疲れるし呆れてしまうけれど
「朝七時三十分だ、起きてくれないか」
「ぎゃぁぁあああああ変態!」
――――――朝起きると、真正面に軍人さんの顔面がありました。
「…………まったく、変態とは酷い扱いだ」
「その軍人口調やめません……?」
朝食はパンです。
軍人さんに箸を持たせるのは危険(箸を護身用に持つとか言い出したため)だと判断したためです。
「努力はしてるんだが……」
眉を下げて、パンを咥えながら言う。
「そうですか。あの、軍人さ
「私にはザシャという名が
「すみませんザシャさん」
言葉尻を遮られ遮りつつの会話。
「何だ」
「服を買いに行きましょう」
軍人さんは目を見開いた。
「ふぐ?」
フグか何かと勘違いして……るのかもしれない。
「だってぐんじ……ザシャさん、その制服っぽいの、すっごくダサいです」
私が軍人さんの制服を指差して言うと、軍人さんは頭を抱えた。
「私だって好きで着ているわけではないんだ……」
あ、そうなんだ。
「大体国防軍からSSに行くなんて聞いてないし」
と軍人さんが愚痴を零した。
私はその半分も理解できていないけれど。
「あの、と、とりあえずですね、服を買いに行きましょう」
「ああ。……だが、千早。ご両親はどうした」
パンを取り落としそうになった。
どうして今、このタイミングで聞いてくるの?!
「両親は……別居してて、でも、どちらかに親権があるっていうのが嫌みたいで」
「シンケン……とは何だ」
「私の親ですっていう権利のことです」
パンを口に頬張り、続ける。
「…………で、私をこのマンションに置いて、週に一回、どっちかが来るんです」
朝から重たい雰囲気になってしまった。
軍人さんはため息をついた。
「変わった家族だな」
「そうですね」
「もしご両親が居るんだとしたら、挨拶くらいは先に済ませておかないといけないと思っていたが……まあいいか」
ふむ、と顎に手を当てて言う。
「はあ?!」
「お世話になっていると」
「ヒモか!」
「ヒモ……?」
怪訝そうに聞く軍人さんに、私は答えようか迷ってしまった。
「…………そこに国語辞書があるからそれで引いてください」
結局逃げました。
「あの、軍人さん」
「私にはザシャというな
「ザシャさん」
「何だろうか」
「もう少し普通に歩いて頂けませんか!」
軍人さんは私のすぐ後ろを歩いている。
ちょうど2歩後を。
「これの何が悪い」
「普通に横に並んで歩くのが普通です」
「そうなのか」
軍人さんは私の横に立った。
あまりにも不自然な挙動で。
一緒に居たくないなあと思った私は、
「とりあえず、お財布渡しておくので買ってきてください」
軍人さんにお財布を渡して、
「今十時なので、十二時にここに来てください。いいですね」
さっさと逃げました。
周りのおばさんたちがカップルとか恋人とか国際結婚とか根も葉もないことを言いまくるのに耐えられなかったからです。
四日目、午後。
作者:四日目終了ー……ではなく、次へ続きます。