- Seventh Episode – first part
ついに文化祭が始まった。とはいっても、僕は1年なので見て回るだけだ。先生には
「全部見て回るまで帰さんぞ!」
と言われた。まあ、仕方ないので見て回ることにしよう。雅人も一緒に回ってくれる予定だったが、急遽妹が来るという事で無理になったらしい。
5時間後、文化祭も終わりに近づいてきたところで僕は最後のブースに行った。2年1組だ。まあ3年から順番に見て回ったのだから当然だ。しかし、ここにはこれまでよりとても入りにくい。何と言ったってメイド喫茶なのだ。僕が入っていくのを変な目で見られないだろうか。そんな不安と、もう一つ不安があるのだけど…
「…全部回んないとな…」
仕方ないので入ることにした。
「いらっしゃいませ~ってあら、麗亜君じゃないのぉ」
入ってそうそう、見慣れた人物が出迎えてくれた。部長だ。
「1名様ご来店で~す。久美!任せたわよぉ」
部長は僕に何も聞かず入れた。僕が一人って解られているのも少しショックではある。そして先輩は何を思ったか、先輩を呼んだ。
「…いらっしゃいま…」
奥から出てきた先輩が目を丸くする。メイド服を着てカチューシャをしている先輩は、いつもよりきれいに見えた。
「…なんで来るの…」
少し頬を赤らめた先輩が僕をにらみつける。しかし、それは出会った当初のものとは違い、ふてくされているように見える。
「…い、いらっしゃいませ…こちらの席に…どうぞ」
先輩は目をそらしながら席へ案内する。後輩が来るだけなのになんでそんなになるんだろう、なんて思いながら僕は案内された通り、席に着いた。
「…ご注文がお決まりに…なり…ましたら…またお呼びください」
ぎこちない言葉だった。覚えたての言葉のようだ。これだけ言うと、先輩は逃げるように奥の方へ逃げてしまった。
「…どうしたんだろう…」
首をかしげるが、もちろん返答は返ってこない。
「…まあ、良いかな…?」
後で部長に聞こう、それでいい。
「はい、あーん♡」
隣でカップルがイチャイチャしている。やっぱり一人って居づらい。
「…早いとこ済ませて出よ」
沈んだ気持ちを落ち着けながら、僕はメニューを開いた。