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ワールドネイション  作者: 雷帝
第一章:始まり
2/39

戦争の季節

毎週日曜0時のアップを目指して開始です

よろしくお願いします

■視点:精霊王エントこと守森常盤


 【レディース&ジェントルメン!!今日も絶好の戦争日和だぜい!!】


 イベントの日がやって来た。

 しかし、相変わらずこのゲームのDJは賑やかだ。

 俺の参加する『カテゴリー1』は基本大国ないし準大国と呼ばれる国御用達の部門だ。まあ、もちろん偶にそれ以下の連中が参加する事はある。もちろん、事前にちゃんと確認は取られる。敗退した場合国力が減るのは事実であり、その際に文句を言わないというのは最低条件だ。

 そして、それでも参加してみたい!という奴が極稀にいる事はいるが、大抵の場合跳ね返され敗れていく。

 だが、可能性がゼロではないのも事実。稀に、本当に極稀にだが作戦や戦術がはまって下克上が起きた例もあるので油断は出来ない。

 一回戦は幸い六大国クラスではなかったようだ。

 特に、一回戦で「もふもふ帝国」にあたるのは準大国に分類されるうちとしては避けたい所だ。

 あそこは六大国の一つで、獣人族によって統治される最強を謳われる国だ……ただし、一回戦だけならば、という但し書きがつくんだが。

 獣人族ってのはスタミナがない。

 それが現実的にどうかはさておき、そこら辺でゲームバランスが取られているというか、圧倒的な機動力と攻撃力があるが持久力が低いという設定となってるので、結果として二回戦ではちょくちょく負けるという事例がある。それでも十分強いんだけどな。でも、それはただの力押しじゃなくきちんとあそこの皇帝さんが戦術を考えての結果だ、というか一回戦は力押しでも何とかなってるけど、二回戦の勝率も高いのはトップの戦術能力が高いから、と言われている。実際、他の獣人国家であの国に匹敵する戦果を叩き出してる国が存在していない事がそれを物語っている。

 かつて人族の二大国を同時に相手どっての戦争をやった事があった。

 これは当時既に最初だけなら最強と言われていたあの国が一回戦に全リソースを注ぎ込んだらどこまでやれるのか、ってのが参加者の間で盛り上がって、最終的に運営まで巻き込んでのイベント戦における一大イベントとして、行われたものだ。結果としてそれはあの国の最強っぷりを見せ付ける結果に終わった訳だが、優秀な戦術家としての才も見せ付けたとも言える。俺だって戦術面で早々負けるとは思わないが、なまじな戦術や数の差を叩き潰すあの戦闘力は脅威なんだよな……。

 まあ、今回は少なくとも一回戦ではやりあわないので自分の対戦相手を確認する。

 俺の国「大森林」の一回戦は「ヴィーガン騎士国」、人族の準大国だ。

 国の名前に関しては国を建国した際に好きにつけていい事になっているから、趣味に走る奴もいれば格好いい名前をつける奴もいるし、俺みたいにシンプルな奴もいる。

 さて、ヴィーガン騎士国ってのはどんな国だったかというと。


□『ヴィーガン騎士国』

規模:準大国級

とにかく徹底的に基本に忠実な国。

騎士国って名前が示す通り騎士が主戦力。騎馬部隊による突撃戦法は強力

王道一直線

逆に言えば欠点は崩された時の対応も王道である事

準大国に上がったばかりの新進気鋭。今回カテゴリー1に初参加


 と、こんな感じの国だ。

 騎士が主戦力という事は搦め手を余り用いて来ないという事。

 人族の騎士というクラスは基本として特に防御力が高めで、攻撃力や機動力にもそれなりに長けている。反面、魔法などが殆ど使えない。せいぜいが武器付与系の魔法ぐらいだ。 

 魔法を多少なりとも増強するならば後は装備で強化するしかないのだが、騎馬部隊にしているという点から「装備:騎馬」を行っているとわかる。この時点で更に攻撃力と機動力を増強しているが、魔法攻撃を強化している訳じゃないという事が分かる。魔法攻撃を強化した魔法騎士に分類される連中がいるが、その場合装備部位が騎馬と重なる。当然、その場合は徒歩だ。

 これらとあの国の戦闘記録画像を拝見するに、こちらの得意戦法で対応出来るはず、だ。

 その為の準備もしてきた。

 後は相手がどれだけ自分への対策を考えてきたか、だが……こればかりは相手の対応を見て決めるしかない。

 時計を確認するとそろそろ時間だ。最後に持ってきた道具類、動員した部隊編成を確認する。……うん、大丈夫だ、間違いはない。

 それを確認して、表示された運営からの「準備はよろしいですか? OK」の表示にタッチする。それと共にDJの声が響き渡った。


 【さあて、準備はいいか?「大森林」VS「ヴィーガン騎士国」開戦だああ!!】



■視点:もふもふ帝国皇帝


 「あーありゃ、駄目だにゃあ」


 思わず声が漏れた。

 イベントは全てを一日でやる訳じゃない。だから毎回参加出来る訳じゃないんだけど、ふと目に入った知り合いの戦争。

 精霊王エントの試合。

 知ってる奴は「公式チート」とも言われる相手。


 「何が?」

 「や、「黒竜さん」こんにちわにゃ」

 「うん、こんにちはー」


 うーむ、こっちのアバターである白猫(虎だろ!って突っ込まれる事あるけど猫なんだにゃ)の倍以上の体格を誇るガチガチの鎧で固めた竜人が中の人がそうなんだから仕方ないとはいえ女の子の声と態度で動くというのは何とも言えない気分になるにゃ……。あ、ちなみに口調は拘りなのだにゃ。猫の外見なのに普通の口調なのは自分が納得いかんのだにゃ!!

 ちなみに、話しかけてきた「黒竜さん」は六大国の一つ「九頭竜王国」の国王だにゃ。

 

 「で、何が駄目なの?」

 「ああ、あれにゃあ」


 と、「大森林」VS「ヴィーガン騎士国」の戦いの表示を示す。

 ちら、と視線を向けた彼女もそれで察したみたいにゃ。


 「真っ向勝負かあ……しかも、「大森林」相手に小細工抜き。あれは駄目だね」


 うん、全くだにゃ。

 それぞれの国には自分なりに確立した基本となる戦い方、という奴があるのだにゃ。例えば自分であれば電撃戦。部隊を高速で動かし、相手の弱い所弱い所を見定め攻撃していくのだにゃ。まあ、どこが弱いかを戦場できちんと見極めていく必要があるし、欺瞞で実は強い所だった!って時にそれを噛み破れるだけの強さも必要なんだけどにゃー。

 で、「大森林」の戦い方はといえば……その前に戦闘の流れを話していくにゃ。

 まず戦闘フィールドは平原。

 とはいえ丘が幾つか存在してるせいで視界はある程度遮られてる部分があるのにゃ。

 更に小さいとはいえ森もあったにゃ。

 丘の下が自然と道みたいになってるから最初は双方がそれに沿って前進。やがて遭遇。

 当初は双方の重装甲の部隊同士の戦闘から始まったのだにゃけど、この時はヴィーガン騎士国が戦闘では圧倒していたのだにゃ。

 これは当然といえば当然で、ドワーフ族作成の分厚い防具に身を固めた人族の騎士職が戦列を作るヴィーガン側に対して、大森林側の前衛はアイアンツリー。要は鉄のように硬い表皮を持ち、棍棒のような腕で殴りつけてくるモンスターなのだにゃ。同数で対決すればまず前者が勝つにゃ。……うん、同数で対決すれば、だけどにゃ。

 あの倒しても倒しても後から後から出てくる恐怖をヴィーガン側がどこで気づいたか。

 実は精霊王エントは植物系モンスターを生み出す特殊能力があるのだにゃ。無論、コストもかかるし、たくさん生み出すとなるとレベルを制限しないといけなくにゃるけど、アイアンツリーぐらいならそれこそ無数と言えるぐらいの数が生み出せるのだにゃ。加えて、自然魔法の使い手であるドルイド達が一杯いるからコストが軽減されて……伊達に確認されている中では公式チートな凶悪種族をあげたら確実にトップ3入りすると現時点で言われてる訳じゃないのだにゃ。……今はまだ精霊王一体だけにゃけど、将来他にも出てきたら厄介そうだにゃあ……。

 

 ま、そんな相手なんだにゃ。

 どのみち攻撃力とかも低いんだからヴィーガンは少数を足止めに回して真っ向から相手するべきじゃにゃかったんだけど、なまじ真っ向からの王道でやって来たから今回もそれでやってしまったんだろにゃあ……主戦力が完璧に足止め喰らって、次第に潰すよりも増える方が早いもんだから包囲されつつあるのにゃ。こうなると下手に離脱も出来にゃい。現実の戦争でも一番被害が出るのは撤退戦の時なのにゃ。

 無論、大森林側は見破られて突破される危険なんかも考えて、ちゃんとアイアンツリーの背後に少数で見た目はアイアンツリーにそっくりだけど、レベルが高くて攻撃方法も叩くのではなく刺す、鋭い枝を槍として使うスティールツリーの部隊をしっかり配置してあるけどにゃ。

 正に王道に対するは王道。

 ヴィーガンの真っ向勝負に対抗する大森林の物量戦。

 しかも、そんにゃ事やってる間に慌てたヴィーガン側が主力を救えと増援を繰り出してきたのと時を同じくして大森林側も増援が到着したのにゃ。

 けど、泥縄式で増援を出したヴィーガンと、想定通りの状況で想定通りの戦力が到着した大森林の側では話が根本的に違うのにゃ。

 上空からバルーンシードが種をばら撒きだした。

 確か設定では……地面についた瞬間にガワが爆発して周囲を吹き飛ばしてから自分が根付くという設定だったはずだにゃ。それをこうして戦争で使えば……ほら、空爆。

 ダメージはこちらも一発一発はそう高くないけど、ひたすら数が多いのだにゃ。お陰で大混乱。

 しかも……。

 

 「……本陣が主力を強引に撤退させて残存兵力で森に防衛線を構築しようと動いてる」

 「……対戦相手の種族が何だか分かってやってるのかにゃあ?」

 

 こういうのを「窮すれば鈍す」っていうのかにゃあ?

 あーあ、縦進防御陣形組んでるにゃ。

 確かに陣地構築自体は森の地形と木々を活用してそれ自体を砦にしながら、回り込まれないよう上手く構築してるけど……相手は「植物の精霊王エント」。それ相手に森の中に陣地を構築するって……大声で指示してる間に背後から大型ユニットが動き出してるにゃ……うん、勝負ついたにゃ。奇襲で手薄な本陣に「大森林」の主力級ユニットが突撃かましたにゃあ……。 

 カテゴリー1と、それ以下の最大の違いはレベル制限の撤廃にあるんだけどにゃ。カテゴリー2までは例えばレベル20~レベル30まで、って具合に上下のレベル差が決まってるから大体戦力もこれだけ、相手の大将の能力も多分これぐらい、と予測が出来る。

 けどカテゴリー1にあるのは最低レベルだけ。レベル50以上とされるならレベル80もレベル100もその中にいるんだにゃあ。

 ま、そこはゲーム。制限かかったり、有利になったりしてやり方次第では勝てるようになってる、んだけど……きっとこれまでのやり方が新しいカテゴリーに上がってもなまじ上手く行ってただけに今回も同じ手で行ける!と思ってしまったんだろにゃあ。

 さて、と。


 「それじゃ今日はよろしくお願いしますのにゃ」

 「こっちこそ!今日こそ一回戦で勝ってみせます!!」


 そろそろこちら。

 本日のメインイベントに指定された六大国同士の決戦「もふもふ帝国」VS「九頭竜王国」の開戦だにゃ!




■視点:オフライン/精霊王エント


 今回のイベントは気持ち良く終わった。

 終わってみれば我が「大森林」は二連勝!となる訳だが、一回戦が終わった後、ヴィーガンと話をする機会があった。

 ヴィーガンのプレイヤーは結構ショック受けてたみたいだった。

 最初は不機嫌そうだったが、自分の自信のあった戦闘方法が完璧に抑えられた事もあっただろうし、俺の戦い方とかあの数とかが不公平と感じていたのかもしれない。

 まあ、分からないでもない。

 けど、二回戦は仕方ないにしても、一回戦は事前にある程度の情報が調べられるだけの時間があるんだ。事前に俺の戦闘記録画像をきちんと調べておけば多少は予測出来たはず。

 けれど、何より大きな説得材料となったのはやはり今回の目玉である「もふもふ」VS「九頭竜」のバトルだった。

 圧倒的な機動戦力を誇る「もふもふ」。

 少数なれど最早暴力的としか言いようのない戦闘力を誇る精鋭を中核とする「九頭竜」。

 双方の激突。

 押しては引き、引いては押す。

 多少の小細工を踏み潰し、ただ見るだけなら何もかもお構いなしに罠も踏み潰しているように見えるが、その実繊細なまでに仕掛けを潰していく警戒を払いながら進む。

 こちらも多少の解説を混ぜながら話しを続ける内に、彼はすっかり押し黙っていた。きっと、自分が「王道」って名前の下に考える事をやめちゃってた事に気がついたんだろう。 

 

 「兵は詭道なり」

 「勝てば官軍」

 

 っていい言葉だよね。

 まあ、理想は相手より錬度が高く、命令を聞く兵士を揃え、相手より多い兵力を用意するのが最高な訳だけど……さすがにゲームじゃそれは出来ないからなあ。

 となると後は……ってこれ以上はそれこそ孫子とか読む話になってくるからパス。それよりは今は純粋に目の前の戦闘を楽しもう……!

 しかし……連勝してもまだ六大国には届かない……凄いよなあ、あいつらは。

 そんな事を思いつつ、翌日の朝、学校に行く前の朝飯の時間の事。


 「おはよう」

 「あ、おはよう」

 

 返事をしてきたのは妹だ。

 妹もまたVRMMOに嵌ってるが、二人が一緒のゲームをする事はない。

 別に仲が悪いとかじゃなく、俺がシミュレーションとかそういう戦略的なものが好きなのに対して、妹はとにかく体を動かすゲームが好きだからだ。ちなみに両親はまだ就寝中。父は夜勤だったはずだし、母は夕べ遅くまで作業してたからなあ……ちゃんと朝ごはんは作っておいて暖めるだけになってたけど。 

 レンジで自分の分も暖めてると妹が何やら深刻そうな顔で聞いてきた。


 「……お兄ちゃん」

 「ん?」

 「ワールドネイションってどんなゲーム?」



植物って凄いですよね

割と良く知られてる植物でさえ、よく調べてみると凄い話が聞けたり……

コアラの食べる植物として有名なユーカリの木

あれは大量の油を蓄えてる上、葉から気化した油を発散させ、ちょっとした火種で引火して山火事を起こすという……

しかも、ユーカリ自体は表面が焼けても平気で、そうやって燃えた他の植物を栄養にするという、天然焼畑農業を展開する植物だと言います

凄いよねえ……


ちなみに「もふもふ」VS「九頭竜」は「もふもふ」の勝利です

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