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04◆吉良ミズキの場合

◆吉良ミズキの場合



そんなこんなで、僕から彼女へ対する彼女への第一印象は明るそうで、元気な子。俺とは正反対、と。

その印象はいつまで経っても変わらなかった。

あの、声を掛けられる日までは。彼女に声を掛けられたときに初めて彼女への印象は抽象的なものから、明確なものへと変わった。

ような気がする。

ただ単に遠くから見た目や雰囲気で判断するんじゃなくって、……いや、瞳ってだけでも十分見た目なんだけど。

彼女はヒーロー。

中2の春に同じクラスになって、分かったことと言えば……彼女は泣き虫だ。

でも、絶対に人前では泣かない。

分かったこと、と言う言い方はおかしいかもしれない。

知っていた、だ。覚えてなかったけど。

中1の時に一回だけ、美術部に所属していた僕が一番落ち着く場所――、教室の隅っこで小学生の時みたいに、絵を描いていた時。

がらっ、と部屋のドアを開ける音がして。

誰かが入ってきたと思って、身を竦めた。

「んーと……えっ、と」

声がだんだん震えて行く。

えっと、えっと、と続ける。

彼女が泣きそうだという事にはすぐに気がついた。

きっと言葉を発していないと泣いてしまうのかもしれない。

なんで泣いているかは知らない。

少しだけ、バレないように身を隠そうとする、が。

「……?」

彼女は赤い目で驚いた顔をして僕のほうを見た。

「……あ、あは、ごめんねっ絵?、描いてたんだ。美術部?」

そう言って必死に泣き顔を隠すと彼女は無理矢理笑った。

「……俺は別に気にしないし、誰にも言わないし。……隠さないほうがいいんじゃない?」

そう言って、教室の端に座りなおした。

僕がそう言うと、

「あ、ありが……と」

そう言って、彼女は肩を震わした。今度は、隠すみたいな、声を振るわせるんじゃなくて

「う、わぁぁっぁあん」

って、子供みたいに大きな声で。

理由は知らないけど。

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