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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
8月12日から18日まで

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8月13日梅雨ちゃん飼育日誌3・銃と妄想


ペットを側に置き、可愛がる余裕がある事の平和さ。

それを感じられる町民がきっとたくさんいるから。

この町は優しいのだろう。



 十三日夕方から……晴れ




 俺の部屋に連れて来ても、箱から出ようともしなかった子猫は、何故か、その日俺の部屋で一日を過ごしたらしい。部屋を出たのはトイレの時だけ。ちゃんと躾の行き届いているだと言うのは、素晴らしいが。

「覗きに行くと出て来てるんだけど、見るとあのキャリーケースに入っちゃうのよね」

 葉子さんも再三、日中、足を運んだらしく、そう報告してくれた。

「餌は食べてますか?」

「缶詰は残していたわよ。入れ替えたら食べていたけど」

「え?」

 つまり俺が入れたエサは気に食わないから食べない……そう言う事か?



 部屋に戻ると電気の付いていない部屋に、キラキラとした緑の瞳が浮かんでいる。

「ちゃんと食えよって言ったのに」

 電気をつけると、運ばれて来た時の箱に戻ってしまう。きっとすぐにでも運んでもらって、家に帰りたいと言う気持ちと、慣れた臭いが充満していて安心できるからだろう。

「お前は俺が嫌いか?」

 返事などないのにそう聞いてみる。

 嫌われるような事をこの猫にしていないが、俺が『酷い』事をして生きてきたのが、何処かしら伝わるのかもしれない。

 今までしてきた一番酷い事と言えば……

「思い出しても仕方ないか」



 俺はある時、飼われた先で銃を握らされた。

 その種類や、分解から組み立て、照準の合わせ方から、マトモに撃てるまで、訓練を受けた。そうしながら山道を走らされたり、格闘技の基本を学ばさせられた。

 そして、人を傷つけ、奪う事を繰り返したあの日があるから、自分の命はここに在る。

 弱肉強食と日本では簡単に言うけれど、牙を研ぎ、淡々と人を食い殺す犬になったが最後、一生、その影が付いて回る。それを考えずに銃が振り回せる者だけが、生き残る。

 それが嫌なら、自分の頭に銃を突きつけ、一発ぶっ放せば楽になれる。

 何度もそうしようとして、でも、と、俺は考えたのだ。



 明日になれば姉さんが来てくれるかも知れない、明日でなければ明後日には何かが起きるかもしれない。ピアノで養った、想像力だけで俺は正気を保った。

 人の足音や割れた茶碗の音が、絶対音感によって俺には音楽となる。

 その音楽と組み合わせながら、太陽を見ているとその光が矢に変わる。その光は俺の鎖を焼いて逃げ出したり、いつも牢の門番をする老人がマントを翻して正義の味方に化けたり、それは多種多様に思いつく夢で遊ぶ。



 もう……これはこれで気が狂っていた域かも知れない。



 そうそう、ユキさんへ暴走気味の妄想が浮かぶのは、この時に培ってしまった防御反応であって、決して彼女への強い下心だけが生んでいるのではない……と言い訳しておこう。うん。



 つまらない事を考えているうちに、梅雨ちゃんが出て来ていて、餌を食べていた。

 置いてある餌は二種類。固形ドライ缶詰ウェットだ。

 缶詰に入っている方が、缶を開けた時に漂う強い匂いと言い、見た目と言い美味しそうに思える。だが残っているのはそちらの方で、彼女はドライを口にして、水を飲んだ。

「美味しそうな方を食べればいいのに……」

 葉子さんが入れたので、いつのかまでわからないし、お腹を壊してもいけないので、ウェットの方を入れ替えようとして手を伸ばす。すり寄っては来ないが、逃げない事にホッとする。

 その時、ふと思う。くんくんと嗅ぐと、あれほど良い匂いがする餌だが、もう香りを失っている。

 そして俺は時計を見る。



「こっちは少なめでいいのか?」

 俺は清水先生が持ってきた荷物を漁った。中に正体不明のタッパを見つける。中には小さな紙とスプーンが入っていて、『缶詰は中のスプーンで二杯、それ以上は食べません。残りはこれに密封して冷蔵庫へ。食べる時に暖めて人肌にして出して下さい』。

 どちらの先生が書いた文字なのか、綺麗で達筆な文字でそう記されていた。梅雨ちゃんは匂いに敏感で、少食なのだろう。缶詰の残り物はお腹が空いても食べないようだ。

「ごめんな、知らなかったんだよ。入れ替えるから貰うよ」

 そう言って缶詰用のエサ入れと水入れだけ引くと、やっとわかってくれたの? と、言わんばかりに、



 なぁ



 と言って、目を細めながら俺を見上げた。






梅雨ちゃん借りっぱなしです。

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