- Second episode -
「麗亜、お前も災難だなぁ」
次の日、僕は幼馴染みの真田雅人に相談に行っていた。相談に行くと言ってもクラスは同じ、席も前後だからすぐに喋れるけど。
「ま、これから3年間、手芸部で頑張るんだな。大丈夫大丈夫。お前ならできる。」
雅人が笑いながら僕の肩をポン、と叩く。
「そんなこと言われてもさぁ…僕以外男子いないのにぃ…」
情けない声が出る。まあ、僕の声は常に弱々しいから多分他の人には違いが分からない。雅人とその他少ししか判別がつかないみたいだ。
「でもさ、手芸部っつったら美人揃いで有名だぞ。お前にもチャンスあるんじゃないか?」
「だったら男子生徒もいるはずでしょ…。つまり性格が普通の人がいないんだよ…」
それを口にした瞬間、昨日のあの人…恐黒先輩の事を思い浮かんだ。何も感情を持ち合わせていない、肉食獣が狩りをする時のような目をしていた。あんな人が何故手芸部なんかにいるのかわからない。
「まあまあ、そう落ち込むな。なんとかなるって。元気だせ。」
雅人は相変わらず他人事のように答える。まあ、雅人にとっては他人事だ。
「…やっぱり無理だよ…なんなら、雅人が行けばいいじゃん。」
「俺は無理だ。バスケ部にもう入部届を出した。今日から早速1年もあるらしい。」
雅人に現状を見てもらえば僕の気持ちを分かってくれるはずと思ったが、部活なら仕方ない。
次の瞬間、部長の高瀬先輩が
「双我麗亜って子、いるかしら?」
と言いながら教室に入ってきた。教室のみんなの目が一瞬にして高瀬先輩に向く。しかし、彼女はそんなことを気にせず
「あら、そこにいたの。昼休み、新入部員への軽いミーティングあるから被服室来てねぇ」
と言い、そのまま教室を出ていった。僕を含めた教室の全員がドアを見たまま唖然とする。僕が声を出したのはそれから3分くらい経ってからだった。
「…もういいや…」
「うん、諦めろ」
親友の後押しも受け、僕は手芸部に正式に入部することが決まった。これからいろいろ大変そうだが、もう吹っ切れることとしよう。それが一番だ。
「…僕、頑張ってみる」
「おう、その意気だ!」
雅人の言葉とともに、チャイムが鳴った。なんだかそのチャイムと共に、僕の青春の様なものが始まった気がした。