普通じゃないあなたに振り回されて
軍人さん滞在三日目。
家に帰ってくるとテレビに釘付けな軍人さんがいます。
「ただいま……」
「今日は四分二三秒遅かったな」
細かすぎるわ。
「ご飯です」
本日の夕食。
純和食。
ご飯、お味噌汁、焼き魚、大根おろし、生野菜のサラダ。
「…………」
目の前の軍人さんが黙っていらっしゃいます。
「あの……?」
「これはどこの料理だ」
箸をグーで持ちながら言う。
「日本ですけど」
「日本…………」
難しい顔をして考え込む軍人さん。
「食べないなら下げますよ」
「いや、有り難く頂こう」
と言いながら箸を握って食べ始めたので、私は食器棚へ走った。
「佐和千早氏、食事中に席を経つのは」
「るっさい! あんたのためです」
というか佐和千早氏ってどこの政治家の名前なの、って感じなんですけれども。
「私の、ため」
軍人さんはナイフ、フォーク、スプーンを渡されると、なんだか複雑な表情をしていた。
「軍人さん、あの――
「私はザシャという名前があるのだが」
話を遮られた。
そうでした。ザシャさんでした。
でも軍人さんでいいじゃないですか。
「はい……あの、ザシャさんはなんでそんな硬い口調で喋るんですか」
軍人さんはナイフとフォークを置いた。
「…………軍人だからだ」
そして真剣な口調で言う。
「私は素が駄目な人間だとよく言われるから、気を引き締めている」
素がダメ人間……。
どんな人生送ってきたのこの人?
「で、でも、でもですね、ぐんじ……ザシャさん」
「何だろうか」
「気が休まる場所を作ることも必要です。……こっちで当てがないんだったら、せめてこの家の中だけでも寛いでください」
軍人さんは静かに瞠目した。
私は箸を止めた。
沈黙。
軍人さんが、ナイフとフォークを動かした。
「私は本当に駄目だと言われているが、それでもいいのか」
「……いや、いいもなにもそんな生活だったらストレス溜まりませんか」
「溜まる」
真顔で言うな馬鹿。
危うく飲んでいたお茶を吹くところだった。
「だったらリラックスしてくださいよ」
軍人さんは少しだけ笑って頷いた。
「このバスルームはどう使えばいい?」
「はー……………………い?」
お風呂から声がしたので、ノックも何もせずドアを開けた。
「何か変な形のものがあるんだが、あれはどうやって使……どうしたんだ?」
「きゃぁぁぁああぁぁあああああああああああ!!!!」
お風呂に私の絶叫が響き渡りました。
だって、軍人さん……
「煩い。いや……まさか爆弾でも見つけたのか」
「あんたの半裸が爆弾です!」
軍人さんだから当たり前なのかもしれないけど、筋肉がすごい。やばい。
男性耐性ゼロの私にはきつすぎます。
「何か服着ろ!」
「いや、今から脱ぐところなんだけど」
そんなのわかってます。
「で、千早、あの使い方は」
バスタブを指差して言う。
軍人さんから目をそらして、視界に入れないように努力して、少しだけ気持ちを落ち着けた。
「あれはお湯を貯めるところで……、シャワーで身体を洗ったあとお湯に浸かって、あったまるんです」
「ふぅん……」
なんか軍人さんが少しフランクになってます。
「じゃああの蓋みたいなのを開けて入ればいいんだね」
「そうなりますね……ってそこで脱がないでください」
軍人さんは口を尖らせた。
「ちぇー」
私がお風呂から出て自分の部屋に入ると、
「やあ千早。早くおいでよ」
私のベッドを占拠している軍人さんがいます。
それも満面の笑みで。
「ダメ人間だ……」
呟いた言葉は軍人さんには届かなかったみたいです。
「あの……そのベッド使っていいんで、あたしは別の部屋で寝ますから」
「いいじゃない一緒でも」
そのしつこいお誘いは、はっきり言ってめんどくさい。
「私寝相悪いんで」
さっさと部屋を後にして、普段は使わない部屋に向かった。
「…………あ、そう言えば軍人さん、服どうしたのかな」
考えたくもない結果にたどり着いたので、思考ストップして眠りました。
作者:やー三日目だよ。
ザシャ:三日目だねえ。
作者:さあザシャさん、スリーサイズをどうぞ。
ザシャ:測ったことないよ。
作者:身長、血液型、趣味、その他女性遍歴をどうぞ。
ザシャ:185センチO型、趣味は……もうちょっと秘密。
女性遍歴? 女の子だけでいいの?
作者:怖くなったんでやめます……聞いてすみません。逃
ザシャ:作者が今回も筆を投げたので次回予告など。
『千早とザシャが買い物に行く』だそうです。




