洗濯中です
のんびりうろなに住もうと思います。
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上記企画、参加作品です。
「いいお天気ね」
空を見上げると綺麗な青い空が広がっていて、森の樹が揺れてます。私の伸ばしっ放しにした白い髪が水面で海藻の様に漂っています。
この陽気なら、側の樹に蔦を張って干している白の継ぎ接ぎワンピースも下着も、綺麗に乾くでしょう。
あ……私は森の中にある湖で行水中でした。
裸なので、まじまじとは見ないで下さい。
……チラッとなら良いのか? 無論ダメです。いや、誰もこんな森の中に来ては見ないですね。
ここは森の奥。
うろなと言う町の北にある森の奥。
私をちらりと見た人は幽霊なんて言いますが、ちゃんと生きています。
ちゃんと人間です。
…………たぶん。
一緒に住んでいた母が、ここに住んで二か月ほどで『待っていて』と告げて、姿を見せなくなって一年くらいは経ったのではないでしょうか?
私は赤い瞳と白い髪ですが、母は標準的な黒髪黒目の日本人でした。父は知る限り、身の回りに居ません。
ですから、言っておきますけれど、白い髪って言っても私、おばあちゃんではないですよ?
中学校までは母と別の街に住んでいて、普通の中学生でした。髪は染めていましたし、カラコン入れれば、肌が少し白いなーってくらいで目立ちませんでした。
でも卒業式の日に、母はうろな町の森、その山小屋に引っ越してきてここに住むって。
高校も決まっていました。行っていれば今年二年生になっていたはず。けど、勉強は好きではなかったので、今の所は行かなくて良いです。
友達もさしていなかったし。
母はずっとここで好きな絵を描いていて良いって、たくさんの紙と絵具を用意してくれました。
住民票とかはどうしているのでしょうね、あまり考えた事がありません。役場の人、ごめんなさい。
だいたい逃げるようにココに来たので、母は借金でも抱えていたのかもしれません。
電気とガスはあって、無駄遣いはしていないので、母が作ってくれていた通帳から引き落とされて、後数年は問題なしです。
あれ? 通帳作る余裕があるという事はお金がらみではなかったのかしら?
良くわからないです。
何もない生活です。
特別な「波」もありません。
でも「敵」がいます。
今、最大の敵。
世界の様々な気候や環境に対応し、世界に百万種は蔓延っていると伝えられる、地球最強の生き物。
それは……虫。
蚊は育てたハーブで作った液を肌や服などに塗っておくことで解決したけれど、訳のわからない甲虫はお友達になれないです。
蛇は触らなければいいですが、ムカデはお布団の中に入られたら嫌です。あ、蛇やムカデは虫じゃないですね。
それでも「来ないで」って、ずっと思っていたせいか、来なくなった気がします。でも……時期が夏になったらどうでしょうね?
それ以外はプランもない、のんびり生活。
私の名は宵乃宮 雪姫、「よいのみや ゆき」です。姫って字は要らない気がしますが。
って、誰に説明してるのでしょうね。
まあ良いのです。
私は近くの大きな岩に水をかけ、砂を落としてからそこに腰掛けます。まだ水が冷たいです、凍えそうです。
いや、凍えてます。唇がきっと真っ青です。
考えているうちに、浸かり過ぎたよう。タオルにくるまって暖を取りながら空を見上げます。
今日も、うろなの森の空は変わらず綺麗です。
のんびりうろなに住もうと思います。
血を見ない展開にしたいと思いますが、どうなることか。