新人さんと一緒
■視点:守森翡翠
「何、それっ!?」
思わず驚きの声を上げていた。
だってそこにいたのは……。
「何で熊さん!?」
そう、可愛らしいぬいぐるみみたいな熊そのものの姿だったんだ……。
「へえ?それってワイルドベア?」
何ですと!?と、お兄ちゃんの言葉に記憶を掘り返してみる。
確か……それって。
「あれ?それってモンスターじゃ」
お兄ちゃんが選んでるって事でモンスターも見てみた。
けど、どれも厳つかったんだよねー……。男の子なら格好いい、って思うのかもしれないけど、私はちょっと気に入らないかなあ?って感じだった。倒すモンスターっていうなら良かったと思う、あれは。けど、自分がなる、となるとちょっと……。
でも、香香ちゃんの現在の姿は凄く可愛い。サイズ的にもちょっと大きめのぬいぐるみみたいで、抱き締めたらすっごくふわふわしていそう。
ワイルドベアって初期モンスターの一体で見せてもらった時の絵柄は牙を剥いた凶暴そうな熊って感じだったのに……。
「何で!?」
「何が?」
お兄ちゃんを振り返って叫ぶと首を傾げられる。
「何で、香香ちゃんのモンスターはこんなに可愛いの!?」
「え?そりゃデフォルメモード使ったからだろ?」
でふぉるめもーど?
何それ?
問い詰めると不思議そうに教えてくれた。何でも本来は女性用に設定された選択式の機能らしい。
当り前だけど、男の子には格好いいと思ってもらえる画像でも可愛い方がいい、って思う人はいる、男性よりは主に女性に。だけど、そういう理由で女性がモンスター系を選ぶのを躊躇するのは選択肢を狭める事になってしまう。うん、それは分かる。これ使いたい!って思うのがあっても「でも見た目がなー」ってのは結構大きい。VRMMOでは見た目も重視される、自分がその中に入るんだから当然だ。
で、そんな女性の為に作られたのが「デフォルメモード」。
有名どころではテディベアがあるだろう。あれだって熊さんだけど可愛いって思うはずだ。そんなモンスターを可愛くディフォルメするモードだからディフォルメモード。そのまんまだけど、こういうのに凝った名前をつけても仕方ない。魔法なんかでも名前から何となくどんな魔法かイメージ出来る方がいい。炎の魔法で「ファイア」って名前なら分かりやすいだろうけど、「とっぺんぱらりのぷう」なんて名前つけたら「それ何の魔法?」ってなるのとおんなじだ。
うむむ、最初はお兄ちゃんに文句言ったんだけど、反論されたから確認してみたらちゃんとモンスターの項目に(※見た目を可愛くしたい場合はディフォルメモードがあります)って書いてあった!
うーん、文句は言ったけどそれでも私はモンスターじゃなく獣人系選んだだろうしなあ。見なかったから確認もしてなかった私の責任かあ。
もっとも、獣人など他の種族にも「デフォルメモード」がある事を知って、早速試したりしていた訳だけど。
その後来た残りのお友達は、一人はドワーフ族の生産職である陽奈。
ドワーフ族と言えば髭もじゃでがっしりした小柄な、といったイメージがあるかもしれない。けど、女性はちょっとがっしりして筋肉はついている以外は人族の子供と大差ない。これも女性プレイヤー対策らしい。
魔術は使えないけれど、代わりに紋章術と呼ばれるものが使えるのが種族の特徴らしい。
紋章術、って言われたらどんなものか分かりにくいけれど効果自体は極めて単純「マジックアイテムを作れるようになる」スキルだ。プレイヤー自身は生産職を選ぶ事で紋章術を他の種族でも取得する事は出来るそうだけどNPCの場合取得出来るのは最初から所持しているドワーフ族しか取得出来ない上、プレイヤーでも最初からこのスキルを持っているのはドワーフ族だけで、ある程度レベルを上げてクエストをこなしてからドワーフ族に教えてもらわないといけない、と言えばマジックアイテム作成はドワーフ族が圧倒的に有利という事が分かるだろう。
ただし、遠距離攻撃の花である魔術が使えないし、モンスターのような特殊能力もないから上位の国家で戦争に参加した場合、遠距離攻撃は全て事前に作っておいたマジックアイテム頼りになってしまう事や、作るのもタダじゃないからお金が文字通りの意味で飛んでいく、って事を考えれば妥当なのかもしれない。
「下手をしたら二戦とも勝利しても大赤字」なのがドワーフ族戦闘の恐ろしさ、らしい。
最後に来たのがエルフ族の魔術師である摩莉夜。
彼女は「ファンシー・スター」でも魔法職だった。
この「ワールド・ネイション」は基本は抑えているので魔法戦ならエルフ!と言われてる。
単純に魔法攻撃力が高い!っていうならモンスター系ホムンクルスになった方が強くなるらしいんだけど、エルフ最大の特徴はやっぱり複数の魔法を使いこなす事!ただし、逆に言えば状況に応じて適切な魔法を選択していかないといけないという事でもある。でも、摩莉夜ちゃんなら魔法使いは慣れてるし大丈夫だと思う。しばらくは「ワールド・ネイション」の魔法に慣れてないから大変だと思うけど……。
国を建てた後は種族特徴のせいか国家としては強い国家を作るのが大変らしい。
ううん、国そのものは決して弱くない。
ただ、種族特徴として国家というものに個々が余り興味がないという事になってるせいで、大勢を動員するのが困難らしい。だからどうしても数で押し潰されやすいんだとか……。そういう意味では正面決戦はともかくゲリラ戦とかそういうのに引き込めたら逆に物凄く強いらしいんだけど。
私達はこの四人で「ファンシー・スター」を遊んでいた。
私と香香、摩莉夜がフィールドに出て戦闘と素材集め。
集めた素材を用いて陽奈に武器を安く作ってもらって、陽奈自身は私達から安定して高級素材をゲット出来るという訳だ。勿論、こっちもある程度安めに素材を卸したり、或いは特殊なドロップ品なんかは陽奈に確実に渡したりしてた。
皆が揃って少しして……。
「やー待たせたかにゃー?」
最後の一人が到着!お兄ちゃんの友達である「もふもふ帝国」皇帝である猫子猫さんだ。
今は私達が思わず「可愛いー」って一斉に言っちゃったように三頭身のデフォルメ猫モードだった!猫子猫さんは普段はこの姿で、戦闘時は別の姿になるらしい。その姿はお兄ちゃん曰く「あれは猫ではない、虎だ」だとか。
「「「「今日はよろしくお願いしまーす」」」」
「こちらこそよろしくにゃー」
どんな感じになるんだろ?
■視点:守森常盤
チュートリアルと言っても本来の意味でのチュートリアルは各自が既に済ませている。さすがに今からスキルの基本動作とかを教えて下さい、って子はいない。もちろん、「ワールド・ネイション」は初めてでもVRMMO自体は経験者って事も大きいだろう。
ムード自体は和やかに進んでいく。
仮パーティをこの六人で組み、フィールドに出る。
うーん、さすがに経験者、安定している。
VRMMOの欠点は幾つかある。
その中でも最大のものは実際に体を動かすって事。元々のVR技術の原点が医者の為の手術の訓練、軍人の実戦教育といったものである事を考えれば当然かもしれない。ああいったものは手術だと練習だからといってまさか本当の患者に手を出す訳にはいかないし、回数をこなす事も難しいけれど実際に手術をやってみて回数をこなさないと上手くもなれない。その点VR世界なら何度でも体験出来るし、色んな過去の実例に基づいた厄介な状況を再現可能だし、失敗前提の物凄く難しい状況を設定して案の定失敗した所で誰かが困る訳でもない。
軍人なら遠慮なく弾を撃てるし、実際に死亡するような状況だって体験出来る。
けど、これらは「本物」のような感覚がないと意味がない。そして、その基本は現在のVRMMOにも受け継がれている。つまり戦闘にしたってかつてのRPGみたいにのんびりと「うーん、ここだとこの魔法がいいかな?いや、こっちの方が…」とか、「剣のこのスキル使った方がいいかな?いいや、やめとこう」なんてやってる余裕はない。咄嗟に判断して使っていかないといけない。特に新しいゲーム開始の際は魔法職なんかだと前のゲームの経験のせいで、範囲を間違えてしまったなんて事も起きる。こればかりは前のゲーム経験が多い程感覚がずれる。
前衛だって武器のリーチが微妙に違ったりして変な殴り方しちゃたり、味方に当たったりしてタイミング崩してしまったりとかが起きる。
今回もそれが発生したけど、その為のサポートに自分達がいる。
「わあっ!?……あれ?」
「はい、大丈夫大丈夫」
爆炎に巻き込まれそうになった翡翠をこちらのガード系スキルでカバーする。
低レベルの攻撃魔法ぐらいならこっちには通用しない。
植物系モンスターは炎系攻撃に弱いのが一般的だが、さすがに植物の精霊王ともなれば平気だ。それに植物の中には逆にえらい炎に強い植物だって存在してる。
「えっ!引っかかったあ!?」
「ほい、任せるにゃあ」
猫子猫さんが香香ちゃんのミスをサポートする。
香香ちゃんの事はオフでも知っている。彼女は割りと小柄な体格だが、戦闘中は大柄な体格になる。もちろん、戦闘中だって小柄なデフォルメモードで戦闘する事も不可能じゃないけれど猫子猫さんクラスならともかく、初心者レベルでわざわざ攻撃力とリーチの両方を下げる意味合いは皆無だ。
ま、自分だって猫子猫さんだって、こうした他ゲーム経験豊富な人も含めて初心者のサポートは慣れている。
こんな事をするぐらいなら自分のレベルを上げる!って奴もいるのは確かだが、割合上級者はこういう事に関しては互いに協力し合っている。やっぱり最初から「難しい」と思って参加者が消えていくのは寂しいし、実際問題として困る。なので、余裕がある奴はなるだけ頼まれたりした場合は手助けしよう、って訳だ。
とはいえ、経験者はある程度感覚掴めば強い。
「大分慣れてきたかな?」
「そうにゃあ」
サポートする回数も大分減ってきた。
順調に経験値も上昇しているはずだ。
……ま、今回はちょっと裏技というか少し良い装備やアイテム提供したり、最初に強いモンスターを倒しにいってレベルの底上げするっていう事してる訳だが。
お陰で割合早く慣れると同時に一次転職可能なレベルにまで予定の時間前までには上がる事が出来た。
次にサポートが必要になるのは、建国しての戦争参加になってからだろう。それまでは基本ストーリーモードとなるはずだ。
「お兄ちゃん、猫子猫さん、今日はありがとう!」
「「「ありがとうございます!!」」」
うん、可愛い女の子から笑顔で礼を言われたらやっぱり気持ちいいね。
猫子猫さんも笑顔だ。
「なーに、気にしないでいい……ん?何にゃあ?」
胸を張ってもふもふ帝国皇帝 の呆気に取られたような声。
思わず視線を向けた俺含めた一同も思わず驚きの声を上げる。
その視線の先には……揺らぐ空間と空中に浮かぶ波紋のようなそこから伸びる一本の白く細い腕があった。
最後の出てきた手は……まあ、次回は想像通り、と言っておきます
予想通りとなるかは違いが出ると思います…あるよね?
今回少し書きましたけど、実際にVRMMOが出来たらこうしたゲームでは規制とか制限とかかかったりすると思います
性別の変更とか、身長の変更で感覚とかがずれたりして問題も発生するかもしれませんし、そういう感覚の修正が苦手でゲームでは障害が発生する人だっているでしょうし……
きっと、遊んでる人達の事無視して騒ぐ人達出るんでしょーねえ