02◆吉良ミズキの場合
◆吉良ミズキの場合
僕には癖があります。
その癖は人によっては凄く気を悪くするみたいで。
僕の、僕自身への自信の無さをあらわすみたいに、小さなころから身に染み付いて離れなくなってしまった。
家や部屋に染み付いた自分の匂いみたいに、自分にその癖は染み付いていた。
その癖は、“人の目を見ない”。
小さなころから身体も気も弱くて学校も休みがち。
時々学校に行ければ、部屋の隅で絵を描いているか本を読んでいるか。
自分に自信の無い、小さな存在。
それは、格好のいじめの対象だった。
今となっては馬鹿馬鹿しいようなことばかりだったけど、その頃はただそれが怖くて、小さな暗い世界で、わるものがいなくなるのを小さくなってただ耐えて待っていた。
嫌なことは目を瞑って見ないようにしなければ、きっとすぐ終わると信じて。
ずっと憧れていたヒーローや仮面ライダーなんて、来るはずが無いんだから。
僕は耐えて待っていることしか出来なかった。
中学に入ってからは、陰湿ないじめなんかは無くなって、みんながみんな自分の好きなものや事が被る人や、委員会や部活が一緒だったり、クラスでただたんに気が合うやつ何かを各々で見つけ出して自分の、自分たちの世界に入っている。
自分の世界に関係の無いものは切り捨てる。
いじめの対象ですら、まず興味の対象ですらない。
そんな関わり合いの無い空気が好きだった。
僕も適当に趣味が、小さな頃から来るはず無いと思い、だけどその反面僕を助けて欲しいと縋った対象、戦隊物のヒーローや仮面ライダーが好きな、所謂オタクの部類の人間とつるんでいる。
つるんでいる、と言っても殆どは自分が趣味の話をしたいときに集まるだけ、移動教室なんかは基本的に一人で。
だから。
こんな僕だから。
彼女が話しかけて来たときは驚いた。
何で僕なんだと。
僕何かした?
って。
そう思った。
だけど、彼女を見た瞬間虜になった。
一目ぼれ、って言うの。こういうことを言うんだとおもう。
彼女はまさに、揺るがない自信がある、僕があこがれて、縋ったそのヒーローの目をしていたから。