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巨人現る 2

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山中渓 司が自宅に戻って来ると、リビングで娘の瑠璃葉(るりは)がくつろいでいる。娘ももう中学生に成っている。所で、テレビを一生懸命視ている。何を視ているのかと思えば、「野球中継」である。何で?

司は

「早く自分のお部屋に行って、お勉強なさい」

やんわり言った。

・・・全く聞いていない。最近、あんまり言うことを聞かなくなった。難しい年頃だ。

司は所謂「お勉強ちゃん」なので、「生まれてこの方、テレビを視たことがない」、本人は豪語している。

娘は中々動こうとしない。司は不破との接触で疲れた体をソファで休めようとする。キッチンでは妻が夕食を拵えてる音がする。眠気が生じる。

瑠璃葉は興奮して騒ぎ立てる。司は驚いて見ていると、瑠璃葉はがなり立て始めた。

「ヒヨ~オ、出て来た。出て来た。ヒヨ~オ。

パパ、知ってる?このゴリラ、すんごいのよ」

「・・・・・・。

ルリちゃん、どうして野球なんて知ってるの?・・・まさかボーイフレンド・・・パパ許しませんよ。早すぎる。パパにちゃんと、教えなさい。(ゴリラ?野球ではないのか?映画『猿の惑星』でもやっているのか?パパちょっと安心・・・)

どれどれ、どのゴリラ?」

「かっ飛ばせー、ふ〜わ。かっ飛ばせー!」

「ルリちゃん、どうしちゃたの?ふわなんて。ん〜ん、ふわ?」

司はテレビを視ると、目ん玉が飛び出す程、驚いた。さっきまで一緒にいた「バカ不破」がテレビに映っているじゃないか。ユニホームを着て野球をしている。

(まさかありうべきことだろうか。高速エスパーか、こいつは?)


〔ここから、暫しテレビ音声〕

「いやあ、『代打・不破』とは驚きましたね。吉田山さん。昼間の練習には出て来ていませんでしたよ、不破は・・・」

「そうです。そうです。気分にムラのある選手だと思いますよ。非常に消極的ですね」

「何でも病気とかで・・・」

「ほお~」

「届け出には『ちゅうにびょう・・・』。何じゃコリャ。何でも『宙人鋲(ちゅうじんびょう)?』らしいですよ」

「ほー、そんな病気があるんですか?知りませんねー。ふふふ」

「『中耳炎』ですね。

さあ、今日、『中耳炎』でスタメンに出場していなかった不破・・・土壇場で、代打で登場です。

不破ー現在ーホームラン23本。9回の表、ツー・アウト・満塁。得点は13対13の同点。

おっと、ここで和田岬監督登場。ピッチャー交代ですね」

アナウンス。

「選手の交代をお知らせします。

ファンシー・ダイバーズ。ピッチャー・亀山田に代わりまして、ピッチャー・ポール・マカドニー・背番号00」

「おっと、ここで出て来ました。今日たった今、来日したばかりの新守護神・ポール・マカドニー。

吉田山さん、和田岬監督、思い切って勝負に出ましたね。

キャッチャー・フライを捕ろうとしてヘッド・スライディング顔面負傷した亀山田に代えて、新外国人投手・ポール・マカドニー」

「そうです、そうです。和田岬監督、積極的な采配だと思いますよぉ。はっする、はっする」

「新守護神・ポール・マカドニー、日本に来てから一度も投げたことがありませんけど、触れ込みでは、剛速球投手。『ビー□トルズ』みたいな名前ですけど、どうですか、吉田山さん?」

「そうです、そうです。『ジョン・のれん』とか言うのもありましたね、ふふふ。剛速球だから、大丈夫でしょー。はっする、はっする」

「しかし、相手はあの『マウンテン・ゴリラ打法』の不破ですからね・・・これは面白い対決になりそうですよ」

「ファンシーに来る選手ですからね」

「球審はピッチャーに返球後、くるくる回転する『バレリーナ・熊哲川』。『大回転魔球』と呼ばれています。

さ、プレイがかかりました」

「余計なこと何も考えず思い切って行くことですね」

「ピッチャー・ポール・マカドニー大きく振りかぶって、渾身の力を込め、剛速球投げました。・・・アレレ?」

「はえが止まるわ!」

「打ったー!行ったー!場外ピンポン玉だー!」

「あっ、こらあかんわ・・・ぶつぶつ」

「不破勝負を決める勝ち越し満塁ホームラン!不破・弾!弾!弾!」

〔テレビ音声一旦ここまで〕


瑠璃葉絶叫!

「不破・ダン!ダン!ダン!

パパ、ワタシ、この類人猿と結婚するわ」

「やめなさ~い、こんな北京原人」

「ブーッ!」

「あっ今、ママおならした!アイドルがおならした!アイドルがおならした!キャーッ!」

瑠璃葉はハイテンション駆け出した。キッチンでは笑い合ってる。


〔再びテレビ音声、コマーシャルあけ〕

「吉田山さん、初球いきなりど真ん中ストレート、これはないですね」

「無謀でしたね。あほとちゃいますか?□ートルズが泣くでぇ」

「不破、超スロー・カーブをマウンテン・ホームラン。これで23本目。

吉田山さん、不破という選手は今やスラロームズの不動の4番バッター。高校野球では準優勝ピッチャーでしたけれども、優勝出来なかったことに限界を感じて、バッターに転向。オレは元々ピッチャーには向いていなかったんだ。バッター向きなんだ、と言う程、負けず嫌い・・・。猫若丸と異名を取られた吉田山さん、そこんとこ、どうですか?」

「ぼくはエスカルゴ共和国に行ってまして・・・年取った猫と間違えられまして・・・猫が来る!猫が来る!・・・味~濃い!・・・人をぼけ老人扱いスナー!・・・はっする、はっする」

「さて、試合は9回の裏。ファンシー・ダイバーズ最後の攻撃。既にツー・アウト、ランナーなし。あっ、キャッチャー・ゴロ」

「あ・・・終わりましたね」

「一塁に送って、試合終了。ミス連発、最下位をダントツで走るファンシー・ダイバーズ、今日もまた・また・また負けました。これで13連敗」

「では、放送席・平成(へなり)さん、勝利監督インタビューです。

それでは、勝ちました、ヤキュラト・スラロームズ・ノブラ勝ち也監督です。

監督、おめでとうございます。対ダイバーズ、これで13連勝。強いですね。

今日のゲーム、取ったら、取られる、いつも最後に勝つのはスラロームズ。観ている人には面白いゲームじゃなかったですか?ノーブラ監督」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!・・・・・・・・・・・・・・・わしはノーブラちゃうで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・点を取られ過ぎ。・・・まあそうですね、フテ田というのは非常に不思議なキャッチャーでしてね、全然ピッチャーに内角投げさせよらん。外、外、一辺倒。

フテ田さんも偉く成って、みんなに尊敬されようと思って、嫌われるような内角は投げさせよらん」

「クソッ!」

「・・・それは以前、巨甲(きょこう)ジャイアント・パンツァーズとのデッド・ボール合戦があったからじゃないですか?それでちょっと内角攻めは自粛しようと思ったんじゃないですか?」

「ッ!ッ!ッ!」

「え~、それでは、明後日からのジャイパンツとの3連戦、監督ゥ~抱負を聞かせて下さい」

「パンツはわしの専門分野やで」

「それでは、興奮のどツボファンシー申子園(もうこえん)球場からおいとまいたします」


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