- The sixth episode – part 3
「…来てなかったとき、何してたの」
校門を離れてすぐ、先輩はそう質問してきた。
「えっと…図書室に居ました…ずっと」
僕は恐る恐る答える。
「…そんなことせずに来れば良かったのに。」
ごもっともだ。
「はい…すみません…」
沈黙。僕には耐えがたい静かさだった。
「…先輩って、兄弟とかいるんですか…?」
僕は何とかこの沈黙を打ち破ろうとして口を開いた。先輩は立ち止まった。そして僕を一瞥する。
「…居ない。一人暮らし」
「そうなんですか…え?一人暮らし?」
僕と同じように親が単身赴任にでも出ているのだろうか、それとも親は転勤したが先輩は残ったのだろうか。さまざまな仮説が僕の頭に浮かんでくる。
「…親も妹も事故で死んだ」
耳を疑った。僕の頭に浮かんだ仮説には一応あったが、まさかそんなことはとすぐに否定した。しかし、実際に起こっていたらしい。先輩は続ける。
「…中学の時、妹の誕生日に旅行に行くことになった。けど私はちょうどその日に弓道の大会があって行けなかったから…3人で行って貰うように言ったら、愛美が私の試合見に行くって言って…それで、大会を見に来る途中で事故に遭った」
先輩は表情は変えなかったものの、声は震えていた。当然だ。僕は、余計なことを言って先輩の嫌な記憶を引きずり出してしまったことを反省した。
「…変な話した…聞かなかったことにして」
先輩はそう言うが、無理に決まっている。
「…ここだから…それじゃあ」
いつの間にか先輩の家の前に来ていたようだ。一般的な、洋風の2階建ての家だ。
「あ、あの!せ、先輩!」
いつの間にか僕は先輩を呼び止めていた。
「何…」
「ま、また一緒に、か、帰ってもいいですか!」
「…好きにして」
先輩は少し考え、OKしてくれた。これからは明るい話題を出して、先輩を楽しませたい。
なんて考えながら、僕は再び帰路についた。