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夜・説明中です


ユキの落ち着き先、タカの自宅。

騒がしい。

 








「今日からここに住む、ゆき、だ。俺の孫であり、娘になる。よろしく頼むぞ」

「隠し子? 孫? は、白髪……」

「し、白いし唇が……」

「付き合ってる人、いるんですかっ」

「染めてるのか! 流石はおやっさんの娘っ! 気合入ってんねー」

「気味悪くねえか、目が赤ぇ」

 突然現れた私を見て、お兄さま達が騒ぎます。興味半分、冷やかしと嫌悪。何だか転校初日みたい。

 その時より騒がしいのは髪を染めてないせいだと思うの。

 染めたいって言ったけど、賀川さんに猛反対された、その方が気味悪くて目立つって。じゃあ、その方じゃない白髪もやっぱり気味悪いのね? って聞いたら、顔背けちゃった。何だか賀川さんってオカシイ人だ。



「オメぇら、何かしやがったらただじゃおかねえからそう思え。ちなみにこの賀川のが婚約者だ、覚えておけ」

「突然、何言うんですかっ、タカおじ様!」

 そう言う私に、ぎょぎょオジサマが「照れるな、ユキ嬢ちゃん」と言い、バッタのオジサマが賀川さんに何か耳打ちしてましたので、彼は聞いていなかったようです。その後、回りのお兄さん達に詰め寄られて、何故かガッツリ揉まれて目を白黒させてました。



 食事が始まって、にぎやかです。仕事を終えた方が後から数人加わったり、抜けたり。その度に挨拶して、ちょっと忙しかった。でも葉子さんの作る食事は美味しいです。

「ほら、これも食べて」

 そう言って大皿から取り分けてくれます。家事は手伝いますって言ったら、

「今日は良いわ、そのうち手伝ってもらう事もあるだろうけど、基本は私の仕事よ。自分の洗濯だけは管理して、後部屋の掃除」

 そう言って笑う姿は、自分の仕事に誇りがある様ですごく素敵。紅色に黒を帯びた、ハッキリとした色合いの中に差し込む光と照らし出される鮮やかな緑の人です。



「お風呂は鍵をかけて入って、男が多いから。大風呂は男専用だからね。洗濯はそっち。病院から持ち帰ってきたパジャマ、着替えがあまりないみたいだから今度買いに行って」

「はい」

 そしてお風呂に入って、案内された離れの部屋。約束してくれた通り二部屋あったので、一部屋に洗濯物を干し、もう一部屋に布団を敷いて寝ました。小さい部屋は密室で昼の日差しで暖められて暑いものですが、空気が循環しやすいとか断熱の何とかでかなり涼しめ。それでもクーラーで室温を下げます。森の家では味わえない快適さですけれど、早く森に帰りたいな。

「まえだ ゆき かぁ」

 ふと、呟きます。

 苗字が変わる事に抵抗がないわけではなかったけれど、母はよく「苗字さえ変われば、少しは目立たなくなるのだけど」とたまに言っていました。外に出た時に「書けば無料」などとうたっているモノには手を出さないようにしていました。

 母は私が学校から提出された絵で何かの賞を取る度、引っ越しをしました。だから個人で何かを出す時に使い始めたのが「よいの ゆきひめ」。

「きっと名前が変わっても怒られないーーーーよね」


 ただ、そんな母の事を思い出していたら、悩んでいると勘違いされて。名前をそのままにしたいなら、結婚して離婚してって驚いちゃった。

「それも何で賀川さん? かがわ ゆき?」

 賀川さんの苗字、今度制服で確認しよう、なんだかとっても疲れていました。

 小さな冷蔵庫に入っていたお水とおじ様達が貰って帰ってきてくれたお薬を飲んだら、すぐ眠くなって寝てしまいました。




 私の知らない時間に。



「意外になれてるのな、お前」

「はい?」

「大人数での食事がよ」

 タカおじ様が、後二人のオジサマと。賀川さんの四人で先程の部屋に居ました。

「ええと……」

「時貞って、細密電子TOKISADAの御曹司なんだろう?」

「じょ、冗談言わないで下さいよ」

 ぎょぎょオジサマの言葉に賀川さんは否定します。お酒をちびちび嘗めていたバッタのオジサマが解さないと言ってから、

「あそこの息子は小さいうちに、人攫いにあって亡くなったと聞いた」

「じゃあ、俺じゃないですよ、死んでいるように見えますか?」

「仔細は、篠生って奴から聞いている」

「あっ! っのお喋り……」

 賀川さんが黙ります。



「今日聞きたいのはお前の素性じゃない。ユキのあの病室だ。オレはあれが何であっても、ユキを受け入れるつもりだったから、聞かなかった。でも預かるには聞いておくべきだろうと思ってよ」

 一瞬だけ顔を伏せた賀川さんは、すぐにタカおじ様の方を見て、

「俺が来た時にはもう部屋はあの惨状でした。中にはナースが一人いて、何で死なないのって叫んでました」

「ユキを殺す気だったのか?」

「たぶん。ユキさんはベッドに座っていたけれど、何だか変な気配がして。扉が開いたからナースは出て行ってしまって、追いかけたかったけどユキさんの方が先だって思って。俺は慌てて近くのリネン室から患者用の浴衣の帯とシーツをもらって戻りました。まだ彼女は座っていました」

「素手じゃ無理と判断したのか?」

「……あんなのユキさんじゃないです、あの動きはとても彼女の出来る動きじゃなかった」

 賀川さんが帽子を握りながら、

「それに誰も触ってないのにベッドが壊れたり、窓からガラスが降って。必死で取り押さえてる時に、「出して、出して」って彼女が叫ぶから何となく「じゃあ海に行こう」って声かけたら、信じられないほど穏やかになって、寝てしまって。近くにあった注射器とアンプルだけ回収して、ユキさんを連れて病院を出ました。ココはもう知られてしまっていると思ったから」



「………………………………今日はもういい。その注射器はバッタに渡して帰れ」

「そんな説明でいいのか、投げ槍!」

「いいんだよ、こいつがこう言うなら、そうなんだろうよ。ユキに関しちゃ、俺達に嘘は吐かねぇ」

「じゃあ、もう俺、帰ります」

「受け取ってから、俺も帰るぞ。送ってくれ」

「は、はい」

 賀川さんとバッタのオジサマ、二人を見送りながら、

「投げ槍、しょうのみやとやらががいずれ嗅ぎ付けるだろうよ。しかし篠生って奴が言って、俺は現実主義者だから信じられなかったが。あれが『巫女の力』ってやつなのかもな」

「気に入らねぇな、やり方が」

 タカおじ様は顔を顰めながら、しばしお酒をぎょぎょオジサマと交わすのでした。




森にもこの日以降、ふらふら出られる事になります。

現在28日、一日、夏祭り以外は決まっていません。

よかったら遊びに来て下さい。


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