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第4話 Original Online

「おっす」


「お、おいーっすリュウ。どうだった?」


 なんとかアリを倒した俺はあれから少し虫共と戦い、ある程度は[無刀流]の扱いにも慣れてきた所でゴルムと合流していた。


「おう、お陰様で、バッチリ戦えるようになったぞ」


「おおー! やったな。これでリュウと一緒に遊べるわけだ。今ちょうどアリンコの大群倒し終わったところだからちょうどよかった」


 なるほど、ゴルムの周りには大量のアリが転がっていりう。

 ちなみにほとんど首と胴体が分かたれている、怖いわ。


「というか多すぎだろう。化け物かお前は」


「いやー、一匹と戦ってたらどんどん合流していつの間にかこんなになってた」


それを殲滅してるんだからすごい奴だよな、と内心で感心していると、ゴルムが首を傾げる。


「んで、何しにこっちに来たの?」


「ああ、もうすぐ飯時だから俺はいったんカルカに戻ろうと思うんだが。お前はどうする?」


「おーもうそんな時間か。じゃあ俺も戻るよ」


 ただの一高校生であり、昼食も親に作ってもらっている身としては、昼食は時間通りに食べるべきだろう。

 それはゴルムも同じなようですぐに賛同してくる。

 そうして俺達は戦闘を切り上げ、城下町へと戻ることにした。





「ほえー、随分癖がありそうなスキルだなあ」


 カルカまでの道をのんびり歩きながら[無刀流]について話していると、ゴルムも俺と同じような感想を持ったようだ。


「今のところは[身体異常]もあるからなんとかなりそうだけどな。[威圧(オーラ)]もかなり使えるし、接近も問題なし」


「素手で戦うのは大変そうだけど、ま、とりあえず戦えるようになってよかった」


 ちなみに[放撃]もアリに対して試してみたがこちらも結構使えそうだった。

 軽減量は5割といったところか。

 スキル値を上げて行けばもっと上昇するんだろう。


「お、やっと見えてきたか。結構遠くまで行って戦ってたんだなー」


 遠くに城がようやく見えてきたあたりでゴルムがのんびり呟く。

 西エリアはノンアクティブモンスターしかいないのでモンスターを無視して歩けるが、もしアクティブだけだった場合この道のりを戻るのはさぞ面倒だろう。

 近いうちに町まで戻れる転移アイテムなどが見つからないものか。


「ん?なんか騒がしくない?」


 ゴルムの訝しげな声に考えを中断する。

 確かにカルカの方角が騒がしいようだ。


「プレイヤー、だよな。なんかイベントでも始まったのか?」


「歓声というより怒声に近い気がするが……。とにかく行ってみよう」


 若干不安になりつつ速度を早める。

 だんだんカルカの人混みが見えてくる。

 皆空に向かって何か叫んでいるが空を見ても何もない。


「いったい何があったんだ?」


 ゴルムが不安そうな声で聞いてくる。そしてようやくプレイヤー達が叫ぶ声が聞きとれる距離までたどりつき……。


「ログアウトさせろよ! 何やってんだ運営!」


「早く外に出しなさいよ! 待ち合わせがあるんだから!」


「こんな不具合があるなんて二度とこのゲームやるもんか! 早く対処すべきじゃないのか?!」


「……は?」


 呟いた自分の声も意識しないままウィンドウを開く。

 あるはずのボタンを探しウィンドウを端から端まで眺め……。


「――ない」


 ログアウトボタンがどこにもなかった。

 公式のホームページでも確認した覚えがあり、ゲーム開始直後でも確かに存在したログアウトボタンがきれいになくなっていた。


「うわ……ゲーム開始直後でβテストもやってないからって、この不具合は流石に不味いでしょ……なんで運営は対処しないんだろう?」


「分からない……。でも、早く対処しないと大事に成りかねないぞ」


 ゴルムの質問に低い声で答える。

 こんな不具合は、現実での金銭的な損害に繋がる。

 これだけ致命的なバグを見逃し、且対処が遅れたとなったら、ゲームの終了すら有り得るだろう。

 とりあえずサーバーを落として全員を強制ログアウトでもさせてしまえば――などという自分でも驚くほどの現実的な考えは、突然響いた笑い声に中断された。


「ふっふっふ。お待たせプレイヤー諸君。君たちが待ちに待った説明タイムだよ」


 男か女か、子供か大人かがわかりにくい、陽気に、けれど落ち着いたような声が響き渡り、嵐のような喧噪が一瞬収まる。

 だがその一瞬を埋めるかのように音の爆弾が破裂した。


「ふざけんな! とっとと出しやがれ!」


「調子に乗んなよこの野郎! 誰のせいでこんな状態になってると思ってるんだ!」


 いつからこの状態なのかは知らないが、散々待たされたプレイヤー達はかなりストレスが溜まっていたんだろう。

 突然響き渡った謎の声に怯むことなく罵声をぶつける。


「よし、ちょっと騒がしいけど自己紹介しとこうか。ボクの名前は……んーそうだな、リリック、とでも名乗っておこうか。君たちをここに閉じ込めた張本人。ちなみにこのゲームの運営さん達は関係ないからあんま恨まないでおくれ」


 リリックと名乗った人物が軽い調子で話を続ける。

 嘘だろ、運営じゃないのか……? 閉じ込めたって一体……? などという不安げな声を聞きつつ俺はリリックの言葉の続きを待つ。


「これは決してゲームの不具合なんかじゃない。ボクが意図的に仕組んで起こした犯罪だよ。君たちは自発的にゲームから出ることはできない。もちろん、外部からの干渉でも無理」


 淡々と紡がれる言葉に軽く目まいを覚える。

 ゲームから出ることはできない? こんなことをして一体何がしたいんだ? 俺たちはどうなるんだ? 様々な疑問が浮かんでは消える。

 隣のゴルムも似たようなものなのか目を見開き虚空を見つめている。


「ただ閉じ込めるだけなんて何も面白くないからね。ゴールを用意したよ。君たちがこのゲームをクリアすればその時は全員がログアウトできるようになることを保証しよう。あ、ちなみにHPが全損したりしても現実には何も影響がないから安心してね。レベルを上げ、装備を整え、ゲームの攻略を頑張るといいよ」


 理不尽極まりない言葉に周囲のプレイヤー達が怒声をあげる。


「ふ、ふざけんなよ! 面白くないだと? お前は一体何がしたいんだよ!」


「そうよ! こんなことして何がしたいのよ! 目的を言いなさいよ!」


 様々な声が浴びせられる中、リリックは耳を貸さずに淡々と話し続ける。


「目的ね。そんな物を君たちに話したところで何の意味もないね。……さあ、ゲームの始まりだ。君たちがこのゲームの中で何を得るのか、楽しみだね」


 謎の声は楽しそうに最後の言葉を紡ぐ。


「じゃあね、プレイヤー諸君。君達皆が英雄だ。いつかこのゲームがクリアされるまで、楽しませてもらうよ」





これがログアウト不可能な世界、Original(オリジナル) Online(オンライン)の始まりだった。




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