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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
6月14日

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収穫中です

蕗にキノコーっ

 






 本日、晴れ過ぎ。

 良い天気だったのですが、服が乾くまでそのまま待っていたからか、少し寒気がします。

 虫除けを一応塗って、家までふわんふわんと、蕗など摘みながら戻りました。食糧調達大切です。


 キノコは余り手を出したらダメです。

 どんなに店で売られているそれに似ていても、それでない場合、大変です。それでも私、食べられるのは、わかるのですよ。だって美味しく食べてって言うから。それは収穫しました。

 でもそれで毒に当たったら自己責任ですから。気を付けて。


 例えば、そこに映えている小さな白いの、ほら可愛いでしょう? 白い天使が羽を広げているよう。でもこれ絶対ダメ。

 猛毒だそうです。だーめよって言ってるの聞こえるでしょう?

 しかしこの森も地主さんがいるのでしょうから、本当は取ってはいけないのですが、生きる為なので許して下さい。


 さて、鬱蒼とした森の中、ぽつんとボロの小屋が見えてきました。

 チョコレート色と言うと美味しそうですが、つまりそれだけ風雪に耐えてきた、そしてそろそろ壊れそうなお家。

 土間にある台所はスチールではなく石みたいなので出来ています。さすがに釜はないです。でも昔はあったのではないかと思える場所にガスコンロがあります。

 一応、これでもガス電気水道、揃ってます。

 あ、今、森の中でもそんなに困らないんじゃない? って思った人、手を挙げて。


 水道は正確には井戸水なのです。夏は冷たくて、無料でミネラルの多い良い水が飲めますね? ペットボトルで買っていたのが嘘のようですよ。

 でも初めての越冬中、配管が凍りそうになり、あわや破裂しそうになった事もありました。水道でも配管が凍れば同じ憂き目にあうのですが。とりあえず、ちょっとだけ出ていた水を全開、出しっ放しにして配管を廃材で包んで、破裂は免れましたよ。



 手にしたキノコと蕗などの山菜を土間に置いて、バスタオルを赤に染めながらも包んで持って帰って来たモノをボールに入れます。

 ヤマモモです。

 美味しいのですよ、甘酸っぱくて。すぐに落ちてしまうので時期は短いのですが。丁度、今時期たくさん収穫できます。丸めの葉っぱの樹、暫く楽しめるのがうれしい。

「冷やしてみよう」

 小さく黒っぽい赤丸の実。粒だったそれが飛び出さない程度の井戸水を出しっ放しにして、それを冷やし汚れを取ります。



 電気、通ってますが、冷蔵庫はないです。

 明かりは豆電球のようなのを天井からぶら下げただけです。お部屋は三つありますが全部それだけ。畳は擦れてます。

 主要部屋のコンセントは二つ、一つはパソコン、一つを生活用に毎回繋ぎ直してます。携帯充電は他のお部屋で。でもここに来る際、母に前の携帯を捨てられたので、誰のデータも入っていません。誰からもかかって来ません。悲しいと思うほど、繋がりが深い人もいないので、良いかな?


 あ、携帯データ。思い出しました。三つだけ入ってます。


 一つは運送屋の賀川急便、一つはうろなの文具屋さん、最後は何度かけても繋がらない母の携帯。


 それでガスは料理には使えるのですが、数日前から風呂釜の方が壊れていて。沸かせなくなってます。で、凍える様な井戸水を入れた風呂より、森の中での行水を選んだわけです。

 やはり冷たかったですが、地下からくみ上げた水よりマシ。



「いつか修理に来てもらわないとだめかなぁ」



 ヤマモモ放置して外へ。



 トイレは離れにある小屋です。小屋の下に川が流れている自動水洗。こちらの水源は井戸とは逆側にあり、更に下流域の排水に繋がっているので、井戸水を汚染しないし、誰にもご迷惑はかけないそうです。紙は自然に分解するモノを使い、台所の排水もこちらに流れます。



 トイレから出て、手を洗って、ハーブを摘みに行ったところ、不審な事に気付きました。


「あれ?」

 井戸水の汲み上げパイプから、雫が滴ってます。

 防寒用に冬に急遽巻いた廃材の隙間から。

 それを外してみると。 



「き、きゃあああああああっ!」



 外した途端、勢いよく水が噴き出してきました。冬の間はもった配管でしたが、亀裂があったようです。


 どうしましょう。


 またずぶ濡れになってしまいました。

 白い服に水をかけると透けます。ぺったり、体の線が見えてしまいます。

 いやいやいや、問題はそこではありません。今は服よりも水を止めなばなりません。


 土間に駆け込み、蛇口を捻るとモーターが止まり、外の水も止まります。


 私は冷えたヤマモモの赤を口に入れながら、太ももに張り付いたワンピースを眺めました。


またずぶ濡れです。

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