04◇高良ミツキの場合
◇高良ミツキの場合
そんなこんなで、私から彼に対する第一印象は“暗そう”。
だけど、次の瞬間入れ替わったんですよ、他の印象に。
よく見れば綺麗な、中性的な顔立ちをしていてどちらかといえば女の子っぽい気がする。
小さい頃よく女の子に間違えられたんじゃないかな。
だけど、中学2年の春に同じクラスになって3ヶ月。分かったことはそれ位。
あ、あともうひとつ。
癖。
あの人は絶対に人の目を見ない。
絶対に目を見ないで話すし、ずっと俯いている。
まるで自分に関わろうとするものを遮断するみたいに。
最初のうちは何か知らんけど興味惹かれて。
そんで最近では観察対象。
目はよく見えないけど、観察するのは楽しい。
わたしは2年の春から一番後ろの席をキープし続けて、授業中は専らクラスメイトの観察。
これがまた後ろからってよく見える。
そして案外楽しい。
1年の時から寝てばっかだった授業だけども、人の観察のために起きるようになった。
授業を真面目に聞く人、寝てる人、机の下で内職してる人、机の上で堂々と内職してる人。
様々。千差万別。
こんなやる気の無いクラスに対して教科担任はあきれるばかりだ。
「お前らなぁ、1年は長いと思ってるかもしれないけど、受験なんてすぐなんだぞ!」
といっていた先生も今となっては殆ど居ない。もう諦めたんだろうか。
そんな授業中に、彼は私の目の見えないような端っこの席でただ授業をまじめに聞くでもなく、ノートを必死で取るでもなく、机の下で内職するでもなく、ただぼーっと、本当に何も考えていないかのようだった。