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明日に繋がる道

lastエピソード3~過去編、完結~

作者: minoarei

俺と涼子がその場に残されて、二時間が経った。二時間の間に交わした言葉はない。ただ二人とも沈黙を保っていた。その沈黙を破ったのは、俺だった。


「さてと、帰る前に返さないとな。」

「え?」

「結衣に返す物があるんだ。」

「返す物?」

「ああ。5年前に結衣の両親から形見として、貰った物があってなそれを返そうと思うんだ。」

「それで、その返す物ってなに?」


健一は、自分の首から提げていたペンダントを外した。


「それって、いつも着けてたペンダントだよね。それが、形見なの?」

「ああ。これ実は、結衣が中学校に入ったらプレゼントするつもりだったらしいんだ。このペンダント結構高い値段だったんだって、それで貰ったと言うより預かったと言った方が正しいけどね。」

「………………。」

「何処に置こうかな?花に絡ませて置こうかな。それとも、こっちの小さい地蔵に提げようかな。どうしようかな?いや、ここに置いておこう。」


俺がペンダントを置いた場所は、『綾川家之墓』と彫られた下に置いた。ここなら、綾川家の皆が見れるはずだ。俺は、最後に心の中で『結衣、もう一度明日来るよ。じゃあな。』そう言った。


「さて、涼子これからどうする?」

「皆は先に帰っちゃったし、うーん。………そうね、そう言えば明日はお父さんとお母さんの結婚記念日だから、何かプレゼント買いに行きたいんだけど、ちょっと付き合ってくれる?」

「良いよ。それで、結婚して何年目なの?」

「確か丁度20年目だったかな?」

「だったかなって、知らないの?」

「ほら、私って養子なわけだし、聞いてないから。」

「いや、結婚記念日って知ってる時点でおかしいでしょ。」

「あ~それは三穂に聞いたから。」

「…………電話して聞いたら、義姉(おねえ)さんに。」

「あっ、それもそうね…ちょっとごめんね。」


そう言って、涼子はスマホを取り出して、慣れた手つきで操作していく。


「結構慣れたね。」

「まあね、健一に教えて貰ったしね。」

「それもそうか。」

「あっ、三穂?」

『そうだよ~どうしたの~涼子?」

「ねえ、三穂?お父さんとお母さんって結婚して何年目なの?」

『えっ、結婚して明日で20年目だよ~。それがどうしたの?」

「うん、実はお父さんとお母さんに何かプレゼント買ってあげようかなって思ってね。」

『なるほどね、私はもう準備してあるよ~。涼子は何にするの?」

「まだ、決めてないけど、一応候補としては、洋服とかかな。三穂は?」

『私はね、ナイショだよ☆』

「え~、教えてくれても良いでしょ?ねえ、三穂。」

『だーめ。自分で考えてね~。』

「ちょっと、三穂。ねえ、待って…………切られちゃった。」

「……………。」

「ねえ、健一?何買えば良いと思う?」

「うーん。プレゼントする物はなんでも良いと思うよ。プレゼントってのは、心がこもっているものなら、なんでも平気だよ。」

「それで、何買えば良いと思う?」

「そうだな。無難なのは、洋服とかかな。」

「やっぱり?」

「ああ、俺も何か買わないといけないし。」

「誰に買うの?」

「莉沙姉と結香が明日誕生日だから、何かプレゼントしようかなって思ってさ。涼子がいて、丁度良かったよ。」

「どうして?」

「いや~、女の子の洋服ってどんなのが良いのか分からないからさ、女の子の意見が聞きたかったから。」

「なるほどね。それに私も丁度良かった。お父さんの洋服どれが良いかなって思ってたところだし、男の人の意見が聞きたかったから丁度良かった。」

「お互い様だな。」

「何処の店に行くの?」

「そうだな…あの店しかないかな。」

「あの店って?」

「いつも行ってるあの店だよ。」

「あの店ね…」


そんなわけで、俺と涼子が向かったのは、日本で有名な服の専門店だ。名前は、隠しておく。


「さて、何にしようか?」

「う~ん、そうだね。最初は、お父さんの服を買いたいかな~。」

「そうなると、奥の方かな。」

「そうね…さっさと行きましょう。」

「ちょっ、先に行くなって。」


俺は、先に行く涼子の背中を追っていく。着いた場所は和服が中心に並べてあるコーナーに着いた。


「さて、どれにしますか?」

「う~ん、まあ、この辺の一応全部見てから決めるよ。」

「まぁ、ゆっくり決めな。」

「ねぇ、健一はどんな感じのが良い?」

「そうだな…お父さんって仕事から帰ってくると、着替える人?」

「うん、着替える人だよ。」

「そうか。この辺に丁度良いサイズのがあると思うよ。」

「そうなの?」

「うん、俺もたまに来て見るぐらいかな。」

「健一は莉沙さんと結香ちゃんに買っていかないの?」

「涼子が、選び終わった後で良いよ。」

「時間掛かるけど平気?」

「平気だよ。」

「あ………。」

「どうした?」

「ううん、なんでもない。」

「そっか。」


涼子は頬を赤くして服を選び始めた。俺も涼子の隣で、適当に服を見ている。数十分もしないうちに、選び終えたのか、俺に選んだ服を見せてきた。


「これで、良いかな?」

「お、良いんじゃない。」

「そう?」

「うん。」

「じゃあ、次はお母さんと莉沙さんと結香ちゃんの服を選びに行こうか?」

「そうだな。」


俺と涼子は並んで、洋服売り場に向かう。


「なんか変な感じだな。」

「あはは……それもそうだよね…女性用洋服売り場に居ればね。」

「そうだな…まぁ、さっさと選ぼうか?」

「そうね…じゃあ、お母さんのからで良い?」

「ああ、構わないよ。」


涼子は、選びながらふとあることを尋ねてきた。


「去年の誕生日には、何をプレゼントしたの?」

「ネックレスだったかな。」

「何円ぐらいの?」

「3~5万円だったかな。」

「へぇ~そうなんだ。」

「あれ、驚かないの?」

「うん、慣れちゃった。」

「そっか。」


涼子は、しばらくして洋服を選び終えて


「健一、選び終わったよ。」

「それじゃ、莉沙姉と結香の服を選ばないとな。」

「それで、どんな感じの服が良いの?」

「そうだな…………よく分かんないんだよね。」

「分かんないって、無難にいくならワンピースが良いと思うけど。」

「それもそうか。」

「それで、サイズは分かってるの?」

「ああ、お袋から聞いてあるから分かってるけど……。」

「そのサイズ教えてくれる?」


俺は、涼子に言われた通り莉沙姉と結香のサイズを教えた。それから、涼子は、数十分で選び終えた。


「選び終わったよ。」

「お、サンキュー。」

「さっさと、レジに並ばないとね。」

「ああ。」


俺と涼子はレジに並んで会計を済ませると、店を出て、帰宅する。帰宅途中で、俺は、アクセサリーショップを見つけたので、涼子を入り口に待たせて、店内で、ハートの形をあしらったペンダントを購入した。それから、涼子の元に戻ると


「何買ったの?」

「秘密だよ。」


涼子は、首を傾げていたが、直ぐに俺の腕に自分の腕を絡ませた。

それから、数十分歩いた所で涼子の家に着いた。涼子の家は、今年の三月に建て替えたばかりで、まだ新しい印象を受ける。


「いつもごめんね、送ってもらって。」

「別に構わないさ。」

「……………。」

「……………。」

「そうだ、涼子、これ、お前にプレゼントだ。」

「………あ、ありがと。ねぇ、開けても良い?」

「ああ。」


涼子は、受け取った袋を開けると、


「これ、ペンダント……。」

「あ、ああ。それ似合うと思って。」

「ありがと。」


そう言って、涼子は目を瞑った。唇を尖らせて。

俺は、そっと、涼子の唇に自分の唇を重ねた。いつもより、長めのキスをした。


「なぁ、涼子。」

「ねぇ、健一。」

「涼子からどうぞ。」

「いやいや、健一からどうぞ。」

「いやいや、涼子からどうぞ。」

「いやいやいや、健一からどうぞ。」

「………その、えっと、涼子。」

「………は、はい。」

「将来俺たちの間に、子供が出来たら、その、えっと。」


「もし、女の子だったら。」

「女の子だったら?」


「女の子だったら───ゆいって、名前を付けたいんだけど、良いかな?」

「私も、健一と同じこと思ってたよ。」

「涼子………。」

「健一………。」


俺と涼子は、見つめ合って、もう一度お互いの、唇を重ねた。今度のキスは、先程のキスより長めのキスをした。



俺は、涼子と一緒なら、必ず二人で幸せな家庭を築いていられると思う。もう、大切な人は失いたくないから。必ず涼子と未来の家族を守っていこうと改めて誓った。

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