05◆吉良ミズキの場合
◆吉良ミズキの場合
さて、もうそろそろ前置きにも飽きてきただろうし彼女との出会いについて本格的に話してみようと思う。
今思えば、この出会いはやっぱり彼女の癖も、僕の癖のせいでもあったと思う。せいって言い方はおかしいかもしれないけど、…おかげって言ったらいいかな。
この日、僕はやっぱりいつも通り美術部の活動。
最近、いや美術部の活動のときはいつもスケッチブックとB4鉛筆と消しゴムだけを持って、デッサンをしに行く。
想像の中の生物や、植物を、文字通り創造して作り出す。
スケッチブックの中に。
その教室へ行く途中だった
彼女と出会ったのは。
「あれ…?」
そう聞こえた女の子の声。
まぁ、どうせ独り言か何かだろって、僕はいつも通りに俯いて、スケッチブックを抱きしめて歩く。
「おーい!やっほー!どうしたの?」
僕は少しだけ身を竦める。
そして後ろを振り返る。けど、誰も居ない。
僕に向けられた声だと、思う。
…たぶん。
あんな元気な友達は僕に居ないはずだけど。
誰だろ。
きっとスルーすれば、気づくだろうな、自分の間違いに。
そう思って僕は心の中でごめんなさいと言いながら俯いて歩き出した。