片付中です
ユキ、ふきふき。
今日は珍しく「お片付け」をタカおじ様に頼まれて、母屋の二階にある部屋に籠っています。
この部屋、十年以上、風通しと簡単な拭き掃除しかしていないのだとか。窓を開け、床の埃を掃除機で吸い取り、雑巾拭きをしてまた掃除機を繰り返します。
6畳の畳部屋。布団のないすのこベッドの木枠、埃がした本の並べられた机。
それから古い地図や何だか小難しい公式やらが、びっちり書かれた紙切れがたくさん壁に貼られていました。紙切れは全て剥がして、紙の箱にしまいました。
机の引き出しにでも入れて……
いれて、
いれて、
いれ、…………られないよぅ。
箱が大きすぎて。
仕方ないので、他に何か代わりになるモノはないか、引き出しを漁ります。
立派な製図道具に難しそうな科学の本。
「あれ?」
はらり、と、一通の封筒が落ちます。引き出しの天井にセロファンで貼られていたようです。黄色く変色したテープは、既に粘着力を失っており、枯葉のようにぱりぱりでした。
とりあえず封筒は机の上に置き、箱を探して詰め替えてしまいました。
封筒の事は忘れて、ある程度綺麗になったら、家具もハタキを掛けて、拭いて。掃除機。
押し入れの布団は葉子さんが引き取って行きます。
その後、お昼ご飯もいただいて、夕暮れになるまで私はずっとその部屋に居ました。
だいぶかかりましたが、古い大きなエアコンも大きな音を出しつつ無事稼働し、部屋を涼しくしてくれます。窓の外はトラックの駐車場や資材置き場が見えます。後、窓の桟と隅を拭けば終わりです。
葉子さんは布団をベッドに敷きはじめました。それを手伝います。
「この部屋、息子さんの部屋なのよ?」
「あ、タカおじ様の?」
刀流さん、仏壇に居る人、母がたぶん好きだった人。
「布団まで綺麗にしておけって、何する気かしら? ここを誰かに使わせるなんて考えられないし」
葉子さんにも急にここを片付ける理由はわからないようです。
からから、っと軽い音がして、誰かが出て行きます。
足音だけで誰とわかる葉子さんは、
「あら、タカさんがもう帰って来ていたのね。出て行ったわ」
と、呟きます。夕暮れの光もまだ薄い頃。帰宅が早めです。
「あら、帰って来た。迎えに出るわね?」
葉子さんは私に枕を任せて行ってしまいます。その後何か話す声がして、誰かが上がってきます。
「悪いな、ユキ。掃除させて」
「いいえ、いいんですよお、ただもう少しかかりまぁーーーーあ、れ?」
その大きな背中の後ろには、やはりそれなりに体格のいい男性がいました。お祭りから約一週間ぶり、でしょうか?
「だ、れ? 賀川さん?」
そこに居たのはもう顔を覚えた筈の彼でした。
ですが、彼の顔はいつも人と会う度に、微笑むと言うのに、まるで能面の様で。
…………怖い。
はじめて彼をそう思ったのでした。
愛想をふりまかない賀川でした。




