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前回、11話から


『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 』YL様作品、6月17日に繋がります。


そしてこの12話は、YL様のほうで書いていただいた世界を、ユキ視点で追って書いたモノになります。


本編はYL様の方でお話、お楽しみください。

 







 賀川さんと「うろな工務店」の社長のオジサマを追い払った後、ずっと悪夢に襲われていました。


 母さんが最後に見たパンプス姿のまま、走って行ったかと思うと崩れ落ちてしまう夢。

 意識が浮上すると、賀川さんが戻って来ていて、ベッドに運んでくれて、額のタオルを替えてくれていたり、汗を拭ったりしてくれていました。

 眠ると繰り返し繰り返し、母が死ぬ夢を見ます。刺殺、絞殺、どこからか落下したり、苦しんだりするのです。

 怖くてたまらない、もう止めて……お母さん行かないでと思うのですが、体が重くて思うように行きません。

 起きると優しく心配そうに見つめてくれる賀川さんの視線に縋りそうになります。



 そうして暑いのか寒いのかわからないまま、震える私の手を握る賀川さんを振りほどきました。このままではここに居られなくなります。

 手を振りほどかれた彼は怒る事はなく、ただ悲しい色を傾けます。彼はそれでも何度も家を出たり入ったりして私の世話をしようとするので、やるせなくなります。早く帰ってくれればいいのにと思うほどに。

 でも私の願い虚しく、賀川さんがまた家に入って来て、更にオジサマがもう二人大人を連れて戻ってきました。



「何度言ったらわかるんですか!? 私はここで母を待ちます。だから放っておいてください……」



 一人は同じ年だろうかと思う様な、小柄な可愛らしい……でも力強い色の女の人、後一人は……男性でした。



 その男性は何かが切り替わる様に、「色」を変えると私に言葉を投げました。

「オーー。アイタカッタヨー、ヨイノセンセー!! ワタシ、アナタノダイファンデース!!!」

 なに、面白い、この人……口調がじゃないのです、いやそれも面白いけれど。

 違う、色が混ざる。少し怖い。普通は見ない色に本能的拒否と興味が入り混じります。

 パレットで、キャンバスで深い色を作って行くその時のように、不思議に重なるそれ。そこからつい釘付けになりかけるのですが、目的は私をここから連れ出す事のようだったので、拒否します。


 でも、彼は言うのです。

 母の綺麗だと言ったうろなの海を見たくはないか、と。いろんな所を見て、いろんな絵を描かないか、とも。

 それは、それは心を惹かれる海の青と、母の体から流れ落ちる血の赤と、混じって、息苦しくなって、闇に混濁していきました。

 どれほど闇の中にいたでしょう。

 そんな中、母の背中が見えました。


「待って」


 母は、振り返らない、いつも振り返ってくれないのです。私に中に残る母は意地悪なのです。何を考えているかよくわからなかったけれど、本当に本当に優しい女性だったのに。

「待って。お母さん。置いて行かないで」

「どこにもいかないよ。私はいつでもユキの側にいるからね」

 そこには一人の女性と、三人の男性が私を見ていました。余りに瞳が重くて開かなくて、誰も私が意識があるのには気付いていないようでしたけれど。

「必ず守ってあげるからね」

 可愛らしい女性の声でした、母ではない、でも母に近い母性を感じる声でした。

 私は少なくない、溢れるほどの光を見ます。


 それは不思議な色をした男性に大きく傘を広げており、光と色は静かに混じるのです。


 深すぎる不思議な色は……よく見れば岩から湧き出る清水のように透明でした。

 砂や岩を潜り抜け、辛い暗闇の中を抜けて濾過されたそれ。

 時間をかけて湧き出す、それは光がなければただの無色。でも光を得て、反射し、いろんな色を放つ虹を描くのです。

 その光を発するのは、凛と誇らしく咲きながらも、人を守る様に柔らかく芳香を放つ美しい紅梅。小さくありながら存在感のある、可憐なその姿。


 春の雪解け。


 甘い香りに誘われて流れる水を辿って行くと、川に繋がります。川は支流の水を拾いながら、海へ零れ落ちます。

 あれが、うろなの海へでしょうか?


 光と透明な色に、何処からか湧き上がるここにいる大人達と同じ優しさ、子供達の息吹、齢を重ねた者達の堅牢さが混じって、綺麗な海となります。

 それは母の血の赤を消し、静かに優しく溢れ、私は甘い香りに満たされます。

「幸せにおなりなさい、ユキ」

「うん。お母さん」

 続けて送られた言葉に私は頷きます。

 私はうろなで生きていかなければならないと思いました。

 だから精一杯の返事をしました。


「ありがとう」


 と。


 初めてうろなの森に越した日、母が梅の樹の下、振り返り、唇に微笑を浮かべたあの姿を思い出しました。甘い香りの中、着飾らない母が浮かべた最高の笑顔でした。






 次に気が付いた時、私は森ではなく、四角い箱の様な部屋で目が覚める事になりました。


次回18日予定です。


引き続きYL様のお二人お借りしてすみません。

ユキが見た2人の姿と言った感じで書いてます。


ただ、不都合な解釈があればお知らせください。

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