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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月30日

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488/531

手当中です(八雲病院にて)

場面は病院に行ったタカと葉子の方へ。

タカ目線になります。


llllllllllllll







「大丈夫なのか、八雲さんよ」

「これくらいどうって事ないさね、寿々樹がよく面倒を見てくれたしね」

「おだてたって治らないんだからなっ! 診察終わったならこれ以上、立ち上がらなくてイイから、ねーちゃんは。な? 無理すんなって。後は俺がやるから」

「ここではそう呼ぶなと何度っ……」

「あぁー? もうイイからねーちゃ……八雲センセーは座っててくれってぇーの」

 八雲さんが葉子さんに用意しようとした点滴を、寿々樹が奪ってやがる。リーゼントに凶悪顔、男に対しては口も良くはないヤツだが、心根は優しく曲がらないヤツだ。それも八雲さんには人並ならぬ恩義を感じてるんだ、それが数日前に意識を失うほどの状況にあったって言うんだかんな。その態度の意味もわかろうってもんだ。

 八雲さんは寿々樹の背を見て苦笑して、用意してあった車椅子に座った。ベッドに横たわった葉子さんが、

「ごめんなさいね、そんなに大変な事があったと言うのに診て貰って」

「大丈夫さよ。今はアリス以外、入院患者も取ってないんだわさ」

「葉子さんみたいに、安静に寝ててくれる患者ならイイんだけどなぁ?」

 寿々樹は八雲さんをちらりと見てから、葉子さんのベッドに近寄り、テキパキと滴下を始める。

「あら、私も決していい患者ではないわよ? 帰ったらみんなご飯を待っているし、洗濯も掃除も……」

「っ……安静だっつーの。せめて今日くらいは。っんと、女は強ぇなぁ」

「その言葉は褒め言葉として取っておくわね、寿々樹ちゃん」

「ねぇちゃんじゃないけど、ココでちゃん付けはやめてくれねぇか? 生徒に聞かれたら示しがつかねぇだろ?」

「だって今更、鈴木先生って言うのもね。それに冴ちゃんが賀川君の事『あきらちゃん』って呼ぶから……」

「やめてくれよ。アホと同等かよぉ……あいつらは姉弟だから仕方ないかもだけどよ」

「ふふ。わかったわ。じゃ鈴木先生、お願いね」

「あいよ。しかし葉子さん、骨は折れてなくても、すげぇ痛いだろ? すぐに痛み止め効かせるから」

「でも、あの人、指も腕も太いから。桜さんが振り回していた棒もだいぶ受けてくれていたみたいなの……でもきっと死んでいたって、痛かったでしょうに、ねぇ……ぁ、ご、ごめんなさい……柄にもないわねぇ」

 いつまでも心寄せる相手に、再び会えた事は嬉しくとも、別れの寂しさが募ったのか葉子さんが泣き出してしまう。寿々樹はどんなに年がいってようと、女の涙にゃ弱ぇから、珍しくおろおろした顔をしながら、チリ紙を葉子さんに渡して、

「と、とにかく今日くらいはちゃんと休ませろよ? 小父貴」

「わかってらぁな。葉子さん、電話で家に残ってる非番の奴らに洗濯はさせてるし、掃除はこないだ大掃除しただろ? 食事はカトリーヌが昼飯くらいならってこなしてやがるから。なぁ夕飯は出前にしようや。正月も近いし、たまにゃ良いだろうがよ」

「すみません……タカさん」

「さぁ痛みにブロックが完全にかかるまで、少し眠ると良いさね、葉子。疲れてるようだわさ」

「かしら……ごめんなさいね。じゃ、少しだけ」

 そう言って葉子さんは目を瞑り、眠剤でも入っていたのか深い息をつき始める。はらりと伝う涙が彼女の愛の深さを物語っており、皆で何とも神妙な気持ちになった。

「それにしても土御門がねぇ」

「死体を動かして働かせるなんざ、とんでもねぇ奴らだ」

「昔行った戦場で、そう言うのを信じてる民族がいたけど、実際に見た事はなかったさ。本当にあるんさねぇ。足がよくなったらその木を見に行きたいねぇ。前田、案内してくれるさね?」

 そう言いながら八雲さんは椅子に座り、膝をさする。包帯で隠してはいたが大腿部から足首まで、酷い火傷である事はオレでもわかった。説明聞くと普通の火傷だって怖いものであるが、それ以上に薬品の火傷は恐ろしいらしい。

 八雲さん本人は『足を切り落とさず済んださ、大丈夫さね』と、笑って平気で言う。だがその隣に立つ寿々樹の顔を見れば、笑い事では済まされない状態で、今も安静にしているのが望ましいのが読み取れる。

「ああ、二月のユキの事が終わったら、必ず、皆で行こう。しかし寿々樹の姉、か……何度か見た事はあっけど、可愛い嬢ちゃんだったのに。八雲さん追っかけてたっけ……か。時間はそうも人を変えっちまうのか」

 紗々樹ちゃんは姉とも慕っていた八雲さんに劇毒物を投げつけ、去って行ったという。薬品が危険なコトに気付かず、手早い処置がなければ、八雲さんはココにいなかった。実の弟にあたる寿々樹のやつも二次被害で最悪、命を落としていたそうだ。

 そんなひでぇ事、身内にするとはそれほどに恨みが深いって事か。

「で、その紗々樹ちゃんが賀川を欲しがっている、だと?」

「……紗々樹の研究対象、なんだわさ」

「研究対象? あんなクスリは薬じゃねぇ。危険な薬物だ。完全に人を玩具にして……こんなのに長く人間に耐えれる訳がねぇんだ……馬鹿げてるのに……」

 葉子さんから離れ、机に乗せていた資料の山に寿々樹が握った拳を置く。その山は全部、今まで八雲さんの頭の中にしかない賀川のカルテを、寿々樹に見せる為に書き出した物だと言う。

「あの、役に立ちそうにないアホが、何十万、いや何十億に一人の『逸材』だったなんて……」

「前から知ってたのかよ、八雲さんよ」

「すまないね。前田。病歴や治療歴は個人情報だ…………それにトキの存在を消されない為に詐称するしかなかった………なんてね。カッコつければそういう事も言えるけどさ」

 八雲さんは疲れたように眼鏡に片手をやりながら、自嘲的に笑い、

「本当は違う、あの子がトキにやった事が消えるなら、消して……全部を隠してしまいたかった、何もなかった事に……トキからすべてを消せたら、紗々がやった事、全て何もなかった事になる気がしていたさ。そんなコトあるわけがないのに。これじゃ医者として失格だわさ……」

「ねーちゃんは悪くねぇ!」

「寿々……」

「とにかく……あのアホの症状は現在安定してる。体に入れられた薬がねぇちゃんの指示で作った、俺の調薬と相まってイイ方に作用しているといっていい。それもイザとなればユキちゃんを守る為に、痛みを感じずに戦える『人間兵器』……これほど適任はいない」

 オレは確かに望んだ……ユキの傍らを守る者の存在を。ヘタレは要らないのだと。だから今、オレは賀川のを鍛え上げ、仕上げている。しかし『兵器』などにしていいとは思わねぇ。

 ニコニコと笑いながら人畜無害と言った顔で、運送の仕事に勤しむあの男。それをホヤホヤと目で追うユキ。寄り添う密着度は気になるものの、二人が離れられない存在であるのは確かだろう。

 しかし皆、まるで絡め取られる様にこの件に関わっていく。何の因果か、これも業なのか……あの赤い刀を見た時から、胸に下げたお守りの重みが増しているのを感じる。

 正月にでも書き初め代わりに一筆書いておくか、などと考えながらオレは頭を掻いた。

 その時、何か大きな気配が、この地下の病院に降りてくる気配を感じ、それに気付いた寿々樹との間に緊張が走る。

「正月も前に、何度もうるさいやつらだな。オイ」

 そう舌打ちをした時、見た事がない程に煌びやかな着物を着こなした女とオレ達が知る人物とよく似ているが、更に二回り程大きな御仁が扉を開けやがったんだ。


lllllllllllll


『以下1名:悪役キャラ提供企画より』


『鈴木 寿々樹』吉夫(victor)様より。

お借りいたしました。

問題があればお知らせください


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