プロローグ
前作『龍王の加護』の続編のつもりで書いてます。でも龍王の加護を読んでいなくても分かるように書くつもりです。
いつもと変わらない朝。
「おはよう。朝食できてるわよ?今日は早く帰れるの?」
いつもと変わらない母親。
「ん。今日も早いよ。わぁ!卵焼きだ」
いつもと変わらない私。
「ご馳走様。行って来るね」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
いつもと変わらない会話を母親と交わして、私はいつもと同じように通いなれた高校へ向かう。
何も変わらない一日。マンネリ化した高校生活。
――のはずだったのに。
いつもと同じように、帰り道を一人歩く。そして何事もなく家について、着替えて、母親と他愛の無い会話を楽しんで、嫌いな数学を勉強して、寝て、一日を終えるはずだった。
でも今日は違った。
家で私を出迎えてくれたのは母親ではなく。
見たことも無い服を着た男達だった。
カンフー映画にでも出てきそうな黒衣に身を包んだ男達。
リーダー格の男が、私の顔を見るなり不適に笑んで、別の男に羽交い絞めにされてる母を振り返った。
「裏切り者には制裁を。さすがはお前の娘だ…いい魔力を持っている。こいつを貰って行くからな」
あの時の母の顔は今でも覚えてる。
あんなに必死に…泣き叫んで男に訴えてる母の顔は。
泣かないで母さん。私は大丈夫だから。くるべき時が来ただけだから。
罪の償いをしたらすぐに帰るから。母さんのいる世界に必ず帰るから。
そしたら、また一緒に暮らそうね。
いつもと同じように朝にはおはようって言うよ。
朝食には私の好きな卵焼き作ってね。
私が学校に行く時は行ってらっしゃいって言ってね?
そうすれば私たちのいつもの朝だね。
当たり前の朝だね。
だから――
そんなに泣かないで?
信じて待ってて。
必ず帰るから
絶対に母さんの元に帰るから――