悠遠中です【うろ夏の陣】
溺レ逝ク者。
お願い。行きたくないの……
伸ばされる手、握り返せず空を掴む。
どうにもできないの。
助けて、助けて。
優しく笑う、銀色の髪に赤い瞳の少年に、銀色の髪に金の瞳の少女。
トプンと沈んだ記憶に、もうそれは失われてしまいます。
沈んだ記憶を探して当所なく彷徨います。
聞こえてきたのは懐かしい女性の声。
ねえ、
覚えておくのよ、この色を。
その手に載った赤いネジ。
一体どこで見たんでしょう?
遠い記憶と、近い記憶。
私達が自由になる方法は一つだけ。
貴女がもし自分を失ってしまったら。
もしもの時は『死』をもって、終わりにする覚悟を。
貴女にそんな日が来ない様に。
私は全力で貴女を守ると約束するけれど。
ねえ、ごめんね、
今日、清らかな雪が降り積もるこの日に、
産まれなくてよかったって。
貴女がいつか思わないと良いなって思うの。
あの人喜んで、ミルクを買いに行ってくれたけれど。
その間に、私達はうろなから去りましょう。
ごめんね、
ごめんね、
貴女を誰より想う人を側に置いてあげられなくて。
いつか貴女もこんな思いをするなら……
でも生まなければ良かったなんて口が裂けても言えないから。
あの人を巻き込んでしまった事が申し訳ないけれど。
あの人が生きてる限り、私はソレにはならないから。
でも。
もしもの時は、このネジだけが私達を解放してくれるはず。
私達は巫女である前に、人間で。
本来、人柱となるのは己の意志に置いてだけ。
それでも。
誰かの傀儡になるのなら。
人間としての尊厳を持って『死』を選ぶ事も必要だと知っていて。
ああ、誰かの声がします。
懐かしい声が飲み込まれます。あのご老人の作った闇の中、奪われゆく何がしか。
人間よりちょっと逞しげだったり、変わった姿をしたヒトビトが、よくわからない空間に漂っています。
「ふふ、こんなに沢山いるんだ」
わたしは呑気に暗い闇の中を楽しげに跳んで、意識のない彼らを覗いたり見て回ったりしています。
「こんな可愛い子もいるのね」
そこには三人の女の子がいました。
一人は白銀みたいに見える髪に緑色のメッシュを入れている、快活そうな女の子。
一人は羨ましいほど真っ黒な髪の毛が、ひざまで伸びている大和撫子のような女の子。
もう一人は柔らかそうな栗色の髪の毛を腰まで伸ばした女の子。
三人はそっと手を繋いでいて、明らかに周りのヒト達と雰囲気が違う気がします。
彼女達の祈りは一つで、橋となりますが、行く宛てもなくその光が四散していきます。
『帰りたい。彼の元へ……忘れないよ、零音君……』
三つの声がキラキラと美しい和音となります。
彼女達はきっと、きっと帰れるように。
わたしはただ祈る事しかできません。
わたしの帰る場所はどこでしょう?
もう。
忘れてしまいました。
思い出せるのは優しいけれど、辛い言葉。
誰かの傀儡になるのなら。
人間としての尊厳を持って『死』を選ぶ事も必要だと知っていて。
まだたくさんあったかもしれませんけれど。
もはや、わたしの道は、一つだけしか思い出せませんでした。
三衣 千月 様 『うろな天狗の仮面の秘密』 より、前鬼 後鬼 小角様 お借りしております。
梔子様『うろな町は良い所だけど俺の周りは修羅場だ』より、十六夜零音君、狐ノ派静月さん、芝姫凛さん、桜咲呉羽さん、イメージでお借りいたしました。
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