制作中です【うろ夏の陣】
少々、鬱ってます。
日付の感覚が薄れだした時、家の扉を叩く音がします。
手作りのカレンダーを見て、二回ぐらい夜が来てあけたのを足して、たぶん七日かな? などと思いながら、タカおじ様が扉の板にある節につけてくれたドアスコープを覗きます。私は慌てて扉を開きました。
「無白花ちゃん! 斬無斗君!」
二人は西の山に住む、おっきなねこさん……猫夜叉って言うらしいんだけれど……です。私は凄く嬉しくて飛びつきかけたのですけど、ふと、気付いて、
「あ、戻ってる」
と、呟きます。
斬無斗君、こないだ会った時、色々あって。私でも抱きしめられる様な少年サイズになっていたのです。私に台詞で何を言いたいか分かった無白花ちゃんが、静かに、
「ぼひゅっ、って、戻った」
と言うんです。
「え? ぼひゅっ?」
「ちょ、無白花、その表現無いんじゃない!?」
「そうか? 雪姫、ほんとの事だぞ」
「無白花!」
表情の少なめな無白花ちゃんが僅かに笑っています。私もつい笑うと、斬無斗君はごほんと咳払いをしてから、
「ね、手を出してくれるかな?」
私は笑いを収めて言われた通りにすると、彼は私の手に触れない程度の位置に自分の手をかざし、
「やっぱり『瘴気』みたいなのが溜まってるよ」
「母さんが心配していたが、雪姫はそんな事ないと思っていたのに……来て良かったかもしれない」
斬無斗君から何だか暖かい感覚がします。
ちょうど手袋ちゃんを抱っこしたような、癒される感触です。
「雪姫、何か悩み事でもあるか?」
「ううん。大丈夫」
無白花ちゃんと斬無斗君が来てくれたから、だいぶいい感じなのでそう答えます。
「そうか。普通なら良いんだが。ちょっと色々、面倒が起りそうな感じなんだ」
「疲れるは憑かれるに通じる?」
葉子さんに言われた言葉を思い出して言うと、
「そう言う事だよ。ねぇ、入っていい?」
斬無斗君に言われて、二人を中へ通します。
「二人が来るってわかっていたら、何か甘い物でも焼いておけばよかったなぁ」
「え。雪姫ぃ、甘い物作れるの?」
「簡単なクッキーとか、ケーキなら」
「じゃあ、今度焼いてくれないかなぁ。でも外と中の感じが違うね、ココ」
「タカおじ様……えっと町でお世話になってる人が、綺麗に内装やってくれたから」
ハーブ茶を入れて出すと、くんくんと二人は匂いを嗅いでから口にします。冷たく甘めにしたので飲みやすかったみたいです。
一息ついた所で、無白花ちゃんは四角い箱から、キラキラした白い小石を三つ取り出します。
「こないだ作り損ねたネックレス、作ろうと思ってきたんだ。『母さん、聞こえる?』」
無白花ちゃんが大切にしていたネックレス、私が壊してしまい、斬無斗君のも黒くなって壊れてしまいました。
二人のお母様が、私にも手伝えると言ったので、今度三人で作る話になっていたのです。無白花ちゃんと斬無斗君にはお母様の声が聞こえているようです。
「これが『核』になるんだ、これを取りに行ってた時に斬無斗が切れて……」
「そ、それは言わない約束だよね?」
こないだ斬無斗君が小さくなったあの日の話を暗にし出したので、彼は無白花ちゃんを慌てて止めます。
「でも何で、三つなのですか?」
私が首を傾げると、無白花ちゃんが嬉しそうに、
「母さんが雪姫の分も作っていいって。……どうした雪姫? 嬉しくないのか」
「……また壊れたらイヤだなって思ったんです」
「まだ気にしているのか?」
「だって、友達の証に受け取ったようなものだったから」
「これは持ち主を守る為に在るんだ。だからもし壊れても気にしなくていい。こないだも雪姫を守れたんだから、アレは使命を果たしたんだ。『さ、手を出して、斬無斗も』」
不思議な事に無白花ちゃんの言葉なのに、そのお母様の声に聞こえます。
右手に『核』を握り、三人で手を繋ぐと、不思議な感覚がします。
「『斬無斗、飛び出さないで。巫女はもう少し核の冷たさを感じるように。無白花は……』わかってる母さん」
「俺は聞こえてるよぉ、無白花ぁ」
どのくらいそうしていたでしょうか?
お母様が私を『巫女』と呼ぶ事に何でだろうと思いながら。
そっと三つの核を机に置くと、だいぶ輝きが変わって来ています。
無白花ちゃんのは銀色に、斬無斗君のは黒く、私のは赤く。
「じゃ、仕上げ、行くね」
斬無斗君が自分の核を手に取ると、
「ソノ鋼の如き破妖の姿をここに示セ。我は汝、汝は我であり、ある時は我が身を守り、ある時は我が癒しとなり、ある時はすべての邪を排する刃となる姿を」
そう言った途端、キラキラしてはいたけれど、何の変哲もなかった核の形が変わります。
「すごいねぇー、こないだはただの雫型だったのに」
「黒なのに、すごく綺麗な色です」
「なんか、カッコイイな斬無斗の……」
「あげないからね。無白花」
ペンデュラム、と言うには少し細長い鋭い剣を思わせる部分に三日月のような飾りが三つ連なっており、綺麗な丸い石が輝いている結晶になったのです。
「ほら、物欲しそうにしてないで、自分のやってよ」
「わかってる。母さんも斬無斗も」
無白花ちゃん、お母さんからも急かされたようです。
「その月の如き破鬼の姿をここに示セ。我は汝、汝は我であり、ある時は我が身を守り、ある時は我が癒しとなり、ある時はすべての邪を排する刃となる姿を」
言葉はすぐに効果を示し、形を変えます。
無白花ちゃんのは白がかった銀色で、斬無斗君のと少し違って細い円柱の先を鋭く研いだ形に、三日月は一つだけ、綺麗な丸い石の位置や数も違います。
「無白花ちゃんの綺麗、とっても似合うと思うよ」
「うん、無白花は何着けても似合うけどね」
「二人とも……さあ、次は雪姫の番だ」
私は石を取ると、首を傾げます。
二人の言っていた言葉はだいたい覚えてますけれど、私が口にするには、なんか違うよね?
「うーーーーーーーーん」
「雪姫のが出来上がらないと完成じゃないから、頑張ってくれ。『思いついた言葉を言ったらいいのよ?』」
「君ならできると思うよ」
無白花ちゃん、そしてその口を通してお母様の、斬無斗君の言葉に、私は思いついた言葉を口にします。
「大切な友に。守護の翼を下さい」
赤い核が十字架のような結晶になり、月を宿します。その途端に、二人の銀と黒の結晶も輝き、小さな蝶の形が宿りました。
ハッとしたように無白花ちゃんは斬無斗君の腕を引っ張ります。
わ、わかってるよ、と言いながらも慌てる斬無斗君と、無白花ちゃんは自分の飾りを私の赤い十字架の上に翳すと、
「「大切な友に。守護の翼を下さい」」
口を揃えて言うと、目も眩むような閃光が三人を包み、収まった時には、私の十字架にも真っ赤で小さな蝶が輝いていました。
「出来た。綺麗だ。ちょっとビックリしたが」
「え?」
「最後は自分の為に働くような台詞を言うんだよ。君が言ったのは僕達を思っての言葉だったから、力の殆どが僕達の方に来ちゃったから、同じ台詞でその分を返したんだよね」
「『いい具合で混じったし、良かったのではないかしら?』ってさ」
無白花ちゃんが持ってきていた鎖で二人が首に下げると、白銀の髪が、そして瞳の色も黒に見えるようになります。それは自分達の意志でも左右できるようで、付けたままで黒に変えたり、銀色に戻して見せてくれました。
そして私が十字架を眺めていると、斬無斗君が、
「つけてあげるよ」
そう言って首に下げてくれます。でも髪や目の色は変わりませんでした。その時、斬無斗君が首筋を撫でたので、ひゃっと変な声が出てしまいました。
「よかった、傷が残っていなくて」
前に会った時に私を傷つけたのを、心配してくれていたようです。無白花ちゃんはちらっと彼を見ながら、
「雪姫のはとにかく、守りの力を強化したいけれど、馴染まないな」
「だって、彼女は巫女? らしいけど人間だもん。まずそれが馴染むのに時間がかかるんじゃないかなぁ? 前のは無白花が使い込んでいたし、母さんの力も借りて作ったから……」
「うん。母さんもそう言っている。これが雪姫の守りを完全に発動する前に何事もなければいいのだが」
「きっと大丈夫よ」
そう答えましたが、無白花ちゃんは暫く何か考え込んでいる様子でした。その時に巫女って何? と聞こうかと思いましたが、その表情に聞く事が出来ませんでした。
斬無斗君はただ嬉しそうに、出来上がった飾りを撫でたり、光に翳したりしています。
「でも前作った時は無白花、キツそうだったけど。大丈夫なの?」
「ああ、雪姫と斬無斗の力も借りたし。首にかけていると、力が溢れてくる感じがするな」
「ねぇ、無白花、見て見てぇー力を込めると形が変わるよ」
「ん? ああ、斬無斗のと同じ形に……雪姫とも同じ形になる。ただ安定はしないな」
私は力の込め方なんてわからないので、ただ不思議だな、綺麗だなーっと思って二人を眺めていました。その時、ふと思い出して、
「そうそう、二人のイメージした絵があるの。見ていく? 気に入ったら持って帰って。ほらこれ」
「え、僕こんな可愛くないよぉ? もっと格好いいって!」
「え? だって無白花ちゃんかわいいし、だったら双子の斬無斗君もかわいいんだもの、当然でしょ?」
「いや無白花が可愛いのは当たり前だよ! なんか照れた時とかすごく可愛いよねーっ!!」
「うんうん、無白花ちゃん可愛い!」
「へぇ………仲良くなったな……」
「「あっ」」
私はそこに差し迫っている影に、気付く事もなく、友達と居られる時間の幸せをただただ楽しんでいました。
妃羅様『うろな町 思議ノ石碑』より、無白花ちゃん、斬無斗君、お母様、お借りしてます。
ちらっと手袋ちゃんの名前ありです。
今回作ったネックレス(ペンダント)(うちでは結晶)について、
妃羅様より、『付けると毎回黒になるわけではなくて人に警戒、発見されないようにするための幻』との文言をいただきました。
その為、それを付けたまま、色を変化させる行を追加してます。
その他、巫女と言う単語など、先に閲覧いただいた方は見ていただいた時より細かく変更してます。大きな影響はないと思われますが、ご確認ください。
以上です。
妃羅様のお子様を使用される際、髪や目のお色についてはご確認お願いいたします。




