


・終わらない日曜日


二人のすれ違いは

勘違いだと信じてる

冷たくなり始めた空気は

君の心のメタファーのような気がして

僕らの夏の終わりを予期した

生温い熟れた空気は一瞬を永遠と惑わせる

今日は終わらない日曜日


・君の冷えてきた心に

僕は怯え

眠れない日々を過ごす

今までで一番愛した君を

失う日は来ないと思っていた

間近に迫っていると気付いてしまった


・今が死にたいほど辛くても

泣きたいほど悲しくても

人生という長いスパンで見りゃ

些細な事かもしれない

それでも君を忘れられなくて

もう少し男らしくなれたらなあ

窓の外には本降りの雨が…


・僕はいつも

君がうらやましかった

そんな風に投げやりに

なってみたかった

閉店間際のカフェで

出会った僕らは

似ていたはずだし

多くの友人もそう言った

変わったのは君じゃなくて

僕だってよく分かってる

でも君が変えてしまったんだよ

愛されたかった

愛しすぎてしまった

寂しかった

いつでも寂しかった


・街灯がふっと消え


街灯がゆらゆら揺れてから

ふっと消えた

わたしの中の何かも

消えてしまったような気がする

メールを送受信する毎日

いつしか君の顔は

絵文字になった

逢いたい

けど

逢えたらどうすればいいんだろう

もうとっくに忘れてしまったよ


・僕は君を知ってる

君の知らない君を


・わたしはあなたを知ってる

あなたの知らないあなたを


・恋とは無情なもので

意図せずとも回り出す

大切なものが多すぎて

僕だけじゃ持ちきれない

だけどとても捨てられなくて

僕の愛を半分こ


・「君に逢いたい」が

目の前でぐるぐる


・欲張り


私は寂しがりだ

罪深いほどに

大切なものが多すぎて

胸が苦しい

「もっと早く出会っておけばよかった。」

そんな風に思えないのは

欲張りだからだろうか

お互いの気持ちに気付かないフリしては

あなたを悲しませる

ごめんね


・終電に揺られる僕の隣には

いつもと違う人がいて

さりげなく触れる肩に

隠していた悪さを自覚した


・あなたはいつも好かれたがって

私を悲しませる

私がいなくなったらきっと

他の誰かに癒してもらうのだろう

そんなのは嫌よ

あなたの素敵なところ

たくさん知ってしまったから


・レクイエム


深夜27時

僕はベッドの上仰向けになって

君を想うセンチメンタルな夜

ヘッドホンから溢れる

愛の歌さえ

今の僕にはまるでレクイエム


・蛍光灯の蜃気楼


意味もなく床に寝転がって

蛍光灯とにらめっこ

目が痛くなって閉じた瞼には

幼い横顔

遠い思い出が蘇る

目を開けてみると

無性に君に会いたくなって

諦めきれずまた目を閉じた


・恋人のそれとは違う

言葉に出さない愛

さりげなく伝わってくる

愛しているよと口に出せば

もう一つの愛が歩みを止めてしまうから

誰も傷つけないように

そっと包み込んで

優しい愛を

胸の小さな箱に入れておこう


・気掛かりは君の愛


君に逢いたかった

でもいつしか

どっちの君だったかも

忘れてしまった


ごめんね


楽しかったよ


愛していたよ


またね






今この時も一瞬の永遠。

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