バカ校
やっと,入学できた高校は市内の外れにできたばかりの新設校だった。
新設校のため,1コ上の1期生しかいなく,中退する者が多かったためか新入生の半分位の数しかいないからか,俺の嫌いだった上下関係はそれほど気にならなかったのは良かった。
他の学校では受け入れてもらえない様な各中の名前の知れた奴らが集まっていたため,中退する奴も多く1学期が終わり夏休み明けにはクラス編成があった。
そんな頃,残った奴らの間で初代のチームを作ろうと言う話しが纏まった。
そして,各派閥の様なものからお互いに頭を出したい流れになり,纏まるどころか分裂し,つまらない小競り合いの末に,主だった奴らで話し合いの場を持つ事になった。
同じクラスに島倉祐太と言う奴がいた。
「アタマなんて誰がやっても良いじゃねぇか。やりたい奴でじゃんけんでもくじ引きでも何でもやってよ‥一つに纏まろうって時につまんねぇ事で諍い起こすの止めねぇか。」
そこにいた誰もが反省し,島倉の言葉に頷いた。
「島倉の言う通りだな。どう思うよ‥」
いずれは跡継ぎになると噂のあった隆盛と言う地元のヤクザの倅が口を開いた。
「だよな‥田口はどうだ?」
「あぁ。島倉の言う通りだよ。俺は頭はパスさせて貰うわ。他の奴で決めてくれよ。」
「おめぇがそう言い出したら,他に手ぇ挙げにくくなんべよ。」
「まったくだぜ。」
今まで我を通す事しか知らなかった奴らが島倉の言葉で一つに纏まった時だった。
「やるからにはよ。ビッと気合い入れてよ,伝説のチームって語り継がれる様なチームにしようぜ。」
「横文字が良いべ。特攻服に刺繍入れてよ‥」
「何色にすっか?白や黒だのじゃなくて格好良いのねぇかな‥」
「上もなきゃ下も無しでよ。ケツ持ちもシカトして一代でパッと終わりにしようぜ。」
最高だった。
バカな自分らが一つに纏まってチームを作る‥ 中退していった奴らや,それぞれの中坊の時のツレにも声を掛ける事になって最初の集会は10月の初め頃だったと思う。
中古で買った単車を祐太らと磨いて‥楽しかった‥
2年の夏休みだった。 美樹も俺とは違うが高校に通うようになっていて,単車で九十九里の海に遊びに行った。
1日海で遊び,帰る時それっぽい単車とすれ違った。
そしてもう1台‥2台と‥
ミラーで見るとUターンするのが見えた。
「美樹‥掴まれ。」
「えっ?どうしたの?」
美樹が一緒だった事と,地元じゃなかった事に普段以上に気が焦っていたのだろう‥
砂利の浮いた道を飛ばしていた事しか覚えていない‥
気がついた時は病院のベッドに寝ていた。
「気がついた?」
目を開けると看護婦とお袋がいた。
「美樹は‥美樹はどうした!」
「大丈夫よ。彼女も。」
「良かった‥」
「あんただけなら自分のバカで死ぬのは勝手だけど,美っちゃんにもしもの事があったらどうすんのよ!」
「ごめん‥すまない‥」
お袋の言う事に反論もできずその時はただただ反省するだけだった。